「人づくり」を基軸に
多面的な事業を展開。
シュウハウス工業株式会社(高知県)
代表取締役岡﨑 秀悟 氏
高知市の南東部・大津に本拠を構えるシュウハウス工業㈱を訪ねると、汗をかきながら掃除をしていた若い社員たちがいっせいに出迎えてくれる。その笑顔からは、単にマナー教育による接遇というレベルを超え、心から歓待する気持ちが伝わってくる。同社は高知県内で年間30棟近くを手がける木造専門の注文住宅メーカーだ。高いクオリティとモダンなデザイン性の住宅はお客様から厚い評価を得ており、社歴が浅いにもかかわらずすでに「シュウハウス」はハイグレードなブランドとして認知されている。また、新築・リフォームなどの住宅事業の枠を超え、カフェ、インテリア・家具販売、セミナーや勉強会の開催など、ライフスタイル全般に関わる事業を積極的に展開しており、こうした点でも大きな注目を集めている。「住」を中心に多面的なビジネスを推進するのが、同社の創業者である岡﨑秀悟氏。「数字を追うのではなく、人づくりに投資し続けてきた」と語る岡崎社長に、シュウハウス工業㈱の家づくりや経営ビジョンなどについて話を聞いた。
「シュウハウス」というブランドを確立
デザイン性が人気のシュウハウス。高知県では高いブランド力を誇る。
「創業時の社員は妻だけです。蓄えもありませんでしたから、マイナスからのスタートです。新築を手掛けたかったのですが、信用がなかったので最初はリフォームばかりでした。創業からしばらくは厳しい状況が続きましたね。経営が安定してきたのは、ここ5年ほどです。」
創業当時をこうふり返るのは、シュウハウス工業㈱の代表取締役社長・岡﨑秀悟氏。高知市大津で生まれ育った岡崎社長は、高校卒業後は大津を離れ大阪で就職。飲食店や着物販売会社などに勤務した後、23歳で郷里・大津に戻った。その後、地元の工務店に就職して建築業のイロハを学び、平成15年に33歳でシュウハウス工業㈱を立ち上げる。「しがらみの多い建築業界に納得できないことが多かった」のが独立の理由だという。着物販売会社時代に培った接客マナーや厳格な商習慣に慣れていた岡崎社長にとって、建築業界のルーズさが肌に合わなかったようだ。
創業後10年ほどは厳しい日々が続いたが、「一棟懸命」を基本理念に、お客様のニーズにきめ細かく対応した高いデザイン性を備えた家づくりは口コミで評判が広がり、紹介が紹介を呼んで「シュウハウス」のブランドが確立。ここ7年ほどは30棟ほどの新築を請け負うなど、着実な成長を続けている。
同社では高気密・高断熱を実現する「スーパーウォール工法住宅」を推奨し、親から子、子から孫へ住まいを継ぐ家づくりを目指している。また、新築に関しては全棟「長期優良住宅」の認定を受けた家づくりを行っている。
「ただ、これだけでは差別化ポイントにはなりません。そこで、私たちが力を入れているのは、デザイン性と提案力です。例えば、南向きのリビングでもカーテンを閉めなくてもいい間取りを提案する。多くの家の南向きの部屋は外から見られてしまうため、カーテンが一日中閉められています。私たちはそうならない、常識にとらわれない提案を行っていきたいと思っています。」
「一棟懸命」が同社の家づくりの基本理念。無垢の木材を使った家も多い。
「出会い」が様々なビジネスを生む
岡崎社長は17年間の会社経営をふり返って、「多くの出会いに恵まれてきた」と何度も強調する。設立2年目に出会い、それ以来、岡崎社長が師匠と呼ぶ経営者の方からは多くの教えを請い、毎月勉強会を開催して経営の基本的な考え方について学んできた。また、その師匠を通してコンサルティング会社とも接点を持つことができ、経営のノウハウを学び、実践的な指導を受けた。こうして様々な人と出会い、影響を受け、「ともに一緒になにかをやりたい」という思いを抱くことで、それが新たなビジネスとして花開いてきたのである。
例えば、同社が提案する新たなライフスタイルとも言える「One’s Style(ワンズスタイル)」。大きく「食」「生活」「空間」「心」の4つの部門に分けられており、「食」はカフェの運営(cafe le lien)、「生活」はリフォーム業、「空間」はインテリア・家具販売(インテリアショップ・KAGULAS)、「心」は人として豊かな心を育むセミナーや勉強会、ワークショップなどの事業を展開している。 家具販売に関しては、住宅設計のファーストプランの段階からダイニングテーブル、ベッド、ソファなどを織り込んで提案、シュウハウスブランドならではの付加価値となっている。また、2年前にはカフェの隣に「One’s Gallery(ワンズギャラリー)」をオープンし、セミナールームや各種ワークショップの教室、イベントスペースとして活用している。さらに近年は、アウトドアの総合メーカーである㈱スノーピークの社長との出会いから、アウトドア製品を使った働き方改革を提案するOSO/TO(Outdoor Small Office/Third Office)事業もスタートさせている。
