73年の信頼と新しい発想で
地域社会に貢献する
株式会社丸協(愛知県)
代表取締役社長山本 真梨子 氏
代表取締役副社長石原 仁 氏
愛知県名古屋市中区の本社を拠点に、小牧市、豊田市に支店を展開する(株)丸協。1951年に製材業者として創立し、1978年に本社ビルを竣工して建築事業を手がけ、現在にいたる。73年の歴史と地域密着で得た信頼。木を知り尽くし培ってきた、木質住宅の専門メーカーとしてのノウハウ。さらに、若手社員の提案を取り入れる柔軟で自由な雰囲気の職場環境など、多岐にわたる強みが企業の安定を不動のものとし、創立100年を視野に入れた経営戦略を打ち出す。施工棟数は4,000棟以上を達成し、現在では年間約80棟。個人住宅、保育園・学校・高齢者住宅などの大型施設、法人から依頼される分譲住宅の施工などを行う。創立者の孫である4代目社長・山本真梨子氏と入社37年目の副社長・石原仁氏に、丸協の歴史やそれぞれの時代に合わせた戦略、経営の転機、新規プロジェクトの立ち上げ、将来のビジョンなどについてお伺いした。
つねに時代を捉える先見の明
丸協の近くには「堀川」があり、江戸時代から名古屋の幹線輸送路として重要な役割を担い、舟運が賑やかな川だった。江戸時代の終わりから昭和の中頃までは川岸に材木屋が並び、水面は丸太がびっしり浮かんでいたという。1951年(昭和26年)に初代が起業し、製材業者として丸協製材(株)を創立。その後、住宅資材販売や建設の事業を拡大し、1978年に本社ビルが竣工。「本社ビルを建てた頃が、一番大きな転機だったと思います。製材業から建築業に移行し、社名も丸協製材→丸協木材→(株)丸協になりました。建築業の売上げが伸びていたのと、製材業は台風の被害などがありリスクが高いため方向転換を図ったのです。この後、製材業・木材業は下火になり建築業は発展し、結果的には時代の流れに乗れて今があるんだと思います」と、丸協木材時代に入社した石原副社長は語る。
その後、名古屋市南部に仕事が増えたため、1994年に名古屋市南区の鳴尾支店を開設し本社機能を移すことに。さらに、2012年に小牧支店とモデルハウスを開設。「小牧支店は当初、『びおハウスF』というブランドのモデルハウスを開設しました。その後いろいろ変わり、現在は『エンズホーム』という高性能な高気密・高断熱の個人住宅に特化しています」と山本社長はいう。
近年の出来事を聞くと、「約7、8年前から大型施設を手がけています。200坪~400坪の中規模木造で、年間1~ 3棟。今では売上の1/3を占める事業になっています。その他には、2019年に鳴尾支店から本社機能を移転し、名古屋市中区の本社ビルに帰ってきたことです。古くからいる社員には、本社ビルに戻って再スタートという気持ちがあったと思います。いつまでも初心を忘れないように、令和元年になったその日を移転日としました」。これだけの長い歴史を経ても、ほとんど社員数は変わらないという。メンバーは変わっても社員数は20数名で規模はつねに同じという、堅実な経営がうかがえる。
住宅に関する様々な経験を活かす
商談ルームには創立当初の半被が飾られ、歴史を物語る。
山本社長は先代(現相談役)の娘で、約一年前に社長に就任。東京の大学で住生活環境を学び、卒業後丸協に入社。営業のサポートやインテリアコーディネーターなど住宅に関わる仕事を約10年し、産休・育休を取って職場に復帰。その後はお母様に代わって経理の仕事をし、先代から経営を学んだという。「高校の頃からインテリアに興味があり、その道に進みました。実家にいた頃は家業の詳しい事業内容までは知らなかったので、家を継ぐことは考えずに好きなことをやっていました。卒業後に東京で働こうとも思いましたが、その時代は女性が建築関連の仕事に就くことが難しく、名古屋に帰ってきました。社長になった今は皆さんにサポートしていただき、副社長の石原と一緒にやっていこうと考えています」。
石原副社長は約37年前に工業高校の建築科を卒業後入社。入社動機を聞いてみると「先代に拾っていただいたという感じです(笑)。出身は岐阜の高山で、出身校に先代が毎年求人を出していましたがだれも来ず、私が初めての入社でした。まだ木材業を営んでいた時なので2 ~3年は木材の業務をし、その後約15年間現場監督をし、営業職を希望して配属になり今にいたります」。
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中規模木造も手がける。心地よさを肌で感じることができる素材やデザインの福祉施設。
