令和5年10月3日
「クリーンウッド法の改正」について
林野庁林政部 木材利用課 合法伐採木材利用推進班 課長補佐 齋藤 綾 氏
資材・流通委員会(入山明之委員長)は、令和5年度 第5回の「住まいのトレンドセミナー」を令和5年10月3日にZoomセミナーを開催し、林野庁の齋藤 綾・木材利用課長補佐が「クリーンウッド法の改正」についてをテーマに講演しました。
林野庁林政部 木材利用課 合法伐採木材利用推進班 課長補佐 齋藤 綾 氏が、「クリーンウッド法の改正」についてZoomで講演
最初に、齋藤課長補佐は林野庁が推し進めているウッドチェンジについて説明を行いました。 ウッドチェンジとは、身のまわりのものを木に変える、我々の暮らしに国産木材を取り入れる、建物を木造・木質化するなど、木の利用を通じて持続可能な社会へチェンジする行動活動をあらわすもので、この運動により、日本の林業が活性化し、森の手入れが行き届くようになり、CO2を多く吸収する健全な森林が育っていくと述べました。
しかし、そこで問題となるのが違法伐採であるとし、これについて解説を加えました。
それによると、違法伐採とは一般的にそれぞれの国の法律に反して行われる伐採であり、国際的に合意された定義はなく、それが解決を難しくしているそうです。
しかし、一般的には①国立公園や保護区の森林といった伐採禁止エリアで伐採。②得るべき許可を受けずに伐採(許可証の偽造を含む)。③許可された量、面積、区域等を超えての伐採。④先住民等の権利を不当に侵害して伐採する等の行為が該当し、違法伐採は環境破壊や地球温暖化の進行、不公正な貿易を助長するといった問題を引き起こし、また、資金が反社会的なゲリラやテロ組織に流れる可能性もあると説明しました。
次に齋藤課長補佐は、現行のクリーンウッド法制定の経緯について解説しました。
まず、1990年代に地球環境問題が世界的に議論されるようになり、2005年のグレンイーグルズサミットで違法伐採への取り組みを行うことが明記されました。そして翌年、日本においてもグリーン購入法の基本方針の改訂が行われました。
その後、米国のレイシー法(2008年)、EUの木材規則(2013年)、オーストラリアの違法伐採禁止法(2014年)など、欧米等で違法伐採に関する法律の整備が進みました。さらに2016年には伊勢志摩でサミットが行われることになり、日本においても違法伐採への取り組みの強化が求められました。その結果制定されたのが、合成伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(クリーンウッド法)だといいます。
続いて齋藤課長補佐は、現行のクリーンウッド法の目的と概要について以下のように説明しました。
クリーンウッド法は「自然環境の保全に配慮した木材産業の持続的かつ健全な発展を図り、もって地域及び地球の環境の保全に資することを目的」とする法律です。
クリーンウッド法においては、事業者は合法伐採木材を利用するように努めなければなりません。そして、木材を多く使う事業者を木材関連事業者とし、この事業者については、取り扱う木材等の原材料となっている樹木が我が国又は原産国の法令に適合して伐採されたことの確認(合法性の確認)が規定され、合法伐採木材等の利用を確保するための措置を講ずるよう務めるとされています。
また、取り組むべき措置を確実に講ずるものは、主務大臣が登録した登録実施機関による登録を受けることができ、登録木材関連事業者という名称を用いることができます。
この法律において、木材関連事業者とは①木材等の製造、加工、輸入、輸出又は販売(消費者に対する販売を除く)をする事業、②木材を使用して建築物その他の工作物の建築又は建設をする事業、③その他木材等を利用する事業とされています。
さらに、この木材関連事業者は、樹木の所有者から丸太を譲り受け、加工・輸出・販売を行う事業である第一種木材関連事業と、それ以外の事業の第二種木材関連事業に分けられています。
第一種木材関連事業者、第二種木材関連事業者ともに、取り組むべき措置が定められています。
まず第一種では、原材料となっている樹木が我が国又は原産国の法令に適合して伐採されたことを証明する書類を収集する、合法性の確認ができない木材等を取り扱わないことなどが努力義務として課せられています。