「One’s Gallery」。セミナーや各種ワークショップなど、多目的スペースとして活用。
高知工科大学で開催された「459LABO勉強会」。
人間性を高めることが目的。
そして、こうした出会いの中で、岡﨑社長が最も大きな影響を受け、経営の根幹に据えたのが、人づくりである。
「師匠から『数字を追うのではなく、人に投資しろ』との教えを受けて以来、私は『会社は人づくりの道場』『人づくりは自分づくり』『道徳と経済は一体である』という思いを実践してきました。大切なのは、人間性を高めること。プライベートでも周りから慕われるような人間になって、はじめて仕事でも人がついてくるものです。普段の生活から自分を高めていくこと。そうした人づくりが、私の経営の核となっています。」
こうした環境の中から人が育ってきたからこそ、売上げも上がってきたのだという。まさに、人材こそが同社の強み。岡﨑社長も「17年積み上げてきた人づくりに関しては、絶対に他社は追いつけない」と胸を張る。
人づくりへの取り組み
岡﨑社長に会社設立から現在に至るまでで最も辛かったことを訪ねてみると、次のような答えが返ってきた。 「会社の売上げが数億円を超え、事業のレベルが向上した段階で、昔からいた社員たちがそれについていけず会社を退職していきました。これは本当にショックで、2日間まったく何も話すことができませんでした」
こうした辛い経験を克服しながら、岡﨑社長は今も社員とのコミュニケーションを何よりも大切にしている。例えば、創業時から社員が書いている日報。日報と名付けてはいるものの、書く内容はその日の出来事の印象、嬉しかったこと、悲しかったことなどだ。岡﨑社長は毎日それに目を通して、コメントをつけて返している。社員が増えた今はその作業に2時間ほど要するというが、ずっと続けている。また、人としての素養を磨く研修の開催などにも積極的だ。例えば、毎月1回実施している丸1日をかけた研修。高知県で地方創生を目指す研修機関の外部講習に参加するなど、社員が人間性を養うための多様な機会を設けている。さらに、同社の人づくりは採用時から始まっている。今年度は30数名のエントリーの中から4名を採用した。大学院を修了した優秀な学生がいたが、『当社に入りたい気持ちは何%ですか』と尋ねたところ、『90%です』という解答だったため採用を見送ったという。この質問に対して『100以上です』と答えた学生だけを採用したのだ。
「当社の考えや仕事への取り組み姿勢を理解し、本当に共感してくれる人に入社してほしいんです。その中で和を大切に、人間関係を大切にしながら、ともに仲間としてずっと働き続けてほしいと願っています。」
次の世代へバトンを渡す
最後に岡﨑社長に今後の展開や将来のビジョンについて聞いてみた。「直近の話では、来年、愛媛県の四国中央市に新たに店舗を展開します。これもある出会いから始まったプロジェクトです。たまたまお知り合いになった方なのですが、事業承継に悩んでおられたことから、当社がお手伝いすることになりました。」
その会社の社名は残しながら、シュウハウスのグループ会社になる予定だという。同社にとっては新たな拠点が増えることになる。また、岡﨑社長は現在展開中の様々なプロジェクトなども含め、事業の拡大にも意欲を見せる。それはすべて、これから成長していく社員たちのためだ。社員たちが定年退職まで勤め、役職をステップアップしながら成長していける、そんな組織・会社づくりを目指しているのである。
「そのために持ち株会社をつくって、マネジメントの仕事ができるようにしてあげたいと思っています。また、各事業会社の社長にもなってほしいんです。実際、社長になりたいと手を上げている社員が何人かいます。私の役割は今ある事業を彼らにうまく継承すること。私の持っているバトンをきれいに磨いて次の世代を渡すことだと思っています。」
最後まで人づくりを全うしようとする岡﨑社長。社長個人の夢はと聞くと、「55歳になったら妻と二人で、あちこち旅行に行きたいですね」と笑う。人としての魅力があふれる経営者。そして、その経営者の元に集い、自分を高め続けようと努力する社員たち。まさに、人こそがシュウハウスの誇るべき経営資源だ。
同業者を対象とした勉強会なども開催する。
10月25日にオープンした新モデルハウス地鎮祭の様子。
ピカイチ社員
営業部長/新築岩川 洋平 氏
入社したきっかけは?
