令和2年7月8日 「木造住宅・建築物の振興施策」について 国交省木造住宅振興室長 遠山 明 氏

資材・流通委員会(澤田知世委員長)は、令和2年度第1回の「住まいのトレンドセミナー」を7月8日に開催し、国土交通省の遠山明・住宅局住宅生産課木造住宅振興室長が「木造住宅・建築物の振興施策」について講演しました。同委員会の委員を中心に約20人が出席し、遠山室長は①木造住宅の振興②木造建築物の振興③令和2年度予算及び新型コロナウイルス感染症への対応――の3項目について解説しました。
遠山・国交省木造住宅振興室長が木造施策や新型コロナウイルス対策など解説
遠山室長は初めに木造住宅供給の現状を説明し、「国民の4分の3が木造住宅を指向しており、木造住宅の新設着工戸数も年間50万戸前後と非木造に比べ安定的に推移している。木造戸建て住宅の約5割は年間受注戸数50戸未満の大工・工務店が担い、その意味で中小工務店の役割は大きい」と説明しました。その一方で「大工就業者は減少を続け、平成27年には約35万人と最近20年間で半減している。年齢層をみると30歳未満が減少して60歳以上が4割近くを占めるなど高齢化も進展しており、担い手である大工就業者の不足が深刻になる」と強調。
このような現状から、国土交通省では令和2年度予算で5億円を投下し、担い手の確保・育成事業や都市木造建築物設計支援事業などを通じて生産体制を整備しています。担い手確保・育成事業では、①団体主導型②地域連携型で技能者育成の支援を行うことにしており、木住協も団体主導型の団体に認定され、今秋にも若手技能者の育成講習を実施することになっています。
技能者不足を補うことため特定技能外国人の受け入れが注目されていますが、遠山室長は「建築大工や鳶、建築板金などの7職種が新たに在留資格制度に基づいて受け入れが可能になるよう、今年2月に閣議決定された」と説明、一定の技能を有したと認められる外国人技能者の受け入れに道を開いています。
木造建築物の振興では、建築基準法の一部改正や防火規制など木造関係規定の合理化を図っており、遠山室長は「サスティナブル建築物等先導事業(木造先導型)によって11階建て木造研修施設など、全国に特徴ある木造建築物が建設され、今年度も引き続いて支援したい」と述べました。また、非住宅・中大規模分野の木造建築の普及には施主や設計者の抵抗感がハードルになっていると指摘し、「普及促進検討委員会での検討を基にデータや事例、参考情報などの情報発信を積極化してハードルを下げたい」と述べました。
新型コロナウイルス感染症への対応では、中小工務店などを対象に5月下旬に実施した影響調査を紹介。それによると、「売上金額が20%以上減少した」と回答した中小工務店が約4割を占め、政府系金融機関などから資金繰り支援を活用した事業者も約5割を占めた。雇用調整助成金についても約1割が活用し、約3割が「活用に向けて検討している」など、厳しい事業環境となっています。
国は住宅需要者を支援する形で住宅供給者の事業環境の改善を図り、さまざまな支援策を打ち出しています。
主なものは、
- 住宅ローン減税の控除期間13年間の特例措置。一定要件を満たしていることを条件に入居期限を「令和2年12月31日まで」から「令和3年12月31日まで」に延期。
- 既存住宅を取得した際の住宅ローン減税の入居期限要件の緩和。既存住宅の取得後に行った増改築工事が新型コロナウイルスの影響で遅れ、入居が遅れた場合でも一定期日までに契約を行ったなどの要件を満たしていれば、従来の「既存住宅取得の日から6ヵ月以内に入居」から「増改築等完了の日から6ヵ月以内」に緩和。
- 次世代住宅ポイント制度。新型コロナウイルス感染症の影響で、今年3月末までに契約できなかった需要者の契約期間とポイント発行申請期間を8月末まで延期。
- 完了検査等の円滑な実施。建築基準法の完了検査で一部の設備等がないことをもって、「住宅」として完了していないといった扱いをすることのないよう、柔軟に実施。住宅性能表示制度の竣工時検査も、建築基準法の取り扱いと同様に個別の申請者からの相談に応じ、速やかな実施を通知。住宅金融支援機構の竣工現場検査について、顧客の意向を確認した上で一部の設備等が設置されていない住宅に対する適合証明書の交付を認める。
- ITを活用した建築士法に基づく重要事項説明。当面の暫定的な措置としてテレビ会議等のITを活用した重要事項説明を建築士法の規定に基づく説明として扱う。
――などとなっています。
遠山室長は最後に「新型コロナウイルス感染症で事業環境が厳しさを増しているが、今後も木造住宅供給者を積極的に支援していきたい」と強調しました。