
環境に配慮した木造住宅で
地域社会のしあわせづくりに貢献する
ヤベホーム株式会社(長崎県)
代表取締役矢部 福徳 氏
JR長崎本線諌早駅西口正面大通りに面した一画に7階建てのヤベホーム本社ビルがある。1988年11月に有限会社として諫早市に設立してから地元一筋36年、矢部福徳社長は「本当に健康で幸せな住まい」への挑戦を続けてきた。2010年に「笑和な家」モデルハウスをオープンすると、高温多湿な長崎の気候にあった県産材や国産材を用いる地産地消にこだわり、構造材無垢の木や漆喰といった調湿性能のある自然素材を厳選した「健幸長寿な住まい」への提案が高い反響を呼んだ。これと並行して、環境に配慮した森づくりプロジェクトとして「ヤベホームの森 森林ツアー」を開催し、2014年環境省カーボン・オフセット大賞優秀賞、さらに2018年長崎農林業大賞 特別賞を次々と受賞した。健康・長寿な木造住宅づくりで地域社会の信頼が厚い矢部福徳社長に、創業の思い、事業内容、今後の目標などについて伺った。
国産木材の調湿性能が健康な住環境をもたらす
矢部福徳社長は、島原半島の千々石町(現・雲仙市)生まれ。実家がアルミサッシ取付け業をしていたため、地元の高校を卒業すると兄を手伝って住宅関連の仕事を経験することとなる。24歳で結婚、26歳で長女が生まれる。「実は、私の娘は生まれながらの障害をもっていました。娘の入院を繰り返すなかで、家族の幸せづくりのための住宅会社を創業して、社会へ貢献したいという想いを抱くようになりました」。
家族で諫早市に引っ越して、1988年に有限会社ヤベホームを設立した。当初は、毎日200軒ほど飛び込み営業をして、修理や小さなリフォーム工事をしていたそうである。「娘は、酸素を充分に吸うことができない低酸素脳症で、病院の行き帰りにクルマの中で呼吸苦に陥りました。そんな折、間伐された森に連れていくと、酸素が吸いやすいのか、次第に顔に赤みがさしていくのがわかりました」。
森の新鮮な空気であれば、娘は呼吸してくれる……、この出来事が、矢部社長のめざす「本当に健康で幸せな住まい」づくりへのヒントになった。2003年に株式会社へと組織変更を行うと、独自の注文住宅のプランづくりに着手、2010年に「笑和な家」モデルハウスを、木のコトひろば展示場にオープンした。
高温多湿な長崎の気候においては、ヒノキをはじめとした国産木材の調湿性能こそが重要である。国産木材の持つ「調湿」により、夏の湿潤でジメジメしたときも、冬の乾燥でカサカサしたときも、家の中を勝手に「調湿」をしてくれる。
ヤベホームの「健幸長寿な住まい」は、対馬産ヒノキをはじめとした国産木材の調湿性能を生かし、高千穂のシラス壁や漆喰といった自然素材にこだわることで、健康的な住環境をもたらすという確信から生まれたものであった。




環境への貢献姿勢が住宅販売の業績アップを促す

同時に、矢部社長には創業当時から決めていたもう一つのプランがあった。それは、経常利益が1,000万円を超えた時点で、利益の5%を社会に還元するということであった。2013年に環境に配慮した森づくりプロジェクトがあることを知り、翌年より「ヤベホームの森森林ツアー」を毎年開催することにした。これは、「ヤベホームの森」で植樹や間伐体験をしてもらい、地球温暖化防止と森林整備の大切さを学んでもらうものである。
こうした環境への貢献が、会社経営の面でも意外なカタチで実を結ぶことになる。なんと、住宅販売における契約率が大きくアップした。「住宅を購入される際、お客様は初めに10社程度を見学して、そこから大体3社に絞り込んで見積りや図面を依頼するケースが多いのですが、当社がこの3社に選ばれることが確実に増えました。お客様に『会社の利益の一部を森林整備に使わせていただいております』と説明すると、それが口コミで広がり、環境問題に意識の高いお客様の来訪に繋がっていきました」。
2014年環境省カーボン・オフセット大賞優秀賞、2018年長崎農林業大賞特別賞を次々と受賞したことも追い風になったのである。また直近では、森林×ACTチャレンジ2024林野庁長官賞(優秀賞)を受賞。カーボンニュートラル社会の実現への環境貢献が評価された。
2024年10月現在の社員数は10名。建築営業3名、設計3名、現場監督1名、リフォーム2名。社長を含めても男性は3名で、あとの7名は20~40歳代の女性であるという。「住む方の健康で幸せな暮らしを願い、自然素材の優しい住空間をつくる」ヤベホームの家づくりの姿勢は、女性社員たちによって支えられていると言ってよい。また、「お引渡しからがほんとうのお付き合い」をモットーに30年間無料点検などのアフターサービスに力を入れ、多くのOB施主様に安心と喜びを提供している。
木住協に加入したのは、15年ほど前に省令準耐火の優遇制度の活用がきっかけであると言う。「木のあるくらし作文コンクール」では、地元・諫早市の小学生に作文募集を呼びかけて、ヤベホーム独自の作文集を編集・製作したこともある。