木の良さをふんだんに生かした住宅が多い。
木を取り扱うことについてのプロ集団
木造住宅へのこだわりを聞くと「もともと製材業から始まった会社なので、木を取り扱うことにおいてのプロ集団だと自負しています。良い意味で、木造に関してなんでもできる会社です。木で車を作れといわれれば、本当に作ってしまうような会社です(笑)」と石原副社長は本気まじりのユーモアをいう。山本社長は、「大型施設の建築でも木を使っていますが、保育園から高齢者施設まで幅広い年齢層の方が木の良さを直に感じられることがうれしいです。木は良い材料で丸協の強みです。腕の良い職人さんもいますし、長年名古屋で営んでいるので地域からの信頼もあり、人との繋がりが強くて広い。木の良さと人との繋がりが上手く関わり合っていると私は感じています」。
経営理念には、「お客様が満足する事を第一とし、それと共に会社・社員・協力業者の三位一体の繁栄に努め、住宅建設を通じて地域社会に貢献する」という一文がある。「丸協の強みは、理念にあるようにいろいろな方と幅広く付き合ってきたことが良かったと思います。時代の流れの中で景気が悪くなっても、幅広く多くの方から受注がいただけました。日常営業はしていますが、紹介受注が大半です。昔から着実に続けてきたことが、信頼を得ているのだと思います」と石原副社長は今までのことを振り返る。
木の特性を知り尽くしたスペシャリストとして、お客様の満足を第一に。
若手社員が育つ自由な社風を大切に
今後の事業計画は、『Lagom(ラーゴム)』という名で2月に新ブランドを立ち上げるという。「ラーゴムとは、多すぎず少なすぎず、ちょうどよく。という意味合いのスウェーデンの幸せの哲学のことです。今、一般の方も住宅に関する関心が高く、自分で情報も集め、こだわりたいところにはお金と時間をかけて情熱を注ぎます。そういう方たちをキャッチして一緒に家を建てていくことを、今後は考えていかなければ。デザイン力もとても大切で、30歳代の方たちには、おしゃれでなければスルーされてしまいます。ラーゴムはデザインにこだわって設計士さんと一緒に立ち上げるブランドです」と山本社長。新しいことを始めるには、人材育成も大切だという。「社内の環境や社員が仕事をしていて、楽しいと思うことをちょっとずつでも増やしていければ、上手く回っていくと思います」。
ラーゴムの企画は、社員のミーティングから生まれたと石原副社長はいう。「若手社員は会社の次の時代を担っていくので、自分たちはこれから何がやりたいのか、会社の強みは何なのかなどを考えて定期的にミーティングを行っています。ラーゴムは、今まで培ってきたものも時代が求める新しいものも含まれている家です。ミーティングは私が口を挟むと自由な新しい発想が出ないので、聞いているだけにしていますけど(笑)。一年前に社長が変わり、女性で若いということもあり、これから会社が変わっていくぞ! という楽しみが社員の間で生まれていると思います」。
その他には、リノベーションを増やしていきたいと山本社長はいう。「小さなリフォームは今もやっていますが、もう少し大幅なリフォームというかリノベーションですね。それによって今のお客様とも もっと繋がると考えています。時代的にも国の政策でも求められていますので。それにはまず、今あるものをしっかり行うことが信頼され続けることだと思っています」。
最後に山本社長に夢を語っていただいた。「夢というか…。私は普段の何でもない時でも幸せだなと思うことが多々あります。お金やモノのあるなしではなく、どんな環境でも幸せだと思えることが、一番幸せだと。それは自分の気持ち次第ですが、いつも8歳の子供と一緒に『幸せだねー』と言っています(笑)。そして、その幸福感が皆に伝わればいいなと思います。私だけではなく社員もそう思っていれば、会社全体が幸せになります。幸せだったら頑張れる。それがさらに業者さんに広がったら、住宅を建てる時もプラスワンの感情で仕事ができる。お客様にも広がれば幸せな家ができる。そんな幸せの広がりが夢です」。山本社長の温かい心が伝わり、会社の雰囲気を物語っているような一言だった。
2月に立ち上げるブランド「ラーゴム」。
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機能とデザインが合わさった、新しい個人住宅。
ピカイチ社員
プランナー高柳 亜矢加 氏
業務の内容は?
