令和4年11月8日
【第1部】「東京ゼロエミ住宅の概要」について
株式会社エヌ・シー・エヌ 環境設計部 部長 前田 哲史 氏

資材・流通委員会(澤田知世委員長)は、令和4年度 第6回の「住まいのトレンドセミナー」を令和4年11月8日にzoomセミナーとして開催しました。今回は1部と2部に分け、第1部で株式会社エヌ・シー・エヌ 環境設計部 部長 前田 哲史氏が、「東京ゼロエミ住宅の概要」の説明を行いました。
株式会社エヌ・シー・エヌ 環境設計部 部長 前田 哲史氏が、「東京ゼロエミ住宅の概要」の説明をzoomで講演
今回は東京ゼロエミ住宅の概要、最高水準3の実例紹介、補助金申請サポート紹介の3つのポイントについて説明がありました。
株式会社エヌ・シー・エヌの令和4年度の実績は17社100棟をサポートし、依頼の80%が最大210万円の助成金を受けられる水準3であるといいます。
東京ゼロエミ住宅は東京都独自の基準で、東京都と国が定める省エネ基準をグラフで比較しながら説明がありました。「グラフの横軸はUA値(熱逃げ量)、縦軸はBEI(省エネルギー性能指標。2013年を1.0とする指数。再エネを含まない)です。現在、国が定める省エネの最低基準は、UA値が0.87、BEIは1.0。ZEH基準(国が定める誘導基準)はUA値が0.6、BEIは0.8で、国の最低水準よりエネルギーを20%削減したものになります。
国はもう一つ基準を設けていまして、品確法という性能を等級で表す基準があります。UA値は国が定める省エネの最低水準が等級4。ZEH基準は等級5以上です。BEIは国が定める省エネの最低水準が等級4。ZEH基準は等級6以上です。
東京ゼロエミ住宅は水準1~3まであり、
水準1はUA値が0.7、BEIが0.7。エネルギーを国の最低水準より30%削減します。
水準2はUA値が0.6、BEIが0.65。エネルギーを国と比べると35%削減します。
水準3はUA値が0.46、BEIが0.6。エネルギーを国と比べると40%削減するかなり高いレベルのものです。
東京都の説明会でも、水準3は高い省エネ性と快適性を備える住宅として積極的に取り組んでほしいという話がありました。このように、東京都と国の基準は異なります」と説明しました。
また、令和4年10月1日改正の東京ゼロエミ住宅指針において、「今まで、木造住宅は断熱性が取りやすいところから現在の基準と同様でしたが、非木材住宅については基準を低く設定していました。それではダブルスタンダードだという声もあり、構法による不平等はやめて、非木造住宅も木造住宅と同様の基準に改正されました」と、付け加えました。
次に必ず適合すべき仕様については、東京都は国の基準と異なり足切りラインを設けているといいます。決められた仕様でなければ、水準1、2、3どれも認めないというものです。大きく分けると、開口部の断熱性、設備の省エネ性能です。これも東京都と国の建築物省エネ法を比較して説明がありました。
「暖・冷房設備について、東京都は主たる居室に必ず設置し、国は設置しなくても可となっています。照明設備(LED照明)は、東京都は必ず設置し、国は設置しなくても可。エアコンを含む複数の暖房設備を兼用する場合はさらに大きな違いがあり、東京都は床暖房が付いていてもエアコンのみを使用するものとしてBEIZEを計算可、国は「評価の優先順位」の高い暖房設備機器などにより評価してBEIを算定。これは、東京都近郊の住宅では床暖房に根強い人気があり、国の基準のように床暖房で計算すると数値が悪くなるということがあります。太陽光発電システムについては、東京都はマストではなく可能な限り設置が望ましいとされBEIZEに算入しませんが、国はBEIに算入します。このように東京都と国のダブルの基準があるので、設計士の方も計算に苦労されているのが実態です。これはまだまだこれからの改良点だと思います。認証審査会社は現在22社あり、認証制度に関する質問や計算が合っているかどうかなど、各社に相談ができるサポート体制もあります。当社でも相談に応じます」と、前田氏は言います。
