≪開発の軌跡≫ 株式会社LIXILへの取材インタビュー

リフォーム時の省施工商品 「壊さないリフォーム」

株式会社 LIXIL

壁や床を壊さず、住みながら
わが家を快適&美しくアップグレード
「壊さないリフォーム」

 

東京に本社を構える株式会社LIXILは、住宅設備機器業界をリードするグローバル企業であり、「世界中の人々のより豊かで快適な住まいと暮らしの実現を目指す」というビジョンのもと、世界中の人々に革新的な製品とサービスを提供している。トイレ、キッチン、バスルーム、窓、ドアなど、住宅や建築に欠かせない多彩な製品を展開し、使いやすさとデザイン性、環境への配慮を両立させたものづくりを追求。暮らしの質を高めるメーカーとして、未来の住まいの可能性を広げ続けている。
新築はもちろん、既存住宅でも断熱性能向上や省エネ化が求められるようになった現在、同社が提案しているコンセプトが「壊さないリフォーム」である。このコンセプトにより、既存の建物を壊さずに断熱性能を高めることが可能なうえ、従来の大型リフォームと比較し大幅な低コスト・短工期が実現するという。
 本インタビューでは、このコンセプトの背景や特徴、具体的な商品ラインナップについて、株式会社LIXIL LHT営業本部 リフォーム推進部長の渋谷氏に詳しく話を伺った。

「壊さないリフォーム」とは どんな商品なのでしょうか

「壊さないリフォーム」は、商品というよりも既存の建物を生かしながら住宅の高断熱化・高性能化を図る、リフォームのひとつのコンセプトとして捉えていただいたほうがいいと思います。その中に含まれる具体的な商品ラインナップとしては、外壁の「Danサイディング」、屋根の「T・ルーフ」、開口の「インプラス」や「リシェント」といった部位ごとのリフォームがあり、さらに室内側から断熱材を貼り一部屋だけ高断熱化する「ココエコ」、室外側に断熱材を貼り一棟全てを高断熱化する「まるごと断熱リフォーム」といった商品もご用意しています。
また、パッケージ商品として、ニーズが多い屋根や外壁をセットにした「外まわりロングライフパック」、省エネ断熱関連のリフォームをセットにした「ぽかぽかリフォームパック」という商品もあり、ユーザー様のニーズに合わせて、部位ごと、ひと部屋ごと、家まるごとのリフォームに対応しています。
このリフォームの大きな特徴は、既存の建築を生かすカバー工法で、家をスケルトンにしてリフォームする従来の大型リフォームと同等の内容を実現できることです。壁や床を壊さずに施工するため、工事にかかるコストや工期が抑えられますし、ユーザーの方がその家に住んだまま工事ができるので仮住まいを探す必要もありません。また、解体工事をしないため廃材が出ず、その処理費なども抑えられます。低コストでスピーディに住まいの断熱性と美観を高める「壊さないリフォーム」は、エンドユーザー様にとっても、プロユーザー様にとってもメリットがあるものだと考えています。

渋谷和徳さん
LHT営業本部 リフォーム推進部 部長

開発のきっかけを教えてください

4号特例の縮小という法改正です。この法改正により、大規模な修繕模様替えや、屋根や外壁を下地から改修するリフォームを行うのに確認申請が必要になりました。これは業界を大きく変える出来事で、コストアップ、工期の延長、人材育成の必要性、法令の理解と対応など、多くの課題が生まれました。
 私たちがハウスメーカー様や大手専業系リフォーム会社様の120社に行ったヒアリング結果を見ると、7月時点で過半を壊す大型リフォームの物件量が大幅に減少しています。
 現在、リフォーム会社様の仕事は現場対応、補助金業務、新規顧客対応など多岐に渡り、業務負荷が非常に大きくなっています。そのような状況で4号特例の縮小により工期延長やコスト増加が生じ、さらに資材や物流費、燃料費などの高騰という要素も加わり、「大型リフォームはもうやらない、やれない」というリフォーム会社様が多く出てきました。
 こうした状況に対して、われわれメーカーとしては、リフォーム会社様がユーザーにもっと提案しやすい商品を用意する必要があると考えました。それが「壊さないリフォーム」というコンセプトです。
 「壊さないリフォーム」のラインナップにある商品の多くは以前からあったものですが、改めて断熱を軸にコンセプトを明確にしパッケージ化しました。そうして選択肢を増やすことで、プロユーザー様がお客様から相談を受けたときに、予算や工期の制約がある場合でも「それは無理です」と諦めるのではな、「『壊さないリフォーム』なら対応できます」と言っていただけるようにしたのです。今は多くの業社様にとってピンチの時期かもしれませんが、「壊さないリフォーム」で、それを新たなビジネスチャンスに変えてほしいと願っています

【試算条件】
●住宅プラン:2階建て/ 延べ床面積120㎡(自立循環型住宅モデルプラン)
●建設地:東京(地域区分6地域)
●工事費用、工期、廃材量:2025年7月現在の流通単価。協力会社(関東エリア)のもとでLIXILが試算。
ご注意:
表示価格は本体工事費の概算であり、消費税、諸経費等は含まれておりません。
本内容は特定の条件下での試算例であり、実際の費用や工期を保証するものではありません。住宅の大きさや間取り、仕様、地域によって数値は異なりますので、目安としてご利用ください。

