令和5年9月5日
資材‧流通委員会委員会社による商品紹介
「WILLIAM MORRISの世界 ~MORRIS CHRONICLESブランドのご紹介」
株式会社サンゲツ スペースプランニング部門 ファブリックユニット 商品開発課 小西 真実氏
資材・流通委員会(入山明之委員長)は、令和5年度 第4回の「住まいのトレンドセミナー」を令和5年9月5日にZoomセミナーを開催しました。今回は1部と2部に分け、第2部の資材‧流通委員会委員会社による商品紹介では、株式会社サンゲツ スペースプランニング部門 ファブリックユニット 商品開発課 小西 真実氏が、MORRIS CHRONICLESブランドの紹介を行いました。
株式会社サンゲツ スペースプランニング部門 ファブリックユニット 商品開発課 小西 真実氏が、「WILLIAM MORRISの世界 ~MORRIS CHRONICLESブランドのご紹介」をZoomで講演
株式会社サンゲツは、イギリスを代表する老舗インテリアメーカーSanderson Design Group社と共同で開発した「MORRIS CHRONICLES(モリスクロニクルズ)」ブランドを今年7月に発表しました。今回はブランド担当の小西氏から、ウイリアム・モリスについてやモリスクロニクルズブランドの特徴、コーディネートブックについてのご紹介がありました。「モリスは、19世紀のイギリスを代表するデザイナー・詩人・ 思想家であり、アーツ&クラフツ運動を扇動した人物です。1834年にロンドンのウォルサムストーで生まれました。女性が多い家庭で育ったため、日々の裁縫や庭仕事、飾り付けは、彼にとって身近な事でした。また、子供の頃のモリスは、森や庭、花、鳥たちに心惹かれていました。この幼い頃の経験と中世主義への興味が、彼の芸術や詩の根底にあります。オックスフォード大学に在学中、モリスは彼の生涯を通じての友人となるエドワード・バーン・ジョーンズと出会います。美術評論家のジョン・ラスキンに傾倒した彼らは、中世の卓越した工芸の技術と、職人たちの社会的地位を重んずるというラスキンの思想に賛同しました。この出会いと元来の自然への親しみにより、モリスはアーツ&クラフツ時代の偉人として台頭することとなります」。
小西氏はモリスの思想を表す代表的なこととして、「役に立たないものや、美しいと思わないものを家に置いてはならない」という言葉をあげました。「生活と芸術を一致させようとしたモリスの思想は、各国にも大きな刺激を与え世界各国の美術運動につながりました。この動きは柳宗悦によって提唱された日用品の中に美(用の美)を見出そうとする日本民藝運動へもつながっており、いかにモリスという人物が世界の歴史・美術史において重要な役割をはたしたかということがわかります」。
次に、モリスが設立したモリス商会についてのご説明がありました。「モリスが生きた18世紀のイギリスは、産業革命の時代でした。産業革命の結果として、大量生産による安価で粗悪な商品があふれていました。モリスは中世の手仕事に帰り、生活と芸術を統一することを主張します。そして自らの思想を実践するためにモリス商会を設立し、手作業で作られた美しいインテリア製品を数多く制作しました。また、刺繡や染色、タペストリーなど自ら開発した造形の全体を指揮するアート・ディレクターでもあり、自らの思想をモリス商会での活動を通じて体現したことで、モダンデザインの先駆者としてデザイン史で名を残しています。さらに、詩人としても知られていたモリスは、象徴的で優美な花言葉が収められた昔の物語(クロニクル)や書籍を好んでいました。彼の身近に豊かに存在していた自然のモチーフと、中世への深い関心、そして美しい物語を紡ぐ能力が織り重なり、彼の原動力となりました。モリス商会のデザイナー達もまた、40年以上にわたりモリスの工房の庭の自然や動植物を記録し、素晴らしいデザインをつくり続けました」。
モリスのデザインが時を経て今も愛され、受け継がれていることの一つとして、Sanderson Design Group社のモリスアーカイブについての説明がありました。「モリス商会のすべての壁紙は、前身のモリス・マーシャル ・フォークナー商会の時代からずっと、その優れた芸術的感性を買われたブロックプリント業者のジェフリー商会によって印刷されていました。 ジェフリー商会は1926年にWallpaper Manufacturer社に買収されますが、サンダーソン社の工場もここに属しており、翌年の1927年には商会の全ての流通販売がサンダーソン社へ譲渡されます。この時に譲渡された壁紙および版木などのデザインアーカイブが、現代にも続いています」。
このデザインアーカイブを元に、MORRIS CHRONICLESブランドはつくられているといいます。「MORRIS CHRONICLESブランドは、1864年から1912年にかけてつくられたモリスの自然を賛美するデザインが収められています。時代を超えて愛されてきたモリスのデザインアーカイブに、現代の嗜好やライフスタイルとの調和を目指したデザインアレンジを施し、新たに誕生しました。ブランド名には、CHRONICLE(年代記)のように、アーカイブスに込められた想いをひもとき、世界中で愛され続けてきたモリスデザインのストーリーや世界観の魅力を伝えたいという想いを込めています。自然を愛したモリスがその感動と美しさを落とし込んだデザインの、歴史の重みを大切にしつつ、そのアーカイブを活かして現代の新しい感覚で壁紙・ 床材・ファブリックのアイテムに取り入れました。モリスのデザインに込められた想いやストーリーを熟知するSDG社と、壁紙・床材・ファブリックをトータルに扱い、空間を創造するサンゲツとの共同開発により商品化が実現しました」。統一テーマによる壁紙、床材、ファブリックの商品開発は、モリスのライセンス商品では世界で初めてで、空間全体でモリスの新たな世界観が楽しめると小西氏はいいます。
セミナー会場には、分厚いカタログブックが配られました。美しい室内コーディネートの写真と実際の生地見本を触れて確かめられるものになっています。「Sanderson Design Group社とのパートナーシップのもと、アーカイブに込められた繊細な思いを紐解きながら、サンゲツ独自のアレンジで2年の歳月をかけて作り上げたブックです。特徴としては、①日本の現代空間になじみやすい、サンゲツ独自のアレンジを意識したこだわりの商品づくり②豊富な写真による、エレメント横断の組合せ提案③無地商品とのコーディネートなどが挙げられます。モリスの持つ世界観を大切にしながら、シンプルやナチュラルの雰囲気が好まれやすい日本の空間に、自然になじむ意匠を目指したコレクションとなっています。機能性も重視し、遮光カーテンなど日本人のニーズに合わせた製品もあります」と、ブックを見ながら特徴と各ページのモリスの代表的な柄の説明やコーディネートポイントの話が続きました。
最後に小西氏は、「モリスのデザインを好む日本人は50歳代が多いですが、今回発表したMORRIS CHRONICLESは、日本のデザインテイストやライフスタイルを取り入れたものですので、30~40歳代のこれから新築を建てる方にもモリスの新しいファンになっていただきたいと思います」と、ブランドへの想いを語りました。