日本木造住宅産業協会

(一社)日本木造住宅産業協会(略称/木住協)は、木造軸組工法住宅等の普及と健全な発展に寄与することを目的とした法人です。

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住まいの情報

第九回「木造公共建築物の建設が容易に」(ワイエスグループ)

木住協の2種会員などで構成するワイエスグループは、木造公共建築物への対応のほかに、これまで困難性を伴うことが多かった車2台が駐車できるビルトインガレージ付き木造住宅や開放的なオープンスペースのある店舗兼住宅、狭小地での木造住宅の建設などに対応できるトータルシステムを開発、普及に乗り出した。グループ各社が所有する独自工法やノウハウを結集してシステム化したものだ。大臣認定を取得した壁倍率3.9倍のT・Nパネルのほか、6.5メートルまでスパンを飛ばせる門型フレームなどを採用した木造軸組工法による2階建てのワイエスホールディングスの本社社屋(東京都・葛飾区、延べ床面積約240m2)を、同システムで竣工させている。「公共建築物木材利用促進法」が施行され、木材と木造建築の道が拓かれたが、こうした公共建築物や困難性を伴う木造住宅を供給する住宅企業にとっては、大きな朗報と言えよう。

ワイエスグループが新システム

「木造の公共建築物の促進を」と語るカネシンの夏目専務ワイエスグループは、2種会員で建築金物メーカーとして技術とノウハウを蓄積している株式会社カネシンと、3種会員で建築設計・構造計算などソフト支援と住宅コンサルティング業務を展開している東昭エンジニアリング株式会社、新構法開発を行っている株式会社ニューホームシステムの3社で構成している。

3社では、昨年12月からワイエスホールディングス本社事務所の建設工事に着手し、3月末に完成、竣工検査を終えている。新築工事にあたって東昭エンジニアリングが許容応力度設計による構造計算を担当した。

採用したのはニューホームシステムの「T・Nパネル」、カネシンの金物工法「プレセッター工法」と「門型フレーム」、昨年の東日本大震災を考慮して制震装置の「V-RECS」などとなっている。

ビルトイン駐車場付き木造住宅も可能に

施工された5つの門型フレーム。広いスペースを可能とした壁倍率3.9倍の「T・Nパネル」採用
門型フレームで広い事務スペースを確保

このうち「T・Nパネル」は面材にMDF、枠材にLVLを使用し、内側に硬質ウレタンフォームなどを充填した耐力壁パネル。壁外周だけでなく内部の間仕切り壁を減らすこともでき、工期短縮や間取りの自由度向上だけでなく、大空間や長スパンの施工も容易にしている。11年に壁倍率3.9倍の大臣認定を取得し、耐震等級2や3にも対応しやすい。「プレセッター工法」は、仕口強度が明確な金物接合工法で耐震性能や間仕切りのない大空間の創出を容易にしている。使用する金物には環境に優しく傷がつき難いクロムフリーの高耐食金属表面処理を施した「プロイズ」が用いられた。採用された「門型フレーム」は最大6.5メートルまでスパンを飛ばせることができ、水平力も負担できる。夏目正来・カネシン専務は、「今回は5,340ミリスパンで5フレームを採用し、柱のない広い事務所空間を実現した」と語っている。門型フレームで構成された事務所空間は36畳大という広さで、竣工後にはゆったりとした事務スペースになる。

今回の本社社屋の建て方工事では、1月中旬に門型フレームの設置が実施され、施工性を検討するため1フレームだけ事前に地組みしてクレーンで設置した。残りの4フレームは初めに柱建てを行った後に横材を架けた。工事そのものは短時間で終了し、その後の1階梁と2階の柱施工まで1日で終了するなど、高い施工性が示された。門型フレームは最大6.5メートルまで飛ばせるため、狭小地で道路側に耐力壁のできないビルトインガレージ付き住宅や間仕切りのない広い空間、2台の車を駐車できるビルトインガレージ付き木造住宅などに活用できる。従来まで主に鉄骨などによって長いスパンが構築されていたが、木造の門型フレームによって木造軸組住宅の設計の自由度が高まり、木造市場の拡大に寄与するものとして注目される。今回の新社屋建設では、木住協会員のトーヨー建設(1種A会員)が施工を担当している。

地震の揺れを吸収する「V-RECS」独自の制震装置導入で揺れに対処 阪神淡路大震災の揺れを25%軽減

新社屋の建設では、建設地の東京・葛飾区が万一の震災の発生によって、大きな揺れが予想されることから、カネシンが開発した制震装置「V-RECS」を配置した。この装置はV型の鋼製アームと高減衰ゴムを組み込んだダンパーで構成されている。震動エネルギーをアームからダンパーに伝え、内蔵されている高減衰ゴムが剪断変形することによって、震動エネルギーを熱エネルギーに変換して吸収、建物の揺れを抑える仕組みだ。

阪神・淡路大震災と同レベルの揺れを、約25%軽減できることをモデル物件にて検証済みだ。繰り返される余震に強い復元力を持ち、取り付け説明書を読むだけで木造軸組住宅の通常の壁面に設置できるという高い作業性を誇っている。

メンテナンスや維持管理は不要。5枚の耐力壁に対して1枚の「V-RECS」を設置するだけで、約25%軽減の能力を発揮する。今回の新社屋の建設でも4枚の「V-RECS」が取り付けられた。

自社の新社屋建設で実証

「木の家」では木造住宅らしい真壁を実現した環境配慮も盛り込みスマートオフィスに

夏目専務は、今回の新社屋について「可能な限り環境配慮や高い耐震性を追求したほか、東日本大震災を受けての災害対策などを盛り込みました」と強調している。この一環として遮断ルーフと野地板を一体化したオリジナル屋根パネルを採用した。遮断ルーフに取り付けられた遮熱層が夏の強い日射熱を反射し、内部の二層の通気層で排熱する仕組みだ。日射による熱線を硬質ウレタンフォームがカットし、試験値では屋根裏面の温度差が28℃、小屋裏面では14℃という結果がでている。災害対策では、約51m2の小屋裏スペースが設置されており、ここに災害時に必要な非常食や毛布、ライトなどを備蓄しておくことにしている。創エネルギーも活用し、太陽光パネルやEVファンクションを設置して停電時でも事務所機能が損なわれないようにした。すべての室内照明にはLED照明が採用されており、新社屋は「スマートオフィス」といった事務所になっている。

木造市場の拡大に大きく寄与

差別化図る会員に最適 木造市場の拡大も期待

今回、ワイエスグループの3社が開発したシステムは、すべてオープン工法である。同グループの資材を使用することで、木造による公共建築物のほかに従来まで木造軸組工法では難しかった住宅建設に対応できることになった。公共建築物の建設など、同業他社と差別化を図りたいと考えている木住協の会員にとっては格好のシステムと言えることは間違いない。夏目専務は「木住協の会員に対しては、対応や資材などの面で特別の処置を講じたい」と語っている。

林野庁などの調査によると、08年度に建設された公共建築物の延べ床面積は約420万m2に達している。このうち木造工法で建設が可能と思われるのは、半数強の220万m2にもなる。しかし、実際に木造工法で建築されたのは約16万m2に過ぎない。新築市場が先細りしていく中で、この分野の深耕は会員企業の活性化に役立つだけではなく、木造市場の拡大にもつながることになる。

※協会機関誌「木芽」2012年春号(Vol.143)より転載

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