なぜ断熱性能を重視するのでしょうか

国が出しているGX の基本方針には、2030年までの省エネリフォームの拡大や断熱窓等の建材導入の促進が明記されており、2023年度から10年間で約14兆円の投資を実施するとしています。例えば2025年の「先進的窓リノベ事業」という窓だけの補助金では1350億円の予算が割り当てられています。
また、ZEH・ZEB 水準について、新築は2030年まで義務化が決まっていますが、既存住宅(ストック住宅)においても2050年を目指すという指針が出ています。このように、国策として断熱性能の向上が推進されています。
 一方、日本の住宅ストック5,400万戸のうち、約8割が現行の省エネ基準を満たしていないという現状があります。圧倒的な戸数の既存住宅が低性能だということがわかっているので、そこに着手するのは当然だと思います。

「 壊さないリフォーム」の断熱効果は どれくらいですか

 例えば、ひと部屋だけの断熱性能を高めることができる「ココエコ」という商品だと、既存の壁や床の上に極めて高性能な真空断熱材のパネルを取り付けます。使用している真空断熱材は厚さわずか12㎜ですが、熱伝導率0.0025W/mkとグラウウールの約18倍の断熱性能があり、215㎜のグラスウールと同等の効果を得ることができます。
そして、現場で採寸しあらかじめ適切なサイズにカットするジャストカットパネルを使用すれば、現場で加工することなく施工できるのが特長です。
また、「まるごと断熱リフォーム」という商品は、既存住宅の外側4面を断熱材で覆い、さらに天井断熱、床断熱、開口部断熱なども組み合わせることで、家全体の断熱性能を新築・高性能住宅レベルに高めることができます。
 壁の断熱に使用するのは、熱伝導率0.019W/mk という断熱材区分トップレベルであるF 区分の硬質ウレタンフォームで、建設費はスケルトンリフォームの約半分で済みます。
家の気密性などにも関連してきますが、こうしたリフォームによって既存住宅をHEAT20の断熱グレードでG2レベルにまで高めた実績が多数ありますし、ZEH化も可能です。

商品の提案で難しいことはありますか

難しいのは断熱商品の提案です。例えば外側の屋根や外壁のリフォームというのは、見た目も美しくなるしその価値を理解していただきやすいのですが、断熱という見えない機能を理解していただくことは非常に難しいと感じています。
特に壁の断熱についてです。窓は「先進的窓リノベ」の補助金の効果もあり、内窓の効果などがユーザーに浸透してきたと思いますが、壁の断熱はまだ認知度が低いと感じます。例えば壁の断熱工事に何百万円かかると言うと、「なぜそんなにかかるのか」「それで何が変わるのか」という疑問を投げかけられます。目に見えないものにコストをかけることに対して理解を得るのが難しいのです。
 とはいえ、窓による断熱効果も3年前にはそれほど理解されていませんでしたし、プロユーザー様が窓の提案をすることも少なかったように思います。それが広く浸透していったのは、プロユーザー様自身が内窓を取り付けて効果を実感したり、お客様の非常に満足度が高い反応を見たりした結果です。
ですから、壁の断熱についても今後皆さんに多く体感していただくことで認識が変わっていくと考えています。/p>

断熱の重要性を どう伝えていくのでしょうか

東京と大阪に「住まいStudio」という体験型のショールームを設けています。この施設では、真冬を想定した0℃の巨大な冷蔵空間の中に断熱性能の異なる部屋が用意してあり、室温や足元の冷たさなどの差を実際に体感していただけるようになっています。サーモカメラ映像でも室温の差を確認でき、断熱性能の重要性を身をもって比較し、理解していただけるようになっています。
また、断熱性能が健康に与える影響を、医療費というわかりやすい値によって示す取り組みも行なっています。
断熱性能が低い住宅は、暖冷房のエネルギーの無駄が多いだけではなく、室内温度を一因とする健康リスクを高めます。とくに心配なのがヒートショックで、これが要因で入浴中に亡くなられる方は年間約19,000人と推計され、交通事故死亡者数の約4倍にもなります。
LIXIL は近畿大学と共同で「住宅内温熱環境と居住者の健康に関する研究」を行い、住宅内温度が一要因となる心疾患、脳血管疾患、高血圧、糖尿病など10の疾患について、住宅内温度と医療費の関係をグラフ化しわかりやすく提示しています。また、昭和55年基準住宅の内窓を改修した場合の暖冷房費、医療費、薬剤費の削減効果を掲示しています。例えば、50歳夫婦と18歳、15歳の子供2人が暮らす家だと、30年で103万円削減という試算結果が出ています。
以前は「断熱が健康にどう良いのか」が曖昧な言葉でしか説明できませんでしたが、こうして具体的に数字で示せるようになり説得力が増したと思います。健康に敏感な方、特に子育て世代では断熱対策に関心を持つ方も増えていますし、断熱性を高めるリフォームの需要は今後ますます高まっていくと期待しています。

ご入会メリット
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