日本木造住宅産業協会

(一社)日本木造住宅産業協会(略称/木住協)は、木造軸組工法住宅等の普及と健全な発展に寄与することを目的とした法人です。

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住まいの情報

第八回 「基礎の重要性の再認識と、節電への対応」(住友林業(株)・(株)アキュラホーム)

東日本大震災の発生に伴い、住宅の基礎技術と商品開発が大きく変わろうとしている。ひとつは液状化現象が全国各地で多発し、基礎の重要性が再認識されたことである。第二は原発事故によって、昭和30年代以降は考えられなかった停電という事態が現実的なものとなり、節電への対応と停電を回避するため蓄電池などを搭載した商品開発が進められている。木住協の会員の中でも、前者については住友林業(株)(同=東京都千代田区、市川晃社長)が新しい地盤補強工法を発表、後者では(株)アキュラホーム(本社=東京新宿区、宮沢俊哉社長)が、自給自足を目指す新商品「めぐるecoW」を発売するなど、両部門で先鞭を付けた形となっている。

液状化に対応し省施工、低コストの「テーパー・パイル工法」/住友林業(株)

佐藤隆・筑波研究所建築住まいグループ上席研究員住友林業が軟弱地盤での戸建て住宅向けに開発した地盤補強工法は、「スミリン・テーパー・パイル工法」(STパイル工法)と呼ばれているもの。筑波研究所が開発し、1/150の傾斜で先端を細くしたテーパー鋼管杭を用いて、軟弱地盤に回転させながら圧入する。これまでの円柱状のストレート杭と比べ、杭の先端ほど細くした形状のため地盤を締め固め、周面摩擦抵抗はストレート杭の1.5倍以上と強く、上に乗る住宅をがっしりと受け止める。この先端部を細くしたという点が「ミソ」である。テーパー杭を地盤に回転圧入する際には、先端が細いためにエネルギー力を低減でき、これまでよりも少ない杭の本数で支持力が得られるのが最大の特徴だ。工期短縮やコスト削減にもなり、顧客メリットの訴求にもつながると期待されている。

先端が細いテーパー鋼管杭で抵抗力1.5倍に向上、軟弱地盤での住宅建設に威力発揮類

開発に携わった佐藤隆・筑波研究所建築住まいグループ上席研究員(57歳)に、開発の経緯を聞いてみた。研究所が新たな地盤補強工法の開発に実際に着手したのは2005年だが、佐藤さんは「住宅に優しい地盤補強工法はないものかと2000年頃から模索していました」と語る。各種の論文を読みつくし、実際に実証実験も何度となく繰り返したという。「最初はコンクリートの電柱を使って実験しましたが、機械を使って回転圧入をしたら、重く挿入できにくいだけでなく、途中で割れてしまいました」という。次に挑戦したのは国旗などを掲揚する金属製の旗竿ポールだった。「これはうまく圧入することができましたが、コストが高く付いてしまい、あきらめざるを得ませんでした」と佐藤さん。

テーパー鋼管そんな頃に出会ったのがテーパー鋼管だった。新日鐵が高速道路の照明用ポール向けなどに量産し、構造用の炭素鋼管を回転させながら絞り込み、先端にいくほど細くなるよう傾斜を設けるスピニング加工を施したパイル。模索していた頃から5年が経過していた。このテーパー鋼管は、ストレート杭と比較して支持力で1.5倍から2.0倍も強靱であることも分かった。

開発に拍車が掛かった。先端に向かって細くなる角度の検証が最大の山場となった。佐藤さんは「角度を大きくして、より三角錐状にすると頭径が太くなり、施工性が劣ってしまいました。数種類の試験体を造って何度となく検証し、最適な頭径を139ミリ、傾斜も1/150と決めました。軟弱地盤や角地などで施工性も含めて実験を繰り返しました」と開発経緯を説明する。

軟弱地盤に最適な補強工法

ストレート杭とテーパー杭の形状の違い抜け上がり現象を防止、土中環境も保全 まさに「縁の下の力持ち」といった存在に

東日本大震災では各地で液状化減少による建物被害が発生したが、住友林業が「STパイル工法」を試験的に採用した埼玉県の戸建て住宅では、基礎の不動沈下といった被害はなかったという。開発された「STパイル工法」は、同社のオリジナル地盤補強工法として特許出願している技術を基に、新日鐵と共同開発された。佐藤さんは「ストレート杭と比べSTパイル工法には多くのメリットがあります。ストレート杭は土中の硬質地盤(支持層)まで杭の先端を到達させ、その先端への地盤の抵抗によって支持力を発揮して建物を支えます。これに対してSTパイル工法は杭の周面摩擦抵抗によって支持力を発揮します。ストレート杭では、支持層まで先端を届かせることから、支持層までの距離が深ければ何本も継ぎ足して、長くなってしまいます。STパイル工法では6メートルの長さのテーパー杭1本で十分です」と説明する。つまり、ストレート杭は何本もの杭が必要になり、施工性もコストも割高になる。STパイル工法は支持層が深くとも地盤支持層に到達する必要はなく、周面摩擦抵抗によって基本的に1本で支持力を発揮する。先端を細くした形状のため回転圧入する際のエネルギーが少なくて済む。

