令和4年9月6日 「JASの内容及び改正のポイント等」について
独立行政法人 農林水産消費安全技術センター(FAMIC) 本部 認定センター 登録審査課長 渡邉 明 氏

資材・流通委員会(澤田知世委員長)は、令和4年度 第5回の「住まいのトレンドセミナー」を9月6日にZoomセミナーとして開催し、農林水産消費安全技術センターの渡邉 明・登録審査課長が「JASの内容及び改正のポイント等について」をテーマに講演しました。
渡邉・農林水産消費安全技術センター登録審査課長が「JASの内容及び改正のポイント等について」をzoomで講演
まず渡邉課長は改めてJAS制度の全体の概要を説明しました。 JASは食品・農林水産分野において農林水産大臣が定める国家規格で、伝統的には、国内市場に出回る食品・農林水産品の品質や仕様を一定の範囲・水準にそろえるための基準です。 従来JASの対象はモノ(農林水産物や食品)の品質に限定されていましたが、平成29年の改正により対象を拡大。JASは、①産品の品質・仕様だけでなく、②産品の生産・流通プロセス、③事業者による産品の取扱方法、④事業者の経営管理の方法、⑤産品の試験方法、⑥これらに関する用語など、多様な規格が制定可能になりました。 また、改正により事業者・団体、試験研究機関、産地・地域などからの提案を受けて規格化する枠組みを整備。規格制定に向けて農林水産省及びFAMIC(独立行政法人 農林水産消費安全技術センター)など官民連携の体制でサポートを行うことになっています。 その結果、令和4年3月現在で、事業者団体等からの提案により、新たに24種類のJAS規格が制定されたと渡邉課長。このほかにも多数の提案に基づき、強みのアピールにつながるようなJASの制定等に向け検討作業を行っていると話しました。
続いて、渡邉課長は林産物JASについて説明を行いました。現在林産物JASには現在12の規格がありますが、このうち以下の6規格について詳しく解説しました。
①製材JAS
原木等を切削加工して寸法を調整した木材のこと。種類が以下の5つに分けられる。
・造作用製材 敷居、鴨居、壁等の建築物の造作に使用。木材の欠点(節、割れ、丸み等)により、無節、上小節、小節、並に分類。
・構造用製材 目視等級区分 節や割れなど、材面の目視にて格付。(甲種Ⅰ、甲種Ⅱ、乙種)×(1~3級)に分類。機械等級区分 曲げヤング係数に合わせて格付(E50、E70、E90、E110、E130、E150)の6種類。
・下地用製材 建築物の屋根、床、壁等の下地。野地板、胴縁など強度はさほど問われない部材。木材の欠点(節、割れ、曲がり等)の基準により1、2級に分類。
・広葉樹製材 木材の欠点(節、割れ、曲がり等)の基準により、特等~2等に分類。
②枠組壁工法構造用製材及び枠組壁工法構造用たて継ぎ材JAS
枠組壁工法建築物の構造耐力上主要な部分に使用する材面に調整を施した針葉樹の木材で、いわゆるツーバイ材。枠組壁工法構造用製材の中には、甲種枠組材、乙種枠組材、MSR枠組材が含まれる。 乾燥材のツーバイフォーが38×89㎜というように、規定寸法がある。寸法、等級により、節または穴の径も規定されている。
③合板JAS
ロータリーレース、またはスライサーにより切削した単板(心板にあっては小角材を含む)3枚以上をその繊維方向を互いにほぼ直角にして接着したもの。以下の6つの種類がある。
・普通合板 従来からベニヤ板といわれていた合板で、一般的な用途に広く使われる合板。ラワン、シナなど広葉樹が主な原木で、樹種名を付けてラワン合板、シナ合板などと呼ばれる。
・天然木化粧合板 普通合板の表面に、美観を目的として天然銘木(チーク、ウォールナット、スギ、スプルース等)の薄い化粧単板を貼り、住宅の内装用や家具用に用いられる。
・特殊加工化粧合板 普通合板の表面に美観と耐久性を目的として天然銘木以外のものを貼ったり、木目模様などを印刷加工した表面加工の合板で、オーバーレイ合板、プリント合板、塗装合板などがある。
・コンクリート型枠用合板 表面加工なし コンクリート打込時にその堰板として使用される合板で、ラワンや針葉樹のものがある。一定の強度を備えた合板で、建築・土木用の型枠として多用される。 表面加工あり 通常のコンクリート型枠用合板の表面に、塗装・オーバーレイなどの加工をしたもの。打放し仕上げに良好な結果が得られる。
