令和4年11月8日
【第2部】「グリーンリフォームローン(令和4年10月開始)と【フラット35】における省エネ基準の要件化
(令和5年4月開始)のご案内」
独立行政法人住宅金融支援機構 マンション・まちづくり支援部
技術統括室 技術支援グループ グループ長 野上 雅浩 氏

資材・流通委員会(澤田知世委員長)は、令和4年度 第6回の「住まいのトレンドセミナー」を令和4年11月8日にzoomセミナーとして開催しました。今回は1部と2部に分け、第2部で独立行政法人住宅金融支援機構 マンション・まちづくり支援部 技術統括室 技術支援グループ グループ長 野上 雅浩氏が、「グリーンリフォームローンと【フラット35】における省エネ基準の要件化のご案内」の説明を行いました。
独立行政法人住宅金融支援機構 マンション・まちづくり支援部 技術統括室 技術支援グループ グループ長 野上 雅浩氏が、「グリーンリフォームローンと【フラット35】における省エネ基準の要件化のご案内」の説明をzoomで講演
2022年10月に開始したグリーンリフォームローンについて、創設の背景、概要、融資額、必要工事など、全体が把握できる内容でした。
2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、国は住宅の省エネ化を図るための段階的に目指すべき目標を立てています。実現に向けては、新築住宅の省エネ性能向上だけではなく、既存住宅の省エネリフォームの推進も重要な課題となっています。そのため住宅支援機構においても、2022年の10月から、新築住宅については【フラット35】S(ZEH)が創設され、既存住宅については省エネ化を進める支援の一つとして、今日ご案内するグリーンリフォームローンが創設されました。
既存の住宅ストックは現在約5,400万戸あり、その中で省エネ基準を満たしていないものは約9割といわれています。また、現在リフォーム工事が行われている住宅でも、省エネ工事が行われているものはわずか4%という国交省の調査結果もあります。なかなか個人のお客様には省エネリフォームはなじみが薄いかも知れませんが、省エネリフォームは効果を実感できるものであります。エネルギー効率が高いので光熱費を節約でき、住まいの温度差をなくして健康を増進でき、結果としてCO2排出量が減って環境問題にも貢献できるという省エネリフォームのメリットを、グリーンリフォームローンを通じて、お客様にお伝えできればと考えているとのこと。
グリーンリフォームローンは省エネ工事のための全期間固定金利の公的ローンで、通常のグリーンリフォームローンと省エネ性能の特に高いグリーンリフォームローンSの2種類があります。
主な特徴は、次のとおりです。融資額は、最大500万円。省エネリフォームを対象として、その他併せて行うリフォームも対象になります。融資手数料は無料で、無担保、無保証で利用可能。 省エネルギー性能を著しく向上させるZEH水準のグリーンリフォームローンSは、さらに金利が引下げとなります。
また、満60歳以上の方は毎月のお支払いを利息のみとする、高齢者向け返済特例(ノンリコース型) も利用可能です。(高齢者返済特例をご利用にいただく場合は担保提供いただく必要があります。)
グリーンリフォームローンの対象となる住宅は、ご自身が居住する住宅もしくはセカンドハウスや親族が居住するための住宅です。
対象となるリフォームは、断熱改修工事または省エネ設備設置工事を含むリフォームとなります。省エネ工事だけではなく一緒に行うリフォームも対象となります。例えば水回り工事や断熱材を入れるために合わせて行う内装の工事、間仕切り変更の工事なども融資対象となります。
なお、返済期間は10年以内となります。
図を用いて、対象となる工事のイメージの説明がありました。馴染みある工事としては、断熱性の高い窓などへの交換工事、エコキュートやエコジョーズなどの高効率給湯器の交換・設置、高断熱浴槽への取替え、太陽光発電設備の設置があります。
融資額は、①限度額の500万円②省エネ工事費の2倍③リフォーム工事費の①~③のうち、一番低い額が融資限度額です。融資額の考え方の具体的な例としては、「例えば、省エネ工事費が200万円+その他の工事費が450万円、合計650万円で20万円の補助金交付があった場合。融資額①~③に当てはめてみると、①限度額の500万円②省エネ工事費の2倍の400万円③リフォーム工事費総額から補助金20万円を引いた630万円となり、一番金額の低い②省エネ工事費の2倍の400万円が融資額となります」。
