日本木造住宅産業協会

(一社)日本木造住宅産業協会(略称/木住協)は、木造軸組工法住宅等の普及と健全な発展に寄与することを目的とした法人です。

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「新材料・新工法CLT及びCLT工法について」をテーマに 日本CLT協会の有賀推進部次長を招きトレンド情報セミナー

資材・流通委員会が開催

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資材・流通委員会(長谷川賢司委員長)はこのほど、(一社)日本CLT協会の有賀康治・業務推進部次長を講師として招き、「新材料・新工法CLT及びCLT工法について」をテーマに住まいづくりの最新・トレンド情報セミナーを開催しました。注目されているCLTに関する情報セミナーのためか、同委員会の委員を中心に約40人が出席。有賀講師はCLTのビジネスチャンスやCLT先進国オーストリアの現状、日本の森林資源の可能性、わが国のCLTの現状と課題などについて解説しました。

今年3月と4月にCLTに関する告示が出され、告示前の大臣認定による建設を含めて全国各地でCLTの建築物が竣工しています。有賀講師は、「欧米諸国では10階建ての木造建築物がCLTによって建築されており、わが国でも木材の新たな利用法として注目されています」と語り、注目を集めている理由の一つとして「CLTとCLT工法にビジネスチャンスが潜んでいるから」と述べました。

CLTの普及で21世紀型産業・社会に転換

有賀講師によると、CLT先進国と言われているオーストリアでは1995年からCLTを使用した建築が盛んになっています。オーストリアの森林面積は国土の48%に相当する約4万㎢となっており、木材資源の年間生長量約3000万㎥のうち、約2600万㎥が活用されています。毎年の伐採量は生育量の85%を占めていることになり、関連産業を含めて林業従事者は就業人口の7%にあたる約30万人にも達しています。「伐ったら植えるが社会を変える」ことをメッセージにしており、この結果として木材と木材製品の貿易収支は黒字となり、観光業とともに国際収支に大きく貢献しています。

これに対してわが国の森林資源の年間生長量は約1億㎥とオーストリアを大きく上回っていますが、利用量は約2000万㎥と少ないのが現状。有賀講師は「我が国の木材産業の潜在能力はオーストリアよりも多く、CLTによって森林資源を上手く利用することができれば山の荒廃も少なくなり、山側の経済も潤うはず。森林を循環型社会に変えることで、二酸化炭素の排出量を抑制するだけでなく21世紀型の産業・社会への転換が可能になります」と、オーストリアに遅れること20年の日本の可能性を強調しました。

有賀講師によると、オーストリアでは大規模ショッピングセンターの建設に約8000㎡の屋根下地パネルとしてCLTが使用されており、5階建ての高齢者施設では電気工事や防音・断熱を施した6面体のユニットをCLTで製造、建築現場に搬入して建設しています。ショッピングセンターではCLTの製造と現場での建設にそれぞれ3ヵ月という短工期で終了しており、製造と建設のネットワーク力は参考にすべき点が多いと述べました。

強軸と弱軸やクリアランスなど設計上で注意も必要

CLTは直交集成板とも言われ、挽き板を縦横に交互に貼り合わせた素材。最外層に貼られた挽き板の方向が強軸になる半面、中側の挽き板は弱軸になるという性質を持っており、このため有賀講師は「CLTを2階床に使用する際には強軸をどちら方向に施工するかが設計上のポイントになる」と指摘しました。CLTを床材に使用する際には「たわみ」を抑えるため、上下の最外層を2枚重ねにした5層7プライ(210mm)が中心的な流通部材になっている。

設計上の注意点に触れ、有賀講師は「2方向のバルコニーなどを設計する際には、弱軸は大きくたわむため梁補強が必要になってきます。床パネルのスパンは4mくらいにしておいた方が良い」と語りました。CLTの設計では接合金物を多用する必要があり、アンカーボルトと接合金物のそれぞれの位置を間違えないように注意する必要もある。

また、クリアランスも重要で、有賀講師は「2mmのクリアランスを設けて壁パネルを10枚連ねて設置すると合計で20mmにもなってしまい、上にパネルを重ねられないケースも見られました」と語り、「クリアランスは1mm程度にしておいた方が楽に施工できる」と述べました。

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欠かすことができない構造設計者などの育成

わが国では1955年から約40年間にわたって木造建築は住宅しか建てられなかったことから木構造関係の技術者不足が懸念されており、技術者育成が普及に向けての課題になっています。有賀講師は高知県での森林組合連合会の事務所建築にあたって、県内の設計事務所を対象に6回の勉強会を開催、その後にコンペ方式で建設した事例を紹介し、「CLTをはじめとした木質材料の需要創出には、構造設計者を育てないとならないことを実感しました」と語っています。この森林組合連合会事務所の建設では軸間CLTを採用しましたが、コストも低減できたほか壁量や建物加重も軽量化でき、「構造面だけでなく防火やコスト面でも賢い施工法」と強調しました。

CLTによる構造計算のルート・架構タイプは、①小幅パネル架構②大版パネル架構1③大版パネル架構2――という3タイプに分けられますが、大版パネル架構2では許容応力度計算のルート1ができず、大版パネル架構1、2では壁量を多めにとる必要があり、わが国のCLT建築では小幅パネル架構が中心になるとの見方をしています。

また、告示によってCLTパネルの破壊を防止するため、1階壁脚部は終局耐力時に4㎝以上(10%以上)伸びるボルトが指定となっていることに触れ、「今後の木造建築の設計・施工に、伸びるボルトを取り入れることが重要になる」という認識を示しました。

秋口に設計・施工マニュアル講習会を実施し、本格普及へ

CLT協会では、今年を「CLT元年」と位置付けており、秋口をめどにCLTの設計・施工マニュアル講習会を全国で開催することとしています。既に国会議員による「CLTで地方創生を実現する議員連盟」や全国の自治体による「CLTで地方創生を実現する首長連合」が発足しており、CLT製造工場も全国で5工場が整備されるなど、本格普及に向けての準備が進んでいます。

有賀講師は最後に「自治体の意気込みや製造工場の整備と比べて、現状の需要量はまだまだ少なく、政・学・産・官が一体になってCLTによる木造建築を普及させていきたいと思っています」と語り、普及に向けた取り組みを今後、順次行っていくことを明らかにしました。

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