日本木造住宅産業協会

(一社)日本木造住宅産業協会(略称/木住協)は、木造軸組工法住宅等の普及と健全な発展に寄与することを目的とした法人です。

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第六回 「ペット同居で独自のソフトを提案」(大和ハウス工業(株))

鈴木 基之 主任犬や猫などのペットを飼う人たちが増えている。ペットには癒し効果があり、子供たちの情操教育にも役立つ。「ペットと同居できる住宅を」というユーザーニーズも高まりつつあり、ハウスメーカーではペット対応住宅を発売したり、ペットと同居可能なマンションやアパートも増えている。今回の「家づくりの新潮流」は、増加しているペット同居に焦点をあて、ペット同居住宅を供給する際の留意点を、大和ハウス工業株式会社(1種A会員、本社=大阪市北区、村上健治社長)の鈴木基之・技術本部住宅商品開発部企画統括グループ主任(37歳)に聞いてみた。鈴木主任は「ペット同居住宅を建築する場合には、適切な配慮が必要です。飼うというスタンスではなく、人生の伴侶、仲間という位置付けで、ペットと人との『絆』を育む家づくりが必要です」と語っている。

ペットは家族の一員 人との「絆」が必要

読者諸氏は、日本にどのくらいの数のペットが飼われているのか、ご存知だろうか?ペットフード協会の推計によると、犬と猫だけでも約2234万頭が飼われているという(2009年第16回犬猫飼育率全国調査)。実に東京都の人口(約1299万人)の1.72倍もの犬と猫が、家庭で飼われていることになる。年齢層が高くなるほどペットを飼う世帯の比率が高まり、犬の場合では50歳代と60歳代の5世帯に1世帯の家庭で飼われている。

大和ハウス工業ではペット同居住宅というハードを造るのではなく、暮らし方というソフト提案の側面から研究を開始した。鈴木主任は「ハウスメーカーとしてペット飼育人口の増加に伴い、ユーザー向けにソフト提案をしないといけないという状況になっています。当社の総合技術研究所でソフトを専門に研究する生活ソフト研究室で各種の調査を実施し、住宅を引き渡したオーナー様宅に入居者訪問を行って、どの様な同居の暮らし方がベストかを調べました」と語る。導き出されたのが「住宅内におけるペットの位置付けを変える必要がある」ということ。ペットはただの愛玩動物ではなく家族の一員になっており、鈴木主任は「コンパニオンアニマル(伴侶動物)という人生の伴侶、仲間という地位になっています。人生のパートナーとして、ペットと人の『絆』を育む家づくりが必要になってきます」という結論に達した。

欠かせない「共育」と「共生」の視点

独自に開発した閉められる収納ありがちな思いこみ ペットは大いに迷惑

獣医師などと何度も検討を進め、研究成果として一昨年7月に「ペット∞わたし」というペット提案カタログを発行した。無限を意味する「∞」は、ペットと飼い主との末長く続く絆を表したものだという。大和ハウス工業は、ペットと飼い主がともに理解し、より良い絆を育む「共育」と、ともに元気で安心して生きられる「共生」という視点が欠かせないとしている。ペット同居住宅を建築するには、飼い主も供給側もペットの特性などを知っておかなければならない。対応を間違えると、ペットにとっても、施主にとっても問題が生じてしまう。例えば、「見晴らしの良いバルコニーでペットたちもきっと気持ちが良いはず」と思っても、犬はそわそわと落ち着きがなく、無駄吠えをしていることがある。

「ペット∞わたし」によると、ペットの習性を理解していないためだという。バルコニーなどの見晴らしが良く、周囲が見渡せる場所は、犬にとって警戒すべきテリトリーをいたずらに広げることになる。自分の領域に侵入したと思って、道路を通行する人や車に無駄吠えをすることにつながることもあるという。

同様に「ペットたちの専用スペースは家の中に特になく、いつも私達と一緒でペットも大満足」と飼い主が勝手に思っていても、犬たちにとっては迷惑になることもあるという。犬には部屋の隅っこにある机の下など、落ち着くための専用の居場所が必要になる。猫を室内で飼う場合には、運動不足や肥満に注意が必要で、登れる棚や飛んだり跳ねたりすることのできる運動スペースが不可欠になる。いずれも飼い主側の大いなる勘違いで、鈴木主任は「飼い主が善かれと思ったことでも、ペットたちにとっては困ってしまうこともあり、愛情を押し付けるのではなく、習性や行動を理解することで飼い主もペットも快適な暮らしを実現していくことが大切です」と指南する。

ペットの出入口を設置したサッシ専用の居場所提案 ストレスを軽減へ

大和ハウス工業では、数多く家造りにおけるポイントを提案している。「共育」の面では、犬たちは家族の一員と感じられる場所があれば安心することから、棚の下やデッドスペースになりやすい場所に「ペットスペース」を配置することを提案している。人間社会で生活するペットは、人間以上にストレスを感じているといい、いざと言う時に逃げ込め、あるいはストレスを感じた時に休める「ペットスペース」は必要だという。ペットが共存していくためにも、お互いの「専有」と「共有」のメリハリをつけることも大切である。「ペットゲート」や「ペットフェンス」によって、居場所を教える。ペットたちも入ってはいけない場所を覚えることで、飼い主から怒られるストレスを軽減でき、無駄吠えも減らせる収納の工夫も欠かせない。ペットたちにとって手が届くものは全て好奇心をくすぐる対象物。煙草や薬、アクセサリーなどを誤飲するケースもあるという。このため、ペットたちに「見せない」「触らせない」という視点から、扉のある収納やスライド収納が必要になる。