めざすはしあわせづくりの「オンリーワン企業」
ヤベホームの将来像についてもお話を伺った。現在は、木造注文住宅の設計施工とリフォーム工事が二本柱ですが、これからは中古空き家のリノベーションによる不動産事業にも力を入れていきたいと語る。地元で新しく家を建てる新世代ファミリー、夢を求めて移住してくる若者たちにとっての健康で幸せな住環境を積極的に提供していきたいとのことである。
「商売は『笑売』……というのが私のモットーです。お客様が笑顔になり、働く人が笑顔になり、家族や周囲の人たちが笑顔になるために、時代に応じて幸せづくりをするのが使命です。今は住宅会社をやっていますが、これからの時代にさて何をすべきか、自在に突き進んで行ければよいと思っています」とのことであった。
趣味は、週一回水曜日の休日に出かけるゴルフだったが、最近は「ながさきカーボン・オフセット推進協議会」会長や長崎大学環境科学部非常勤講師の仕事などの社会活動で埋まってしまい、なかなか出かけられないとのこと。「朝のウオーキングと、たまに行きつけの居酒屋でのひとり酒がリフレッシュ法」とのことであった。
創業から36年、地域社会に貢献する「小さくても輝くオンリーワン企業」を目指して、無借金経営の身の丈に合った挑戦を続ける矢部福徳社長、66歳にしてますますの活躍が期待できそうである。




ピカイチ社員
ハウジングコーディネーター山添 礼 氏
入社の経緯と現在の業務内容は?
2011年4月の新卒入社です。地元の大村工業高校建築科を卒業後、福岡の専門学校で二級建築士の資格を取得しました。福岡の住宅会社の就職も考えましたが、実家からクルマで通勤できるので、ヤベホームへ入社しました。約9年間は新築戸建てのお客様の担当をしていましたが、2018年に結婚して、男の子女の子の二人の子供が生まれたので、産休や育児休暇の期間もあり、今は諌早駅前の本社事務所の内勤で、リフォームやメンテナンスといったお客様への対応をはじめとして、住宅にかかわる諸々のフォロー業務を行なっています。
うれしかったことや成功事例は?
入社3~4年で必死に働いていた頃に、諫早市山川町で若いご夫婦の新築住宅を担当しました。共働きでとても忙しいお二人でお引き渡しの時もあまりお話する機会がなかったのですが、二年目点検でひさしぶりにお会いした際に「やり取りがスムーズで何の心配 もなく建てることができました。山添さんに担当してもらって本当に良かった」と言われた時はとてもうれしく、この仕事をやってきて良かったな!と感じました。
家族との時間の過ごし方は?
夫と4歳の息子、2歳の娘との四人暮らしです。休日は、近くの渓谷や森に出かけて、小川でメダカや小さなエビを獲ったり、草むらにいるバッタやカメムシを獲ったりと、自然に触れ合って遊ぶことが多いです。息子はなぜかカマキリが好きで、私はこわくて触れないですが、夢中になって餌を与えていま す。
ご自宅もヤベホームで建てられたと伺いましたが?
そうです。矢部社長にお願いして、四年前に家族で住む自宅を新築しました。これまでお客様に提案してきた自然素材の住まいの良さを、日々の暮らしを通して体感しています。家族で 出かけて玄関の扉を開けた時、かすかに木の香りを感じて癒されます。ヒノキの床材のリビングで遊ぶ子供達の 元気な姿を見ると、社長の「健幸な家」という言葉を思い出します。住んでいるからこそわかるこの家の心地よさを、これからもお客様に伝えていきたいと思います。
ヤベホーム株式会社のこだわりPOINT
「自然素材」や「国産材」など素材を厳選して
健幸・長寿な住まいづくりに挑戦し続ける
社長のひとこと
長崎の地域社会のしあわせづくりに貢献し
「小さくても輝くオンリーワン企業」を目指す

会社情報
会社概要
| 社名 | ヤベホーム株式会社 | 
|---|---|
| 代表取締役 | 矢部 福徳 | 
| 所在地 | 〒854-0072長崎県諫早市永昌町10番14号 | 
| 電話 | 0957-25-3188 | 
会社沿革
| 1988年 11月 | 有限会社ヤベホーム設立 | 
|---|---|
| 2002年6月 | 旧社屋落成 ヤベホーム設立15周年 | 
| 2003年8月 | 有限会社から株式会社へ組織変更 | 
| 2008年2月 | 「平屋のすゝめ」時津モデルオープン | 
| 2010年11月 | 「笑和な家」モデルハウス木のコトひろば展示場にオープン | 
| 2014年4月 | 第1回ヤベホームの森 森林ツアー開始 | 
| 2014年6月 | 「ヤベホームの森」 環境省カーボン・オフセット認証取得 | 
| 2014年12月 | 「第4回カーボン・オフセット大賞」優秀賞を受賞 | 
| 2018年6月 | 空き家相談窓口としてグループ法人「空き家、相続相談センター」開設 | 
| 2018年12月 | 長崎農林業大賞 特別賞(住宅業界で初の受賞) | 
| 2019年6月 | 「一般社団法人 ながさき住まいと相続相談センター」に名称変更 | 
| 2021年10月 | ながさき環境県民会議最優秀賞受賞 | 
| 2021年12月 | 新社屋 Y’s station 落成 | 
| 2022年4月 | ヤベホーム株式会社 設立35周年記念式典「感謝の夕べ」 | 
| 2024年4月 | 「平屋+(プラス)」新モデルハウス栄田町に完成オープン | 
| 2024年10月 | 森林×ACTチャレンジ2024林野庁長官賞(優秀賞)受賞 | 
事業内容
住宅の設計及び施工・リフォーム・不動産 相続コンサルティング事業



