令和4年12月6日
【第1部】「第6回国産材利用実態調査報告書深堀調査報告会」
東洋大学 理工学部 建築学科 教授 浦江真人 氏

資材・流通委員会(澤田知世委員長)は、令和4年度 第7回の「住まいのトレンドセミナー」を令和4年12月6日にzoomセミナーとして開催しました。今回は1部と2部に分け、第1部で東洋大学理工学部 教授 浦江真人氏が「第6回国産材利用実態調査報告書深堀調査報告会」について説明を行いました。
東洋大学 理工学部 建築学科 浦江教授が、「第6回国産材利用実態調査報告書深堀調査報告会」をzoomで講演
本講演は、3年毎におこなっている国産材利用実態調査の第6回の調査結果を深堀りした結果の報告です。昨年のは木材の供給会社とプレカット会社の全体の国産材利用の実態調査を行いましたが、今年は住宅供給会社の供給地域別と、住宅供給会社およびプレカット納入会社の規模別に見た木材利用の実態調査を行ったということです。
浦江教授は最初に、アンケートに回答した住宅供給会社の属性分析を解説。
アンケートに回答した全88社のうち、年間供給戸数が300戸以上の会社が25社、戸数割合が90%を占め、大規模な会社が多かったと説明しました。また、地域別の住宅供給会社数・戸数を見ると、単独地域(地場)への供給を行う会社と比べ、複数地域(広域)への供給を行う会社が多く、その住宅供給数の割合は、全体の80.4%と多い。そして、その割合は増加傾向にあると話しました。
続いて、「住宅の各部位の木材使用状況(住宅供給会社)」について解説を行いました。
まず、単独地域(地場)に供給する会社と複数地域(広域)に供給する会社別に見た、各部位の木材使用状況の集計結果についてです。
管柱、通し柱、土台、大引、母屋・棟木、横架材、羽柄材(間柱)、羽柄材(筋かい)、羽柄材(その他)という部材別に傾向を解説。構造材全体(管柱から羽柄材まで)で見ると、九州・沖縄地域は管柱、通し柱、土台、大引が100%、羽柄材(筋かい)が93.5%と他の地域に比べ国産材の比率が高くなっている。部位別にみて、国産材率が特に高いのは、関東の土台(95.0%)と大引(93.5%)である。また、サンプル数が少ない北海道、九州・沖縄を除くと、構造材合計で国産材比率が全地域の平均(41.8%)より高いのは、複数地域への供給を行う会社のみであり、こうした会社が国産材比率の増加に大きく影響していると解説しました。
次に、住宅供給会社を供給地域区分別に見た、各部位の木材使用状況の集計についてです。これは単独地域(地場)に供給する会社と複数地域(広域)に供給する会社を問わず、その地域の住宅の木材使用状況を表したものです。
代表的な部材として管柱、および構造材合計(管柱から羽柄材まで)の集計結果について解説。複数地域(広域)に供給する会社の住宅が、各地域に割り振られた結果、全国平均に近い数値となっている。構造材合計で国産材比率が全地域の平均(41.8%)より高いのは、九州・沖縄の56.8%、中国・四国の44.1%。低いのは北陸・甲信越の36.9%、北海道の37.5%であると説明しました。
次に、住宅供給会社を供給戸数区分別に見た、各部位の木材使用状況の集計についてです。
代表的な部材として管柱、横架材、構造材合計(管柱から羽柄材まで)の集計結果について解説。規模が小さい住宅供給会社ほど国産材使用率が高く、大きいほど国産材の比率が下がっている傾向があると話しました。また、構造材合計(管柱から羽柄材)を見ると、1~4戸の供給会社が57.6%、5~9戸の供給会社が37.2%と小規模な会社が国産材使用率が高いことがわかる。ほかで高いのは5000~10000戸(60.4%)、100~499戸(42.4%)で、反対に低いのは500~999戸(19.6%)、10~49戸(22.8%)であると解説しました。
続いて、「住宅の各部位の木材使用状況(プレカット会社)」について解説を行いました。