鈴木主任は、「ペットを飼う時には、臭いやキズ、音の問題を解消する必要があります」と指摘する。このうち、「臭い」の解消ではペット自身のブラッシングをこまめに行うほか、消臭効果のある壁仕上材や天井仕上材、局所換気扇などの使用を提唱している。床などの「キズ」対策には、滑りにくくて爪を立てることも少ない、ペットの体にやさしいタイルカーペットやフロアコートを提唱している。特に猫は爪とぎを行う習性があり、家具や内装を傷めることが多い。小さい頃から専用の爪とぎ用品に慣らさせておくこと、好みのものを見つけて気に入った場所に置いておくことが必要になる。吠えるという「音」の解消には、ペットが小さい頃からの躾(しつけ)と、吠える原因の解明が重要になってくる。

最も重要なペットの高齢化

ペットの高齢化も考える必要がある(写真はイメージ)健康な環境づくり 段差解消など必要

「共生」の面で最も重要なことは、計画にあたって「老化」という点を念頭に置かねばならないことだという。犬の老化は小型犬や中型犬で生後7歳くらいから、大型犬では5~6年、猫は7歳くらいから緩やかに進んでくる。鈴木主任は「ペット同居住宅を建てる時には、技術で解決しようとしては駄目です。お客さまの要望をそのまま受け入れても上手くいきません。造り手の提案力が必要になってきます。ペットも必ず高齢化するもので、時として認知症を発症する例もあります。床をバリアフリーにするほか、視力なども衰えてきますので、出隅に丸味をつけ、センサー付のフットライトも設置するといった提案が必要です。ペットの加齢スピードは人間の何倍も速く、ペットの将来を見据えた提案を行うことです」と指摘する。続けて「ペット同居住宅を提案する場合は、そこに住むペットと「面談」し、どんな性格をしているのか、問題行動がないか、施主との関係は良好かなどをリサーチすることが重要です」と語っている。

健康な環境づくりの工夫も必要になる。ペットにとっても風通しを良くし、室内に新鮮な空気を取り込むことは最低限必要なこと。適切な温度と湿度を維持することで、ダニなどの発生を防止できる。犬たちは寒さに弱く、体温調節能力が低い。暑さ対策として玄関やタタキなどの上の涼しい場所を好む性質を持っており、このためタイル貼りの床なども欠かせないことになる。また、ペットたちの背丈は50センチ程度で、この辺りの空気質が良好になるように、アレルギーの原因になるハウスダストが溜まらない家具の配置や通気計画もポイントになってくる。

プランの工夫も重要 犬と猫で異なる習性

住宅プランの工夫も、小型犬と大型犬では異なってくる。小型犬では雨天の時でも室内で運動することができ、自然と家族に触れ合えるプランにすることも重要だ。また、周囲の様子がペットにも分かる、格子形状のフェンスで仕切られた落ち着く専用スペースを設ければ、来客時などのストレスも軽減できる。大型犬の場合は、穴掘りを好む犬の習性に合わせた庭づくり、泥んこ遊びや散歩帰りの汚れた身体を洗える屋外用の多目的防水パンも提案している。ペットにとってもストレスがたまりにくく、飼い主にとっても容易に洗えるというメリットがある。

動線計画も重要になり、居場所のメリハリをつけ、スムーズな動線で決められた場所を覚えやすくする。ペットの高齢化に対応して寝る場所の近くにトイレを配置したり、階段の勾配を緩やかにしたり、滑りにくい素材の採用といった配慮もより重要になってくる。猫の場合では、高い場所に登りたがるという習性に合わせて、専用の猫棚やキャットウォークを設計段階から設け、暖かく昼寝ができる場所を設定しておくこともポイントになる。キャットウォークなどは運動不足の解消にも役立ち、高いところにいることによって精神的に安定して、ストレスも発散できる効果もあるという。また、外出から帰宅した時に飛び出しを防止するためのインテリアドア、自由に行き来ができるペットドアなども提案している。

自閉症の緩和やアニマルセラピーも

ペットには癒し効果がある(写真はイメージ)独自アイテム開発 参考プランも用意

鈴木主任は入社して約10年間にわたって住宅設計に携わり、3年前から住宅商品開発部企画統括グループでソフト提案に取り組んでいる。自身もかつて犬を飼っていた経験がある。ペット提案カタログの発行と同時に、大和ハウス工業では専用収納やペットフェンス、キャットウォーク、さらにソフトな手触りが心地よく防水・防臭機能付きのラグ、猫棚とキャビネットを組み合わせたシェルフといったアイテムを独自開発している。いずれも飼い主とペットがともに快適に生活しやすくしたアイテムである。ペット同居タイプの参考プランも犬や猫の習性、特性に合わせて3プランを作成した。

鈴木主任は「ペットと一緒に暮らすことによって、子供の情緒が安定したり、思いやりの気持ちが育むといわれています。さらに自閉症や認知症の症状が緩和するなど、人と動物の絆から医療や福祉の現場で『アニマルセラピー』という考え方が注目されています」と語る。高齢化社会の進展にあわせて、今後一層、ペットと暮らす世帯が増えると予想されている。鈴木主任は「われわれ住宅の造り手として、ペットの高齢化という点を先ず念頭に置き、健康や事故防止も含めて飼い主とペットの双方に過ごしやすい住宅を供給していくことが重要です」と強調する。大和ハウス工業のソフト提案は、木住協の会員がペット同居住宅を建築する際に大いに役立つことは間違いない。独自のハード、ソフトを加え、今後のペット同居の需要の高まりに対応していくことが求められている。

※協会機関誌「木芽」2010年春号(Vol.135)より転載

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