以前は大手のハウスメーカーで11年間ほど、設計・現場監督の仕事に就いていました。そこを退職後、シュウハウスの見学会を訪れたのですが、その家を見て今までとまったく違う家づくりに驚きました。お客様とかなり密なお打ち合わせをしないと、この家は仕上げられないと感じたんです。お客様としっかり寄り添う家づくりがしてみたいと考え、すぐに面接に応募しました。
お仕事で心掛けていることは?
自分の中のルールとして、ご契約から完成・お引き渡しまで、お客様とは1週間に一度は接点をもつようにしています。工事が始まると営業はなかなかご連絡が滞りがちなのですが、必ずお電話をして「不安なところはございませんか」とお聞きしています。お客様が気になってお電話される前に、私からご連絡をとるように心掛けています。
印象に残った出来事は?
いちばんは、「岩川さんにお願いしてよかった」と、お客様から感謝のお言葉をいただくときですね。また、お引き渡し後も、個人的なお付き合いが続くことも多く、飲みの席に呼ばれたりするのも嬉しいですね。辛かったのは、お客様に上手くいい土地をご紹介できず、ご迷惑をおかけしたこと。自分の知識不足が原因でしたので、二度とこうしたことを起こしていけないと肝に銘じました。
今後の目標は?
シュウハウスは地域のために多彩な事業を展開していますが、それは社長の夢でもあります。私も社長とともに、その夢の実現に向かっていきたいですね。また、実現したいのは、しっかり休める環境づくり。建築業は多忙な日々が続くのですが、真剣に家づくりに取り組むのはもちろん、自分の生活を充実させることも大切だと思います。ゆとりある暮らしを通して、お客様へのご提案の幅も広がっていくのではないでしょうか。
シュウハウス工業㈱のこだわりPOINT
常識にとらわれない提案と高いデザイン性で
「シュウハウス」らしい家づくりを。
社長のひとこと
人づくりとは、自分づくり。自分を高めていける社員たちが育てば
数字は後からついてきます。
会社情報
会社概要
社名 | シュウハウス工業 株式会社 |
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代表取締役社長 | 岡﨑 秀悟 |
所在地 | 【新築事業部 3CSルーム】〒781-5103 高知県高知市大津乙1055-1 |
電話 | 088-866-4009 |
会社沿革
2003年 10月 | 高知市大津に「シュウハウス工業 株式会社」創業 |
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2011年 9月 | 大津バイパス沿いに事務所兼ショールームオープン |
2014年 | リフォーム部門「One’s Reform」新設 |
2014年 8月 | 「Cafe le lien」オープン |
2017年 10月 | 大津バイパス沿いにインテリアショップ「ONE’S FURNITURE KAGULAS」オープン |
2018年 5月 | 「Snow Peak Business Solutions, Inc.」と提携し「高知osoto」事業部を新設 同6月に「Snow Peak Camping Office」オープン |
2018年 9月 | 「株式会社 s-creation」設立 |
2020年 | 愛媛県四国中央市に「ONES’ STYLE NISHIKAWA」設立 |
事業内容
新築/リフォーム/不動産業/飲食業/家具・雑貨販売業/損害保険代理業