次に助成制度については、「対象住宅は、都内の新築住宅で戸建も集合住宅も対象ですが、床面積の合計が2,000平方未満となります。対象者は個人または事業者の建築主。デベロッパーが建てている分譲住宅や太陽光発電システムがリースの場合は、デベロッパーやリース事業者も対象となります。受付期間は令和5年3月31日まで、申請総額が予算に達した時点で受付終了になる先着順です。しかし、予算がなんと約132 億円(当初予算104億円+補正予算28億円)もあり、全国を対象とする制度と同等の国家予算並みの規模なので、本年度は抽選なしの先着順でいけるのではないかと予測されています」。
交付申請受付は『クール・ネット東京』と呼ばれている事務局で、助成金の申請に関する質問も受け付けているといいます。「助成金額は、戸建住宅で水準3の場合は一戸当たり最大210万円です。集合住宅などの場合は同水準で一戸当たり170万円なので、すごい金額が出ます。ただ集合住宅の場合は、一棟の内一番性能の悪い一戸が満たしている水準の助成金が戸数分出ます」。ここからの話がもっとすごいと前田氏は言います。
「国の助成金との併給ができます。すると水準3の場合、最大380万円の補助金が受け取れます。併給可能なのは、『次世代住宅ポイント制度』『地域型住宅グリーン化事業』『グリーン住宅ポイント制度』『こどもみらい住宅支援事業』で、ZEHの助成金とは併給不可となります」。さらに、太陽光発電・蓄電池への助成金もあるそうです。「太陽光発電説設備を設置すると、対象機器によって金額が異なりますが、3.6kW超~50kW未満の機器でkW当たり10万円の助成金があります。蓄電池は、東京都では太陽光発電の2倍の容量を設置すると効率が良いとされていますので、仮に8kW時の蓄電池を付けると80万円出ます。4kWの太陽光は40万円出ますので、合わせると120万円になります。その他、オール電化の太陽光発電は、助成金額が少し上がるというものもあります。先ほど話した国の補助金との併給が最大380万円でしたので、この120万円を合わせると、なんと500万円の補助金が出ることになります」。
さらに、不動産取得税の減免措置もあるといいます。「減免措置は2つあり、一つは太陽光発電システムを設置すると、5割減免。二つ目は水準2または3の基準を満たしている住宅を建てると、5割減免。両方該当する場合は、全額免除になります」。東京ゼロエミ住宅は、本気で良い住宅を建ててほしいという意気込みが感じるのでサポートしていきたいと前田氏は語ります。
その後、交付申請の概要として、手続きの順序や交付申請に必要な書類、実績報告書兼交付請求書など、わかりやすい説明がありました。一般のお客様に説明する場合のリーフレットの紹介もありました。
水準3を達成するための実例紹介では、「東京都は寒さを基準として、暖かい6地域と寒い5地域に分かれます。暖かい6地域での最低限の設備仕様ですが、暖房・冷房は壁掛けエアコンの高性能な区分のものを設置します。これは水準3を達成するための必須条件だと思います。換気は第三種壁付け(比消費電力0.08以下)とし、消費電力は先ほど説明したBEIを大きく左右しますので、消費電力が小さい換気がおすすめです。給湯もインパクトがあり、エコキュート(JIS効率3.6以上)もしくはガスであればハイブリット給湯器を設置します。この仕様を守らなければ、水準3はまず無理だと思われます。
その他、足切りラインのものは必ず採用しなければいけません。節湯水栓、高断熱浴槽、照明LED、調光&人感です。これらは完了検査時に設置されていることが条件なので、現在他の住宅で使用中の設備を設置したい場合などは難しい問題が生じる場合もあります」。断熱と開口部の仕様や検討結果は、実例の2階建て3階建ての数値で説明がありました。
最後に補助金申請サポートの紹介と、サポートした小規模業者の推移を2022年4月~6月と7月~9月のグラフで比較した説明がありました。
「7月~9月になると全体的にお客様が増え、さらに特徴的なのはUA値の等級6が10月からできるという情報が入ったため、等級6をクリアする住宅にしたいという相談が増えました。水準3を取りたいお客様も少しずつ増えてきています。当社は、微妙に水準が足りない場合はアドバイスしてクリアになるようサポートします。資材もどんどん高騰していますので、水準を上げて少しでもお客様に補助金をお届けできたら良いと思っています」と、前田氏は今後の意気込みを語りました。