そして第二種では、合法性の確認を行なった旨及び合法性の確認ができた場合にはその旨の伝達、第一種木材事業者が収集した書類を確認することが努力義務として課せられています。
なお、現行のクリーンウッド法の対象となる物品は、木材及び木材を加工し、または主たる原料として製造した家具、紙等です。丸太や製材、フローリング、パルプ、紙など幅広い品目が指定されていますが、木造住宅は物品ではないため対象になっていません。
次に、齋藤課長補佐はクリーンウッド法の施行状況について解説しました。
現在、林野庁では、合法伐採木材等の流通の促進を図るために情報提供サイト「クリーンウッド・ナビ」を開設しています。そして、一般消費者を含めた普及啓発活動や、木材関連事業者を対象とした登録促進セミナー等を実施。その結果、令和3年に実施したアンケート調査では、第一種木材関連事業者は取り扱う木材等の約8割について合法性を確認できたと回答したそうです。
また、登録木材関連事業者の登録件数を見ると、今年8月末の時点で640件。取り扱う木材のうち、第一種で96%、第二種で92%について合法性が確認された木材を取り扱っており、合法伐採木材を積極的に取り扱う傾向が見て取れるといいます。
そして齋藤課長補佐は、世界的に見て違法伐採対策がさらに活発化していると話しました。今年日本で開催されたサミットでは、違法伐採対策を含む持続可能な森林経営と木材利用を促進することにコミットし、また、持続可能な森林経営と木材利用の促進のために、国連食糧農業機関、国連森林フォーラム、国際熱帯木材機関等の関連国際機関と協働するといったことが文言化されました。
また、EUでは新たにEUDRという法律が制定され、2025年ごろ施行されると考えられているそうです。この法律では、これまで木材だけだった対象品目が大幅に拡大され、牛肉、ココア、コーヒー、オイルパームなども対象になりました。これは森林開発を行い農地化するといった事業についても規制が及ぶことを意味し、森林減少に対する規制がより厳しくなっていることが伺えます。
このように国際社会全体が違法伐採への規制を強めており、我が国としてもさらなる取り組みの強化が必要ではないかという問題意識が生じています。そして、その考えに基づいて行われるのがクリーンウッド法の改正ということになります。
クリーンウッド法の改正にあたっては、令和3年9月から、学識関係者や業界関係者等からなる検討会を開催。関連団体やNGO等に対するヒアリング等を実施しつつ議論を重ね、令和4年4月に「中間とりまとめ」を整理しました。そこではクリーンウッド法について一定の成果があったとしたうえで、課題や今後の方向性を整理しています。
クリーンウッド法改正の概要は以下の通りです。
(1)川上・水際の木材関連事業者による合法性の確認等の義務付け
・川上・水際の木材関連事業者に対し、①原材料情報の収集、合法性の確認、②記録の作成・保存、③情報の伝達を義務付けします。
(2)素材生産販売事業者による情報提供の義務付け
・素材生産販売事業者に対し、伐採届等の情報提供を行うことを義務付けします。
(3)小売事業者の木材関連事業者への追加
・ホームセンターなどの小売事業者を木材関連事業者に追加し、登録を受けることができるよう措置。
(4)その他の措置
・指導・助言、勧告、公表、命令、命令違反の場合の罰則等を措置。
・違法伐採に関わる木材等を利用しないようにするための措置等を明確化。
・川上・水際の木材関連事業者に対する定期報告の義務付け、関係行政機関の長頭に対する協力要請を措置。
施行期日については、公布の日から起算して2年以内とし、令和7年の春頃を予定していると説明。詳細については、できるだけ早く案内する予定であると話しました。
齋藤課長補佐は、「森林への投資環境は変化しており、しっかりした森林経営を行うところ、しっかりとした木材を使うところには投資がなされるという世の中になっています。また、クリーンウッドナビに登録制度に関してのメリット等を記載していますので、登録に興味のある方はぜひご覧になってください」と話し講演をおえました。