≪開発の軌跡≫ 株式会社タナカへの 取材インタビュー

防災関連商品 「家コネクト」

株式会社 タナカ

lotの技術で暮らしに安心を地震による建物への影響を「見える化」することで家族の安全と安心を守る
かつてない防災アイテム「家コネクト」

 

1950年にマッチ箱やウチワの名入れを行う街の印刷屋「田中豊商店」として創業、やがて地元自治体から選挙用ポスター掲示板の製作を任され事業を拡大。1961年に株式会社タナカを設立し、選挙掲示板を設置するための金具を開発・製造したノウハウを生かし、住宅用接合金物の分野に進出したほか、印刷の分野でも情報発信力にすぐれたオリジナル製品を開発しているタナカ。
現在は建築基準法の改正に対応した建物の建築構造金物の開発・製造・販売を行う住宅資材部門、コンピュータ関連の連続帳票及び各種ビジネスフォーム印刷物の製造・販売を行う印刷関連部門、全国シェア約4割を占める公営ポスター掲示板の製造・販売を行う選挙ディスプレイ部門の3分野を主軸にビジネスを展開している。
そんな自由な発想を得意とする同社が、「家の声を聴くことができる」画期的な防災対策製品「家コネクト」を開発。その魅力とこだわり、さらに商品化に至るまでの秘話をお伺いした。

「家コネクト」とはどんな商品ですか?

[ 貫 戸 ]
家コネクトは、IoT で建物と人・社会を繋げるスマートモニタリングシステムで、地震による建物の揺れをIoTセンサーがキャッチして測定。設置した建物の地震の揺れとゆがみを測定し、大地震発生後に建物が安全かどうか速やかに把握することが可能になります。
本体には震度を測定するための加速度センサーと、建物の傾きを計るジャイロセンサーを備えることで層間変形角を計ることができます。

[ 太 田 ]
建物は地震により歪みが生じる場合があり、その歪みは「層間変形角」という指標で表します。この層間変形角は地震後の建物の安全性を評価するための重要な指標であり、建築基準法等で建物に損壊が発生するかどうかを判断する目安の数値が定められています。ただ、建物は地震が起きた後に元の状態に戻ろうとするため、地震が起きた時に受けた層間変形角との数値にずれが生じます。
実際、災害時は交通網の遮断などで現地に行けなかったり、一軒一軒足を運ぶアナログな方法がほとんど。現地で建物の損傷を計測するのは地震が起きてかなり時間が経ってからとなるため、実際に建物がどれほど変形したのかは分かりません。
ただ見た目として建物が元に戻っていたとしても地震で受けたダメージは蓄積されており、その後の余震で建物が倒壊したというケースも珍しくなく、実際に熊本や能登の震災現場で見られました。そうした見えないダメージを「見える化」したのが家コネクト最大の特徴と言ってもいいと思います。

[ 貫 戸 ]
明星大学にて震度7の実大実験を行ったところ、家コネクトのIoT センサーが地震波と層間変形角を正確にとらえていることが分かり、この装置の確かさも証明されました。また取り付けも簡単で床と天井付近の壁面2か所に設置するだけ。電源が必要となりますが、もし災害により停電が起きても内臓バッテリーによって約6時間起動し続けるので心配ありません。

貫戸さん
総合研究部 新規事業推進課 係長

太田光夫さん
執行役員 総合研究部長

家コネクトの開発のきっかけは?