施工性も容易になった。ストレート杭では40本の杭を打つのに平均2日間もかかっているが、STパイル工法では1日で終了する。コスト面でも優位性を持っている。佐藤さんは「テーパー杭の製造コストは2倍になりますが、短い杭1本で基本的に済み施工も短期間のため、合計の地盤補強工事のコストは敷地によっては3分の2程度になります」と強調している。安全面では「地盤面の変化などによって地域的な沈下が発生しても、必要な支持能力を保持しながら地盤と基礎が一体となって挙動するため、抜け上がり現象を防止することができます」と語る。

STパイル工法は地盤環境に悪影響を与えないという特徴を持つ。一般的に施工されている柱状地盤改良では地中で柱状の杭を構成するため、固化剤やコンクリートを圧入する。佐藤さんは「この固化剤などが土質環境を悪化させていると懸念されています」と指摘する。佐藤さんらが開発したSTパイル工法は、日本建築総合試験所から性能証明を取得した。住友林業では、供給する戸建て住宅の60%前後が表層改良を含めて、何らかの形で地盤補強工事を実施しているという。STパイル工法は運用を開始した段階で、液状化現象などの発生が予想される地域に採用され始めている。住宅が完成してしまうと地盤改良は目に見えなくなってしまうが、同社が開発したSTパイル工法とテーパー杭は、「縁の下の力持ち」といった存在と言える。

太陽光とガスのW発電に蓄電システムを搭載 /(株)アキュラホーム

アキュラホームでは、震災後の7月から太陽光発電システムと蓄電池を搭載した特別仕様の「めぐるeco2011」を限定発売した。開発の背景について、同社では「震災後に住宅計画者の太陽光発電に対する潜在需要が、以前に比べて約1.7倍に拡大したという調査結果があります。当社への創エネ設備に関する問い合わせも増加傾向にあり、ニーズが大きく変化しつつあると判断し開発に着手しました」(広報課)と説明している。

「めぐるecoW」の外観停電時でも3時間の通電を確保、節電や電力不足にも対応し家計に優しい「優れもの」

「めぐるeco2011」では、3.3KWの能力を持つ太陽光システムと3時間にわたって停電した場合でも通常と変わらない生活ができるよう、容量が2.07KWhの蓄電池を搭載している。太陽光発電の発電量と消費電力がリアルタイムで表示できる「エコノナビット」のほか、震度5以上の地震で自動的に電力を遮断して火災を未然に防ぐ安心分電盤、LED保安灯なども特別仕様として採用している。

これに続いて、9月には太陽光発電とガスによるダブル発電に蓄熱システムを組み込んだ長期優良エコ住宅「めぐるecoW」を、アキュラホームと同社が主宰するビルダーネットワーク「ジャーブネット」を通じて期間限定で発売している。震災以降、電力不足によって高まった節電・停電対策としての創エネや蓄電池への関心に加え、国や自治体の補助金制度の拡充、環境意識の高まりを後押しに開発された商品である。「めぐるecoW」は「めぐるeco2011」をさらに昇華させ、太陽光発電とガスを熱源とした「エコウィル」のダブルで発電することによって、晴天の昼間には太陽光発電とガスで発電した電力を使いながら、太陽光発電による余剰電力を売電することができる。夜間や雨天の日にはエコウィルで発電ができるため、太陽光発電だけよりは効率的に電気代を削減できるという「優れもの」でもある。

太陽光などを利用した買電と売電の仕組み年間光熱費使用料を66%も削減でき停電時でも
日常と変わらぬ生活可能

ガスで発電する際に発生する排熱を、エネルギーロスを抑えた給湯や床暖房にも活用することができる。発電に使用する天然ガスは、石油などの化石燃料に比べてクリーンなもので、環境志向が高まっている最近の住宅計画者から受け入れられている。アキュラホームの試算によると、一般家庭の光熱費の年間使用料を約66%もカットすることができ、さらに一般家庭が排出するCO2も1年間で約900キログラムを削減することができるという。一般家庭の年間使用光熱費の削減を金額で試算すると約16万円にもなる。それだけ家計にも優しいというのが特徴にもなっている。CO2の削減量も、約2000m2のブナ林が吸収する量に匹敵するという。

このダブル発電に加えて、蓄熱システム(2.07KWh)を組み合わせることによって、万一の停電時には自動的に蓄電池からの電力に切り替えることができ、あらかじめ設定しておいた家電製品などを従来通りに使用し続けることができる。蓄電池による使用電力量の目安は、32型の液晶TVと冷蔵庫、エアコン、ノートパソコン、換気扇、LED照明などの電気製品を組み合わせ、約3時間使用しても停電することはないと同社では胸を張っている。

「めぐるecoW」のシステム電気が途絶えてもガスで発電、これからの暖房需要の
逼迫にも十分に対応可能

家庭内で必要になる電気を電力会社から買電するとともに、ガス会社から供給されるガスによって発電するというツーウェーの方式には利点がある。今回の東日本大震災のように仮に電力会社からの通電が途絶えても、ガスが供給されていれば電気を使い続けることができる。電気とガスが途絶えても蓄電システムにより、一定時間は電気のある生活を送ることができる。

今年の夏は猛暑に加えて節電もあって、思うようにエアコンなどのスイッチも入れられない辛く厳しい日々が続いた。地震や停電に対する不安もぬぐい去られておらず、これから迎える冬の季節も夏以上に節電が求められている。

電力使用の急増で真っ暗闇になった住宅街で、「めぐるecoW」の住宅だけが明るい環境の中で建っているという光景も見られることになろう。

※協会機関誌「木芽」2011年秋号(Vol.141)より転載

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