令和5年2月7日 【第1部-1】
資材‧流通委員会委員会社による商品紹介 「省エネと窓の重要性について・YKK AP樹脂窓の取り組み」
YKK AP株式会社 執行役員 住宅本部 住宅商品企画部長 山田 司氏
資材・流通委員会(澤田知世委員長)は、令和4年度 第8回の「住まいのトレンドセミナー」を令和5年2月7日にZoomセミナーとして開催しました。今回は1部と2部に分け、第1部の資材‧流通委員会委員会社による商品紹介では、YKK AP株式会社 執行役員 住宅本部 住宅商品企画部長 山田 司氏が、「省エネと窓の重要性について・YKK AP樹脂窓の取組み」の紹介を行いました。
YKK AP株式会社 執行役員 住宅本部 住宅商品企画部長 山田 司氏が、「省エネと窓の重要性について・YKK AP樹脂窓の取り組み」をZOOMで講演
YKK AP株式会社は、「窓」をはじめとした建築用プロダクツを通して、健康で快適な暮らしを提供する企業です。
今回は“省エネと窓の重要性”と“YKK AP樹脂窓の取組み”について、山田部長が話しました。
まず初めに、省エネ関連の市場動向のグラフを見ながら説明がありました。
「世界のエネルギー事情は、新興国を中心とした経済成長と人口増加により化石燃料の需要増大が見込まれており、世界で資源獲得競争が激化する懸念があります。日本のエネルギー事情については、家庭部門のエネルギー消費と経済活動等を見ると、2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で在宅率が上昇し、エネルギー消費が増えており、冷房などの大きなエネルギー消費を減らすことが急務となっています。更に電気代が高騰しており、今後もこの傾向は続くと考えられています。
また、近年は異常気象も増加しており、温暖化で夏の冷房による電気使用量も増えるばかりです」。これらの問題の本質は、日本の家の断熱性能の低さにあるといいます。「日本の住宅性能が海外と比べて低かった理由の一つに、国による制度面の強化の遅れがありました。2050年カーボンニュートラルの実現を目指すために、家づくりも今後は国の政策の省エネ上位等級の新設で変わっていきます。2022年度の断熱等性能等級5・6・7の新設は、23年ぶりの等級追加になり大きな変化が起きました。
また、2025年の等級4適合義務化予定、2030年度の等級5適合義務化予定などもあります」。
日本の住宅性能を高めるために、YKK APは10年前から断熱性の高い樹脂窓に取り組んでいました。「取り組み始めた頃は、樹脂窓というと寒冷地の商品というイメージがありました。YKK APは高性能で様々なメリットがある樹脂窓を、本州にも広げていきたいと考えました。
10年間の軌跡は、2009年にAPW樹脂窓という商品を発売しました。寒冷地のものとは違って本州で大々的に売り出すには、本州で標準的に使われているアングル(サッシやドアなどを室内側の窓枠と固定するための部材)や、いままで寒冷地では使われていなかったラインアップで、従来のアルミサッシやアルミ樹脂複合窓から切り替えやすく使いやすいものにしました。年々、カラーバリエーションやデザインバリエーションを増やし、商品ラインアップの充実を図っていき、様々な賞も受賞しています。
また、樹脂窓はガラス入りの完成品を納入するので輸送コストもかかるため、全国に生産拠点を設けています」。樹脂窓普及のための「草の根」活動も行ってきたといいます。
「この10年間は、樹脂窓の本州での普及が成功することを信じてやってきました。活動としては、プロユーザー向けにAPWフォーラムを8年間継続し、コロナ禍以降はオンラインイベントを行っています。その他、エンドユーザーに対しての啓蒙活動としては、情報誌やカタログ、書籍等も発行しています。フォーラム等を行っていく中で、有識者からの講演等もあり様々な情報が入ってきます。樹脂窓は省エネ以外にも健康にも良いということがわかってきたので、健康面も併せてお伝えしています。例えば断熱改修による血圧の変化等の医学的なデータや、冬期の窓の結露比較と結露と健康の関連性等です」。販売構成比も伸びているといいます。「2011年に7%だったものが2021年で31%になりました。信じてやってきた成果だと思います」。
省エネには窓が重要だということを、図や窓タイプ別の比較で説明がありました。
「窓からの熱の流出入は、夏は74%流入し、冬は50%流出します。家の中で熱の入出が一番大きいのが窓なので、省エネを考える上で大きなポイントとなります。開口部の断熱性を壁の断熱材に例えると、一番断熱性能が高い樹脂窓のトリプルガラスでも、壁と比べると半分程の断熱性能しかないことがわかります。断熱性能は体感や住んでみないとわからないので、2016年に品川で体感ショールームをつくり、現在は8カ所を展開しています」。
窓の材質別構成比のグラフを見て、樹脂窓化の促進についての話がありました。
「2021年の新築住宅(木造)の窓の材質別構成比は、アルミ窓8%、アルミ樹脂複合窓66%、樹脂窓が26%になります。ここ10年でアルミ窓の採用は大きく減っていますが、樹脂窓の採用はまだ少ないといえます。少ないということはまだ伸びしろがあり、それを伸ばしていくことが省エネにつながり、2050年のカーボンニュートラルを目指すことにも有効だと思います」。
次に世界の断熱基準の表を見て、「日本は他国より窓の断熱基準値が低く、現時点では説明義務化が課せられています。2025年からは適合義務化に移行する予定があるので、改善されると思います。なかなか日本は高断熱窓が普及していませんが、現在日本で一番普及しているアルミ樹脂複合窓も性能の良い製品が開発されています。
しかし樹脂窓との一番の違いは結露です。また、アルミ樹脂複合窓は内装材の部分にもアルミが回っているので、躯体内結露による腐朽やダニ・カビによる人体への悪影響が考えられます。健康面を考えると、そこまで考えられているアルミ樹脂複合窓か樹脂窓かを選ぶ方が良いと思います」。
新築の断熱等性能等級と省エネ効果について、表の数値を見ながら話しがありました。
「初めにお話ししたように、2022年度に省エネ上位等級5・6・7が新設されました。この等級はどれぐらいの水準かというと、地域の外皮平均熱貫流率(UA値)で見ると、札幌の断熱等性能等級4が東京の断熱等性能等級6と同等になります。これまで札幌で建てられていた新築住宅が、これから東京でも建っていくというレベルの話になります。レベルが上がってくるので、家づくりが大きく変わってくると思っています。これからの最低ラインは等級5で、他社との差別化を図るためにも住宅市場全体が等級6や7を中心とする高水準へシフトすると予想しています」。
最後にストック住宅についての説明がありました。
「国の目標として、2050年にストック平均でZEHレベルの省エネ性能の確保を目指すとありますが、2021年度で住宅ストックは約5,000万戸あり、87%が現行基準を満たしていません。この住宅ストックをZEHレベルにするには窓のリフォームが一番効果的です。2023年3月からは補助金制度「住宅省エネ2023キャンペーン」が開始されます。一番大きい補助金制度は略称「先進的窓リノベ」で、リフォーム対象の補助金としては今まででも最大だと思います。高断熱窓の設置で上限200万まで補助を受けることができます」。高断熱窓への交換は、内窓設置と外窓交換(カバー工法)、外窓交換(はつり工法)の3つがあるといいます。YKK APの補助金対象商品の説明や補助金額等を、わかりやすい図や表での説明がありました。「内窓設置には、防音・防犯効果や結露の発生が抑えられる効果があります。様々なメリットをお客様に訴求していこうと考えています」と、今後の活動を語りました。