[ 太 田 ]
建築構造金物を開発する際には、年間1000回以上の強度試験を行っています。そうした中、今まで蓄積されてきた技術力を使ってデータを見える化し、「私たちの金物を使って建てた家が地震でどのような状態になるかを知りたかった」というのが開発のそもそものきっかけです。
幸い社内には構造物理学を専門とする地震の専門家もいるため、気象庁の震度計と同等の精度を誇るセンサーを開発し、さらにアプリ開発も社内の情報管理部門が行うなど、他社との業務提携せずにすべてを社内で開発することができたのも大きいですね。コストをぐっと抑えられ、他社とのしがらみもなく、改良を加える際もスピーディーに対処できます。ここには常に新たなことに挑戦することを良しとする、創業からのチャレンジャー精神が存分に発揮されていると思います。

実は当初は企画から3年ほどの期間で開発し実用化、商品化を考えていたのですが、様々な改良を加えるうちに4年以上の時間が経ってしまいました。というのも、先ほどもお伝えした通り、本来は建物の状態を見える化するための装置として開発したのですが、この商品を多くのハウスメーカーや工務店に紹介したところ、「こんな機能があったら」、「これも付け加えたら……」という意見が想像以上にありました。ただコストの問題もあるので、むやみに機能を増やせばいいという訳ではないので、悩ましい部分ではありました。

[ 貫 戸 ]
そんな皆様の声を聞いて開発したものがモニタリング機能付きアプリで、住宅会社とお客様が直接リアルタイムでコミュニケーションを取れるチャット形式のプラットフォームなどの機能があります。 例えば家の修繕依頼もこのツールを使えば円滑に連携できますし、タスク管理や家の資料の管理もサーバーにアップしておくことで簡単に行うことができます。さらに収集した地震や層間変形角のデータに基づいた修繕やリフォームの提案をはじめ、その後の定期的なアフターメンテナンスにおいてもお客様と良好な関係の維持、そして将来的な収益の確保にも貢献します。

[ 太 田 ]
これから新築住宅が減少していくなか、「これからはリフォームと管理の時代になる」とも言われています。家コネクトは既存の建物にも設置できるので、防災と耐震意識の高い住宅メーカーは他社と差別化ができるだけでなく、顧客への適切なリフォーム提案に役立てられるというのは、大きなメリットになると思います。また実際にモデルハウスなどの取り付けることで、自社の物件の品質の確かさを証明することも可能なので、活用方法次第でさらにメリットは広がると思います。

今後の販売戦略などに関して

[ 太 田 ]
家コネクトはハウスメーカーではない私たちが開発したことに意味があり、どのハウスメーカーや工務店でも導入できるというのが強みです。また地震計は市に数カ所しかないのが普通ですが、この商品を設置した建物が市内に複数あれば、より細かな地震による被害状況がスポットで集められるのもメリットです。

[ 貫 戸 ]
また家コネクトを避難所との公共施設に設置することで、地震発生時の建物の状態がリアルタイムで評価できるので、迅速かつ効果的な避難指示を行うことができます。こうした製品の特性が評価され、実際に土浦市では市内の8か所の公民館に家コネクトを設置、震災時の被害を最小限に抑える取り組み行っています。こうした現状が高く評価されたことで、「ジャパン・レジリエンス・アワード 強靭化大賞2025」にて最優秀賞を受賞、さらに2024年度グッドデザイン賞受賞など、数々の賞を受賞させていただきました。
そうしたこともあり、様々な防災イベントで出品をすると「ぜひ販売したい」との声をいただくのですが、現状は顧客のデータ管理ができるハウスメーカーや住宅メーカー、工務店様、そして自治体向けや、BCP 対策品として一般企業自社設置用の販売に限らせていただいております。設置して終わりではなく、何よりもその後のデータの管理、活用というのが最も大切だと思っています。

[ 太 田 ]
2025年4月に販売を開始されたばかりですが、数多くの反響をいただき、その大きさに驚いている一方、自分たちが考える以上に家コネクトの可能性が広がっていることを感じています。今後は家コネクトの導入を行政にも働きかけながらさらなる住まいの安全と安心の確保に努めたいと考えています。これからも皆様の声を聞きながらさらなるグレードアップ、例えば振動センサーを加えて侵入犯を察知したり、見守り機能を加えたりと、オーダーによって個別にカスタマイズを加えるなども検討して、さらに防犯にも役立てる商品として取り組んでいきます。本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト本文テキスト

 
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