令和4年2月7日 「木造軸組工法住宅における国産材利用の実態調査報告会」
東洋大学 理工学部 建築学科 教授 浦江 真人 氏

資材・流通委員会(澤田知世委員長)は、令和3年度 第6回の「住まいのトレンドセミナー」を2月7日にZoomセミナーとして開催し、浦江 真人 氏(東洋大学理工学部 建築学科 教授)が「「木造軸組工法住宅における国産材利用の実態調査報告会」を実施しました。」
浦江・東洋大学理工学部教授が「木造軸組工法住宅における国産材利用の実態調査報告会」を実施
本調査は、日本木造住宅産業協会が、わが国の木造軸組工法住宅における国産材や外国産材の使用実態を把握することを目的として、協会の1種正会員(木造住宅を生産供給する法人)を対象にアンケートをおこなっているものです。 浦江教授は、まず最初に今回で第6回目となる令和2年度の調査のあらましを説明。アンケートは住宅供給会社473社に配布し、そのうち回答数が93(社)、有効回答数が88(社)で、有効回答率は18.6%だったと話しました。 この有効回答率は過去と比べ低いものですが、浦江教授はその原因として、コロナ禍、あるいはウッドショックという状況が影響していると考えられると述べました。 なお、調査はプレカット会社に対しても行われましたが、今回の解説は住宅供給会社についてが主となっています。
続いて、浦江教授は調査結果の報告をおこないました。 まず、住宅供給会社が手掛けた住宅の概要を解説。今回の調査の対象となった木造軸組工法住宅は48,921戸で、これは国交省の「住宅着工統計」における木造軸組工法住宅戸数365,464戸の13.4%にあたるとしました。 そして、施工形態について、自社施工による住宅が戸数比率で87.2%となり増加傾向にあること、1住宅あたりの平均延べ床面積が単純平均で115.93㎡で、年々床面積が小さくなっていること、またそれに伴い、メーターモジュールではなく小規模住宅で使い勝手がいい尺モジュールを使うケースが増えたといったアンケート結果についても説明しました。
次に、浦江教授は各部位別に木材使用状況を説明。管柱、通し柱、土台、大引、母屋・棟木、横架材など14の部材それぞれについて、1住宅あたりの平均木材使用量や樹種別使用割合などの解説をおこない、以下のようにまとめました。
・樹種別使用割合の合計(管柱から羽柄材まで)
使用木材について、菅柱から羽柄材の合計では国産材の使用割合は41.8%。平成20年度が31.9%、平成23年度が28.7%、平成26年度が26.0%と徐々に減少していたが、平成29年度は37.6%となり11.6ポイント増加、今回はさらに4.2ポイント増加し、過去最高の割合となった。この結果に面材も含めると国産材の使用割合が48.5%となり、これも過去最高である。 樹種別に見ると、製材ではスギが14.9%、ヒノキが4.4%。集成材ではスギが9.9%、ヒノキが2.7%となっている。 また、製材と集成材の比率は、製材が29.7%で前回と比べ2.3%減少。集成材も61.8%で2.1ポイント減少した。一方、その他(含LVL)が8.5%と前回のほぼ2倍に増加。これは、間柱においてLVLを含むその他の集成材の使用率が39.8%と、前回調査の10倍にまで増加したことが要因である。
・部位別使用量
国産材の使用割合を部位別で見ると、床・外壁・屋根を合わせた面材が74.1%。土台が74.6%、大引が72.3%、羽柄材(間柱)が71.9%といずれも70%を超えている。一方、国産材の比率が低い部位は、9.2%の横架材、17.6%の筋かいである。全体の国産材使用率を上げるなら、こうした部位での使用率を上げる必要がある。
さらに、浦江教授は住宅供給会社の木材の調達や、国産材の使用、ウッドショック、環境対策といった多岐にわたるアンケート結果について解説しました。そのいくつかを以下に抜粋します。
・年間の木材購入量
各社の木材購入量を見ると、国産材が占める割合は25.6%と、前回から11.3ポイント減少。外国産材が74.4%となっており、前述した樹種別使用割合の合計(菅柱から羽柄材まで)の国産材比率41.8%という数字とは大きく乖離している。 購入した材のJAS材と非JAS材の比率を見ると、国産材、非国産材を合わせた非JAS材の割合が55.7%と半分以上を占めた。平成29年度の調査では30.7%であり、非JAS材の比率が25ポイント上昇したことになる。とくに集成材においては、JAS材の比率が前回の95.7%から60.1%へと大幅に減少している。
・木材の購入先
構造材の購入先として最も多いのはプレカット会社で、会社数の比率で79.5%。過去5回の調査ともプレカット会社からの購入が7割を超えていたが、今回また増加した。プレカット会社の次に多いのが商社、メーカー(製材会社等)で、メーカーの割合は年々減少傾向にある。
・同一品目で購入先が複数ある場合の選択理由(複数回答)
安定供給、価格の維持、品質の確保、地域分け、物流コスト、その他という回答のうち、最も多かったのは安定供給で、78.7%がこれを理由としている。次に多い理由が価格の維持(63.9%)だが、品質の確保や地域分、物流コストといった理由も増加傾向にある。
・国産材を使用する理由(複数回答)
平成29年度は3位だった「品質が良い」という理由が33社で1位となった。1位だった「イメージが良い(地球にやさしい・・・など)」という理由は、29社で3位。2位は前回と同じく「地産地消の推進」で、30社がこれを理由に挙げた。また、「国産材を使用すると補助金が出る」という理由は13社で前回と同じく5位だった。
最後に浦江教授は、プレカット会社のアンケート結果についても解説し、住宅供給会社との比較・考察も行いました。そして、今後のためにこの報告を役立ててほしいと話し、有意義な報告を終えました。