日本木造住宅産業協会

(一社)日本木造住宅産業協会(略称/木住協)は、木造軸組工法住宅等の普及と健全な発展に寄与することを目的とした法人です。

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第七回 「ミサワホームに学ぶ建設廃棄物削減」(ミサワホーム(株))

廃棄物は宝の山と語る岡マネージャー地球環境の保全、CO2排出量の削減が住宅メーカーの責務としてクローズアップされている。特に新築現場などから排出される建設廃棄物の処理とリサイクル、リユース、リデュースの「3R」の実施が急がれている。こうした中でミサワホーム株式会社(1種A正会員、本社=東京都新宿区、竹中宣雄代表取締役社長)が千葉県野田市に産業廃棄物の中間処理施設「関東資源循環センター」(宮本裕司所長)を設置して、新築現場から排出される建設廃棄物の削減に取り組んでいる。既に本格稼働に入っており、同資源循環センターの削減の仕組みなどを取材した。

ミサワホームの産業廃棄物中間処理施設「関東資源循環センター」は、6年前に千葉県野田市はやまの工業団地の一角にオープンした「関東物流センター」に併設される形で昨年3月に設置された。同月末には関東エリアの1都7県を対象にした「広域認定制度」を取得し、6月から本格稼働に踏み切っている。本格稼働から約1年半が経過し、現地を訪れた時には新築現場から持ち込まれた建設廃棄物などが、資源循環センターで効率良く処理されていた。同社では新築施工現場のゼロ・エミッションを、廃棄物として埋め立て、単純焼却することなく、リサイクル率を100%にすること、と規定している。通常、産業廃棄物は複数の都道府県にまたがって移動することはできない。広域認定制度は複数の都道府県にまたがって産業廃棄物を回収、処理することを許可される廃棄物処理法の特例制度。廃棄物の広域的処理に関して一定の基準を満たしていることを条件に、環境大臣から認定されるもの。大手住宅企業では先行して同制度を取得している住宅メーカーもあるが、千葉県内での広域認定制度の取得と運用開始は、同社の資源循環センターが第1号である。

物流センターの隣地に設置、現場で10分類

関東資源循環センターの特徴は、物流センターに併設して設置したこと。物流センターでは山梨県を含めた首都圏1都7県の8ヵ所に中継基地(デポ)を設置し、ここを経由して、新築施工現場に部・資材や設備機器などをトラックで配送している。資源循環センターへの建設廃棄物の回収は、この配送トラックの帰り便が利用されている。建設廃棄物は新築施工現場で職人の手によって10種類(木屑、紙屑、段ボール類、プラスチック類、石膏ボード、金属屑、陶磁器屑、瓦礫類、混合廃棄物、未使用部材)に分別され、一旦、デポで保管される。ここでデポに部・資材を配送して空になったトラックの帰り便に積み替えられ、資源循環センターに回収される仕組みだ。ただし、栃木県全域と資源循環センターの近隣地域だけはデポを経由せず、新築現場から同センターに直送される。岡靖明・ミサワホーム生産・建設本部環境推進グループマネージャーは、「配送便を動脈物流、回収便を静脈物流と読んでいますが、こういった物流体制を構築して物流センターに資源循環センターを併設することによって、効率良い配送と回収が可能となりました。輸送中にトラックから排出されるCO2も大幅に削減することができるようになりました」と語っている。

回収方法をもう少し詳細に説明すると、(1)事前に用意したQRコードラベルと半透明の分別袋を部・資材と一緒に邸別に現場へ搬入、(2)新築施工現場では建設廃棄物を分別袋に10種類ごとに袋詰めにしてQRコードラベルを添付する、(3)建設廃棄物はデポに集積され、配送帰り便のトラックにより資源循環センターに運ばれる、(4)資源循環センターでは中間処理を行った建設廃棄物を再資源化業者に運搬する―という仕組みである。配送・回収便には2トン車が主に使われているが、積載にも独特の工夫をしている。鋼製の床材に6本の柱を組み合わせた3種類の定型パレットを用意し、2トン車に設置して建設廃棄物を詰め込む。定型パレットを使うことで、運送中の荷崩れが防げ、積載作業や資源循環センターでの荷下ろしが容易になったという。