・構造用合板 1級 木質構造建築物の構造耐力上重要な部分に使用される合板である。長辺に実加工を施したものもある。 2級 1級と同様であり、主として床・屋根・壁下地に多用される。
・化粧ばり構造用合板 構造用合板の表面または裏面に化粧単板を貼ったもの。用途は構造用合板と同じ。「現し」使用する。
④集成材JAS
ひき板、小角材等をその繊維方向を互いに平行にして、厚さ、幅及び長さの方向に集成接着をした材。以下の4つの種類がある。
・造作用集成材 主として構造物等の内部造作に用いられるものをいう。棚板、階段板、家具等。
・化粧ばり造作用集成材 美観を目的とし、造作用集成材に化粧単板等を貼付したもの。敷居、鴨居、上り框等。
・構造用集成材 強度区分を行ったひき板等を積層し、主として構造物の耐力部材として用いられるもの(化粧ばり構造用集成柱を除く)。柱、梁等。接着性能により、使用環境が定められている。
・化粧ばり構造用集成材 強度区分を行ったひき板等を積層し、主として構造物の耐力部材として用いられるもので、表面に美観を目的とした化粧単板を貼付したもの。和室の柱等。
⑤直交集成板JAS
ひき板または小角材(これらをその繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ方向に接合接着して調整したものを含む)をその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ又は接着したものを、主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして積層接着し3層以上の構造を持たせた木材。いわゆるCLT。ラミナは目視等級区分と機械等級区分があり、ラミナの幅は製材の際にでる小角材も使用できるように規格化されている。
⑥フローリングJAS
板その他の木質系材料からなる床板であって、表面加工その他所要の加工を施したもの及び木質系以外の材料からなる床板であって、表面加工の材料及び基材に用いられた木質系材料の厚さが、表面加工の材料及び基材の合計厚さの50%以上であり、かつ、基材を構成する材料に木質系の材料を用いたもの。ひき板を基材とし、厚さ方向の構成層が1の単層フローリングと、それ以外のフローリングで根太張用または直張用として使用される複合フローリングの2種がある。
最後に、渡邉課長は製材JASの改正について解説しました。 前回の改正は2019年8月15日に公示されたもので、改正の概要は以下の通りとなっています。
1.JAS規格の様式の修正JAS法改正に伴い、JAS規格の様式を統一するため、JISZ8301に基づき様式を修正した。
2.寸法の許容差の緩和【機械等級区分構造用製材】製品寸法がそのまま現場寸法の場合があり、プラスでは収まらない場合があるため、仕上げ材の材長においては-1.0㎜を認めることとした。
3.曲がりの基準の厳格化【機械等級区分構造用製材】品質向上を図るため目視等級区分構造用製材に合わせて、仕上げ材においては曲がりの基準を「0.2%以下」とした。
4.機械等級区分構造用製材の対象から未乾燥材を削除【機械等級区分構造用製材】機械等級区分構造用製材は実態として乾燥材のみであること、また、未乾燥材では強度が明確にならないことから、人工乾燥処理を施したもののみを対象とすることにした。
5.割れの基準の整理【広葉樹製材】木口割れの基準に含まれていた材面の割れについては、実態に合わせて干割れで扱うこととした。
また、渡邉課長は法定見直しの期限が2024年8月になっていると説明。これはJAS法では前回改正から5年を経過する日までに見直しを行うことが規定されているためだといいます。 今回見直しを行う製材JASは、FAMICが事務局となり、製造団体、実需者団体、学識経験者、行政関係者で構成された委員により、第1回の検討会が7月28日に開催されました。 この第1回検討会は、事前に実施した関係者へのアンケート要望の確認が主な内容でしたが、今後は要望の確認及び検討を重ね、最終的に検討会で了承された改正原案を作成し、農林水産大臣へ改正原案を付した申出書による申出を行う予定になっているということです。 渡邉課長は「今後はJAS規格を増やしていくつもり。法改正により民間でプロジェクトチームを構成し新たな規格を申出することも可能となっているので、ぜひみなさんも提案してほしい」と話し講演を終えました。