融資をご利用いただくためには、「①省エネ基準レベルへの断熱改修工事」または「②省エネ設備設置工事」のいずれかの工事を実施することが必要です。
「断熱改修工事」について、開口部は、窓・ドアなど1箇所以上の工事を行い、省エネ基準を満たすことが条件なので、開口部1つ満たせば要件に適合することができます。ただし、融資額は省エネ工事費の2倍なので、まとまった省エネ工事をしなければ必要な融資額は受けられないということもあります。
躯体については、壁、天井、屋根または床のいずれかの部位に対して省エネ基準を満たす断熱材の工事を行います。なお、壁全体、床全体といった部位全体の工事ではなく、部位の一部分の工事でも要件に当てはまります。断熱材の省エネ基準を満たす工事の他、一定量以上の断熱材の工事を行う場合でもかまいません。
また、リフォーム後の住宅全体の断熱性能が省エネ基準(断熱等性能等級4相当)を満たす断熱改修工事を行う場合は、要件工事を満たすものとして取り扱います。省エネ設備設置工事は、一定の性能を満たす設備の設置・交換をする工事です。設備は、高効率給湯機、太陽光発電設備、太陽熱利用設備、高断熱浴槽、コージェネレーション設備となります。
次に、グリーンリフォームローンSの必要工事について説明がありました。
「ZEH水準の断熱改修工事を実施するものです。例えばLDK内など、住宅の一部を対象としたいわゆる部分断熱と、住宅全体を対象とした断熱改修工事が対象となります。資料のイラストで示しているように、例えば、リビングとキッチンを1区画とした場合、区画内の外気に面する全ての開口部と、躯体の壁、天井、屋根または床のいずれかの部位をZEH水準にする必要があります。なお、すでに該当部分がZEH水準になっている場合は工事を実施する必要はありませんが、ZEH水準とするための工事を実施しない場合は対象にならないとのこと。
高齢者向け返済特例(ノンリコース型)の詳しい説明がありました。「、満60歳以上の方が、高齢者向け返済特例制度をご利用いただくと、毎月のお支払いを利息のみでグリーンリフォームローンをご利用いただけます。 固定金利であるため毎月の支払い額は確定しており、元金は申込人全員が亡くなられた時に、相続人の方から一括して返済いただくか、担保物件(住宅および土地)の売却代金により返済いただきます。
ノンリコース型であるため、担保物件の売却代金が残債務に満たないときであっても、相続人の方が残った残債務を返済する必要はありません。
このローンが利用されるケースとしては、例えば、相続する子供たちがそれぞれ住宅を持っていて、実家に住む必要がないというようなケースが考えられます。なお、利息は死亡時まで支払うため、利息の総支払額が多くなる可能性があります。また、相続人がその家を相続して住むことを希望している可能性もあります。よって、よく理解した上でご利用いただくことで、トラブルを回避する必要があり、ご利用にあたり、お申込み前に必ずカウンセリングを実施しています。
次に参考として、借入額500万円の場合の月々の返済額についての具体的な数値、リフォーム融資のラインナップ、省エネリフォームのための助成事業などの資料説明がありました。
最後に、『【フラット35】の省エネ基準要件化についての動画を見た後に解説がありました。
「国が定める省エネ施策として、2025年度から新築住宅の省エネ基準適合が義務化されます。それに先駆けて2023年4月から【フラット35』を利用する際に、省エネ基準を満たさなければ利用できないという制度改正があります。
省エネ基準は、①断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上または②建築物エネルギー消費性能基準に適合する必要があります。現在の基礎基準である断熱等性能等級2相当では利用できなくなるので早めの準備が必要となります。住宅金融支援機構では、2023年4月の【フラット35】の省エネ基準要件化について周知を引き続き行っていきますので、ご協力お願いします」と、締め括りました。