関東資源循環センターが本稼働 部・資材搬送の帰り便で回収

搬入された廃棄物は初めに重量が計測されるQRコード導入でデーターを蓄積

第二の特徴は、この半透明な分別袋とQRコードラベルを採用したことだ。建屋面積が約9500㎡の関東物流センターに入ると、2トントラックが首都圏各地から回収してきた分別袋に入っている建設廃棄物を、長さ100メートルの荷下ろしスペースに横付けして、建築廃棄物ごとに次々と降ろしていた。半透明な分別袋は中にどのような廃棄物が入っているか、異物が混入していないかが一目で分かる。分別袋には工事現場名、廃棄物の種類が打ち込まれたQRコードラベルが貼られ、降ろされると同時に重量が計測されていた。

計測するのには訳がある。QRコードラベルにインプットされた廃棄物データーは邸別ごとに事務所内のサーバーに集積され、本社の開発・設計部門とも結んで情報処理されている。岡マネージャーによると、「情報処理では邸別廃棄物量のデーター収集、品目別廃棄物のデーター収集、排出先管理、行政区分ごとの排出量集計などを行っており、減量化促進に貢献しているほかコンプライアンス、行政報告などに使用しています。データー収集によって、品目別にどの様な廃棄物が多いか、少ないのかといったことが分かることになります」と語っている。こうしたデーター収集は商品開発や設計の際に生かされ、建設廃棄物の排出量を減らした商品開発に寄与している。また、設計部門や生産部門では、建設現場で部・資材が不足してしまうと施工に支障が出るため、設計量よりも多目に部・資材を発送すること多々ある。多目に発送した部・資材は、使われずに戻ってくるケースもあり、データー収集に基づいて発送する部・資材量を厳密化することが可能になり、廃棄物量そのものを抑制できることになる。

積載専用の定型パレット岡マネージャーは「QRコードラベルの採用によって、建設廃棄物の減少だけでなく発送する部・資材量を適量化することができ、コスト削減に大きく寄与しています」と強調している。資源循環センターの敷地には荷降ろしされ、、分別処理の順番を待つ建設廃棄物が積まれていた。ユニークなのは、この積み残された建築廃棄物を分別工程に配送するため、「こまわりクン」と名付けられた貨物牽引車が資源循環センター内を走り回っていること。分別コーナーで分別する建設廃棄物が少なくなった場合、係員がカードをコーナーの入り口に表示すると、「こまわりクン」が屋外から分別袋を運んでくる。「こまわりクン」には電気駆動車が使われ、1日に資源循環センター内を70往復もして手早く分別できるようにしていた。

コスト削減、商品開発にも寄与

こまわりクンが場内を回っている1棟あたり0.7トンを削減

稼働から1年半が経過し、ミサワホームでは一層の建設廃棄物量の削減とコスト削減に余念がない。資源循環の代名詞といえばリデュース、リユース、リサイクルの「3R」が謳われているが、ミサワホームではQRコードラベルを活用した情報発信(リリース)を付け加え、「4R」の実践に力を入れている。資源循環センターでは、新築施工現場で10品目に分別した建設廃棄物を約40品目に再分別している。例えば木屑は製材や合板類、フローリングに再分類する。プラスチック類はクロスや塩ビ系、発泡スチロールなどに、陶磁器屑も瓦やカラーベスト、サイディング、タイルに、混合廃棄物は清掃屑や断熱材、微量発生材などにそれぞれ細分化している。資源循環センター内では、粛々と選別作業に取り組んでいた。