まずプレカット会社を納入地域区分別に見た、各部位の木材使用状況の集計についてです。 代表的な部材として管柱、横架材、構造材合計(管柱から羽柄材まで)の集計結果について解説。構造材合計(管柱から羽柄材まで)を見ると、国産材比率が高いのは九州・沖縄の54.7%、中国・四国の34.0%であり、低いのは関東の14.4%、北海道の15.9%である。また、部位別に見ると、比較的国産材率の高いのは土台で、全国各地域で使用率が高いと解説しました。
次に、プレカット会社を納入戸数区分別に見た、各部位の木材使用状況の集計についてです。
代表的な部材として、管柱、横架材、構造材合計(管柱から羽柄材まで)の集計結果について解説。構造材合計(管柱から羽柄材まで)を見ると、納入戸数10~49の小規模なプレカット会社は、すべての部位で使用率100%となっている。部位別に見ると、どの規模の会社においても土台の国産材使用率が平均56.7%と高くなっていると解説しました。
続いて「下地材(床・外壁・屋根)についての検討(住宅供給会社)」について解説しました。
単独地域(地場)に供給する会社と複数地域(広域)に供給する会社別に見た下地材の集計を見ると、構造用合板における国産材利用率が高いが、下地材(床)は地域によって使用する樹種に違いがあると解説しました。さらに、下地材について、供給戸数区分別に見た集計、樹種別使用割合の集計についても解説。また、プレカット会社の集計についても説明しました。
続いて「ウッドショックについての検討(住宅供給会社)」について解説しました。
「今後ウッドショックをふまえて、国産材利用拡大に取り組みたいか?」という質問に対する答えを供給戸数区分別に見ると、5000~10000戸供給している規模が大きな2社はどちらも取り組みたいと答えている。一方、中小規模の会社は、取り組む可能性はあると答えるにとどまる割合が高く、規模が大きい会社のほうが国産材使用拡大に取り組む意欲が強いという結果になっていると説明しました。
続いて「木材の調達(住宅供給会社)」について解説しました。
木材の購入を供給戸数区分別に見ると、会社の規模にかかわらずプレカット会社から購入していることが多く、供給数5~9戸、10~49戸、50~99戸、500~999戸の会社では約80%を占めている。その中で5000~10000戸の大規模な会社のみ商社からの購入が48.1%と最も多く、プレカット会社からの購入42.8%を上回っていると説明しました。
続いて「国産材の使用(住宅供給会社)」について解説しました。
まず、国産材を使用する理由というアンケート項目について。国産材比率が高い(61~80%)会社では、「地産地消の推進」が30%で1位。次いで「品質が良い」、「他の住宅会社との差別化」(各20%)となっている。また、ウッドショックの影響もあり「外国産材に比べて価格が安い」という回答はなかったとしました。
また、国産材を使用しない理由として最も多いのが、「価格が高い」で28%。次いで「強度など品質手を付ける劣る」、「乾燥材の入手が難しい」で各17%となっていると説明しました。
続いて「炭素貯蔵量についての検討(住宅供給会社)」について解説しました。
林野庁が「建築物に利用した木材に関わる炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン」および「炭素貯蔵量算定シート」を公表したことに触れ、これにより建築物の炭素貯蔵量をCO2換算で表示できるようになったと説明。こうした数値は、「建設後の個々の木造軸組工法住宅に関する詳細な炭素貯蔵量の表示」、あるいは「住宅供給会社の年間の炭素貯蔵量の算出」、「営業担当者による非木造住宅との競合した際の環境貢献のお客様への説明」というような活用の仕方があるのではないかと述べました。
最後に「今回、地域や会社の規模による木材の使用状況の違いが明らかになりました。これらは個別の会社ごとにも異なるため、その実態と理由をより詳しく見ていくとまた新しい発見があるのではないでしょうか。興味がある方は、ぜひ報告書を読んでいただきたいと思います。」と述べ、報告を終えました。