令和3年4月6日 「木造住宅・建築物の振興・普及」について」
国土交通省住宅局住宅生産課木造住宅振興室長 遠山 明 氏

資材・流通委員会(澤田知世委員長)は、令和3年度 第1回の「住まいのトレンドセミナー」を4月6日にzoomセミナーとして開催し、国土交通省の遠山明・住宅局住宅生産課木造住宅振興室長が「木造住宅・建築物の振興・普及」について講演しました。遠山室長は新たに見直された住生活基本計画(全国計画)の概要と令和3年度住宅生産課の予算の2項目について解説を行いました。
国土交通省の遠山木造住宅振興室長が、見直しが行われた住生活基本計画などを解説
今回、遠山室長は新たな住生活基本計画の概要と、令和3年度の住宅生産課の予算について解説を行いました。
最初の議題は「住生活基本計画(全国計画)」について。住生活基本計画は、平成18年に施行された住生活基本法に基づき、国民の住生活の安定の確保及び向上の促進に関する基本的な施策などを定めたものですが、5年ごとに見直しが図られており、この3月に4代目となる計画ができあがりました。 遠山室長は、まず、住生活をめぐる現状と課題として、次の3つを挙げました。
第一に、コロナ渦を契機とし、新しいライフスタイルや多様な住まい方への関心が高まっていることや、遠隔・非接触の顧客対応やデジタル化等、DXが急速に進展していること。さらに、自然災害が頻発しているという課題もある。
第二に、カーボンニュートラル。昨年10月に菅総理が2050年までに脱炭素社会を実現するという宣言を出したが、これを踏まえた対策が急務となっている。
そして第三に、以前から課題となっている住宅ストックの流通。これまでも住宅ストックの性能向上を目指してたが、既存住宅の流通は横ばいで推移しており、その対応が引き続き必要となっている。
新計画は、こうした現状や課題に対応するために、「社会環境の変化の視点」「居住者・コミュニティの視点」「住宅ストック・産業の視点」という3つの視点から目標を設定し、施策を総合的に推進するとしています。 遠山室長は、計画にある施策のうち、木造住宅に関連するものを抜粋して説明しました。主なものは以下の通りです。
- 「新たな日常」に対応し、住宅に関する契約・取引プロセスのDXを推進。対面が前提だった建築士法に基づく重要事項説明をオンラインで可能とした。また、今後は重要事項説明書を郵送ではなく、建築主の承諾を得た上でメールによる送信等により交付できるようにし、すべてオンラインで完結できるようにする.
- 安全な住宅・住宅地の形成のため、関係部局の連携を強化し、地域防災計画、立地適正化計画等を踏まえ、豪雨災害等の危険性の高いエリアでの住宅立地を抑制していく。
- 住宅の年収倍率の上昇等を踏まえ、若年世帯・子育て世帯の都心居住ニーズもかなえる住宅取得を推進する。
- 高齢者等が安心して暮らせるよう、バリアフリー性能やヒートショック対策等の観点を踏まえた良好な温熱環境を備えた住宅の整備、リフォームを促進。
- ライフスタイルに合わせた柔軟な住替えを可能とするため、既存住宅の情報が購入者にわかりやすく掲示される仕組みの改善(安心R住宅、長期優良住宅)を行い、購入物件の安心感を高める。
- 既存住宅流通活性化のため、新築やリフォームだけでなく、既存住宅の売買に際しても瑕疵保険の充実や紛争処理体制の拡充等を推進し、購入後の安心感を高める。
- 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、長寿命でライフサイクルCO2排出量が少ない長期優良住宅ストックやZEHストックを拡充。
- ライフサイクルでCO2排出量をマイナスにするLCCM住宅の評価と普及を推進。
- 住宅・自動車におけるエネルギーの共有・融通を図るV2H(電気自動車から住宅に電力を供給するシステム)の普及を推進。
遠山室長は、今後この計画に基づき住宅政策を進めていくとしました。 そして、次にふたつめの議題である「令和3年度住宅生産課の予算」について解説を行いました。予算が充てられる主な事業は以下になります。
地域住宅関連業者でグループを組み共通ルールを設定(例:県産材を60%以上使用など)。そのうえで長期優良住宅を
供給する場合に、1戸あたり限度額110万円、1次エネルギー消費量が省エネ基準から20%削減されていれば、さらに限
度額を30万円引き上げる等、対象となるものに補助を行う。
既存住宅の長寿命化や省エネ化等に資する性能向上リフォーム等を行う場合に1戸あたり原則100万円を限度とし補助
を行う。令和3年度の拡充事項として防災性・レジリエンス性向上改修も対象に加えられ、瓦屋根の台風対策、自動車
から電源供給が行えるようにするVtoH、蓄電池を設ける場合などに対しても補助が出ることになった。
建築士や工務店、金融機関など、関係主体が連携した協議会をつくり、良質な住宅ストックが適正に評価されるよう
に、住宅ストックの維持向上・評価・流通・金融等の仕組みを開発・普及する取組に対し補助を行う。開発に係る費用
については上限2000万円、体制整備・周知に係る費用については上限1000万円。また、実際に仕組みに則り工事した
場合、性能維持・向上に係る費用として上限100万円/戸の補助を行う。
高い省エネ性能を有する住宅を取得する者等に対し、商品や追加工事と交換できるポイントを発行することにより、グ
リーン社会を実現する。なお、このポイント制度の受付は、竣工前の物件については3/29よりすでに開始済み。竣工し
た物件については、GW明けの開始を想定している。
- 地域型住宅グリーン化事業
地域住宅関連業者でグループを組み共通ルールを設定(例:県産材を60%以上使用など)。そのうえで長期優良住宅を供給する場合に、1戸あたり限度額110万円、1次エネルギー消費量が省エネ基準から20%削減されていれば、さらに限度額を30万円引き上げる等、対象となるものに補助を行う。 - 長期優良住宅化リフォーム推進事業
既存住宅の長寿命化や省エネ化等に資する性能向上リフォーム等を行う場合に1戸あたり原則100万円を限度とし補助を行う。令和3年度の拡充事項として防災性・レジリエンス性向上改修も対象に加えられ、瓦屋根の台風対策、自動車から電源供給が行えるようにするVtoH、蓄電池を設ける場合などに対しても補助が出ることになった。 - 住宅ストック維持・向上促進事業
建築士や工務店、金融機関など、関係主体が連携した協議会をつくり、良質な住宅ストックが適正に評価されるように、住宅ストックの維持向上・評価・流通・金融等の仕組みを開発・普及する取組に対し補助を行う。開発に係る費用については上限2000万円、体制整備・周知に係る費用については上限1000万円。また、実際に仕組みに則り工事した場合、性能維持・向上に係る費用として上限100万円/戸の補助を行う。 - グリーン住宅ポイント制度
高い省エネ性能を有する住宅を取得する者等に対し、商品や追加工事と交換できるポイントを発行することにより、グリーン社会を実現する。なお、このポイント制度の受付は、竣工前の物件については3/29よりすでに開始済み。竣工した物件については、GW明けの開始を想定している。
最後に、遠山室長は、新型コロナで落ち込んだ需要を加味し、住宅ローン減税、住まい給付金、贈与税の非課税措置等、昨年度に措置されたもののうち、いくつかは令和3年度も期間を延長して適用すると説明。「施策の積極的な活用を期待しています」とし、講演を終えました。