住宅関連全般の業務を行っています。インテリアコーディネート、お客様や現場で職人さんとの打合せ、完成検査、見積他、多岐にわたります。一日の仕事の流れも毎日異なり、週の半分くらいは現場に行きます。事務所に出社する日は、通勤の車の中で一日のスケジュールを立て、出勤したらメールチェックや打合せ、事務作業などまちまちです。
お仕事で心掛けていることは?
私は6年前に入社するまで、この業界を経験したことがありませんでした。ただ、インテリアは以前から好きで、自分で雑貨屋を始めたり、おしゃれなカフェに勤めたりしました。その経験と子育て主婦業の経験から、お客様目線で住まいを捉えることができるのが自分の特技だと思い、お客様の立場で考えることを大切にしています。また、この仕事は沢山の知識を必要とします。一年前から資格を取るためにインテリアコーディネーターの勉強をし、つねに新しい知識を得ることを心がけています。
うれしかったことや成功事例は?
お客様から「高柳さんにお願いしたい」と言われることですね。また、お客様の中には家づくりにストレスを感じてしまう方もいて、「家づくりをしていて楽しかった」と言われることもうれしいです。 成功例はまだありませんが、2月に立ち上げる新ブランドの「ラーゴム」に携わっています。設計士さんとコラボし、機能とデザインが合わさった面白い住宅の企画です。これが広く認知され、成功例になってくれるといいと思っています。
将来の夢は?
今回のラーゴムの企画のように、これから様々な業種の方とコラボできたら楽しいと思います。 プライベートの夢はまだまだ先の話ですが、最後の仕事は「おばんざい屋」の店を経営することです。今は、女性でも店長や社長になってバリバリやっていますが、そういう立場の人はなかなか愚痴を言うことができない。そんな人たちが集まって、おしゃべりをしながらゆったりできるおいしい店ができたらいいなと思います。
株式会社丸協のこだわりPOINT
お客様が満足する事を第一とし
会社・社員・協力業者の三位一体の繁栄に努め
住宅建設を通じて地域社会に貢献する
社長のひとこと
丸協の強みは、良い素材である木と人。
腕の良い職人さんや地域の信頼、人との繋がりが強くて広いことです。
会社情報
会社概要
社名 | 株式会社 丸協 |
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取締役社長 | 山本真梨子 |
取締役副社長 | 石原仁 |
所在地 | 〒460-0012 名古屋市中区千代田三丁目22番8号 |
電話 | 052-331-8001 |
会社沿革
1951年 | 製材業者として創立 |
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1957年 | 住宅資材販売部設立 |
1972年 | 建設部新設 |
1973年 | 豊田支店開設(木材部) |
1978年 | 本社ビル竣工 |
1980年 | 不動産部新設 |
1981年 | 営業部新設 |
1983年 | 資本金を2,500万円に増資 |
1994年 | 鳴尾支店開設 |
2005年 | 丸協設計一級建築事務所設立 |
2008年 | 本社ショールーム開設 |
2009年 | 現代町家第一号「尾張町家」完成 |
2011年 | 「尾張町家」10棟の街並完成 グッドデザイン賞を受賞 |
2012年 | 小牧支店/びおハウスFモデルハウス開設 |
2013年 | 第14回JIA環境建築賞 住宅建築部門優秀賞受賞 (びおハウスFモデルハウス) |
2016年 | あかりと家具の展示場を中区に開設 施工棟数3,600棟達成 |
2017年 | スノーピーク( 〇's 開設) |
2019年 | 鳴尾支店を本社住宅事業部に移転 |
事業内容
建築事業(戸建て住宅・集合住宅・各種大型施設・メンテナンス・リフォーム・リノベーション)