分別された木屑などはパーティクルボード、段ボールは再生紙、陶磁器屑などは再生砕石、金属屑は再生鋼材、廃プラスチックは固形燃料やプラスチック原料、同社独自の再生エクステリア商品である「M-ウッド2」の原材料などにリサイクルしている。電線類の分別工程では、社員が機械の一方に電線を挿入すると、反対側から瞬時に電線とビニールに分けられて出てくる。電線の被覆材は防水シートの原料に活用されているという。関東資源循環センターの社員は20人で、このうち15人が選別など現場作業に従事していた。処理能力棟数は年間3500棟以上、処理重量に換算すると約1万2000トンにもなる計算だ。岡マネージャーは、「当初、新築施工現場からの建設廃棄物量を1棟あたり2.5トン前後と想定していましたが、実際は3トンを超えてしまい、意外と多いことが分かりました。昨年、生産設計部門を含めて減量化のワーキンググループを発足させて減量化に取り組んだ結果、これまでに1棟あたり0.7トンほど減量することができました」と語っている。

粛々と分別する社員たち人材育成や職人教育にも力

算性も徐々に向上し、今年7月には単月ながら黒字を達成した。「今年度の下期を通して損益はプラスとなる見込みです。建設廃棄物の処理は経費が膨大に掛かると考えている住宅企業も多いかと思いますが、減量すればするほど総合的にコストが下がり、企業経営として採算に載ることが分かりました。まさに廃棄物処理は【宝の山】です」と岡マネージャーは笑顔で続ける。ミサワホームは選別にあたる人材育成にも力を入れている。間違った分別・仕分けを行ってしまっては、折角の「4R」が台無しになってしまうからだ。このため、資源循環センターの入り口に「分別訓練道場」を開設した。建設廃棄物を全部で108品目に分けて手に入るくらいのカードにし、正しい場所にいかに早く正確に入れるかを習得するもので、新入社員は職場配属前に、必ず学ばないといけないことになっている。訓練道場の掲示板には、習得した社員の名前と先輩社員からのワンポイント・アドバイスが誇らしげに貼られていた。近くの茨城県常総市に今年開設された技能訓練センターでの研修の最終日に、資源循環センターで分別方法などを教育して、グループでの分別の徹底を図っている。

段ボールは圧縮されて再生されるミサワホームでは新築施工現場での分別を10品目としている。現場分別をさらに細分化すれば資源循環センターでの分別がより容易になると考えられるが、同社では「それでは現場での職人の手間が増えてしまい、逆効果になってしまいます」(宮本裕司・関東資源循環センター所長)と、これ以上の細分化は実施しないことにしている。

中小業者は共同して廃棄物ゼロを

ミサワホームは平成19年に全国のすべての生産工場でゼロ・エミッションを達成している。工場に続いて資源循環センターのシステムを展開し、新築施工現場のゼロ・エミッションを一層と推進する計画だ。来春にはトヨタホーム(株)の新築物件の搬入を引き受ける。首都圏に続いて近畿圏や東海圏でも同様の資源循環センターを設置し、ゼロ・エミッションに取り組むことにしている。岡マネージャーは「資源循環センターは単なる中間処理施設ではありません。建設廃棄物の抑制やコスト低減に貢献し、環境時代の重要拠点として位置付けています」と語っている。

中小の住宅供給企業にとって、ミサワホームが設置したような資源循環センターを運営することには多額の資本投下が必要になり、処理量も比較的少なく上手く運営できないという不安がある。この点に関して岡マネージャーは「例えば核になる企業を中心にして、近県で住宅事業を展開する企業とが組合方式を採用することで広域認定制度を取得でき、資金面も処理量の不安も解決できるはず。環境保全の観点から同業他社が力を合わせなければならない時代に入り、建築現場からの建設廃棄物をゼロにしなければなりません」と力説している。

※協会機関誌「木芽」2010年秋号(Vol.137)より転載

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