日本木造住宅産業協会

(一社)日本木造住宅産業協会(略称/木住協)は、木造軸組工法住宅等の普及と健全な発展に寄与することを目的とした法人です。

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住まいの情報

第五回 「木造耐火建築の取り組み」((株)シェルター)

木村 一義 社長これまで耐火性能に劣るといわれてきた木造軸組工法が、新しい局面を迎えている。当協会が平成18年に国土交通省から建築基準法に基づき耐火構造の大臣認定を取得して以降、徐々にだが木造軸組工法による耐火建築が姿を現し始めた。そこで、木住協の会員企業で、大型木造建築と木造耐火建築の先駆的企業である(株)シェルター(本社=山形市、木村一義社長、資本金5000万円)の取り組みを取材した。

山形駅から車で約15分。企業団地「アルカディアソフトパーク山形」の一角に、一風変わった建物がある。門型の突き出た壁とカーテンウオールでシンメトリーにデザインされた外観が特徴の建物が、訪れた人の目に飛び込んでくる。ここがシェルターの本社ビルである。外から見た限りではRCかと思いがちだが、実は独自開発したKES構法を採用した大型木質構造建築物である。一歩中に入ると、木材がふんだんに使われている。スチールを木で挟んだブレースで水平力を受ける構造とし、開放感のあるプランニングを実現した。ポーチに続くホールは3階まで続く1000㎥の吹き抜け。トップライトから日の光が降り注ぐ。最大スパンは5.46m。準耐火地域で最大規模の木造建築物を目指し、木造の未来を具現化した同社のシンボル的な建物である。

木造とは分からぬシェルターの本社24歳の時にKES構法を開発

シェルターは工務店の4代目として生まれた木村一義社長(60歳)が、幼い頃に作業場の裸電球の下で夜遅くまで、一心不乱にノミでホゾを空けている父親の姿を見たのが原点。学生時代から木村社長は「建物の基本である躯体は頑強にすべきだが、日本の住宅の造り方は職人の技に左右され、工学的な計算に馴染まない。強度という安全性を担保するために、技量の良し悪しではなく、誰でもが専門の技がなくとも安定した強度を得られる方法はないものか」ということを考えていたという。ヨーロッパ視察の際、柱が鉄骨で梁に木材を使用した別荘を見て、木村社長は衝撃を受ける。と同時に、「鉄の金具で柱・梁を筋結すれば、木造住宅でも安定した強度が得られる」とひらめいた。

帰国後に部材を標準化してシンプルで合理的な構法の研究を進め、接合部に金物を使用する接合金物構法を開発する。山形県寒河江市に建設を予定していた社屋で試した。これがKESプロトタイプの第1号である。昭和49年、木村社長が弱冠24歳の時だった。この第1号プロトタイプは、プレカット工場事務所に衣替えして現存している。KES構法では軸組工法の弱点といわれていた接合部に、引っ掛け部分と梁受け部分を備えたオリジナルの接合金物を用いることで強度を担保している。しかも結合金物はパターン化されたシンプルなものとなっており、施工の容易性とスピーディーさを確保した。柱材は通常の軸組み工法で採用されている木材より一回り太い140mm角を標準仕様とし、耐火性を向上させている。材も全国各地の提携プレカット工場で、地元の国産材を構造用集成材に加工して供給される。

高い技術力が世界から評価受ける

阪神・淡路大震災でも無傷で残る

天井から日の光が差し込むホール

このKES構法、昭和54年に特許と実用新案を取得したのに続き、平成2年に第1回木造住宅合理化システム認定を受け、平成3年にはカナダとアメリカで特許を取得するなど、そのシステム性の高さは各国から高い評価を得た。エポックとなったのが、平成7年に発生した阪神・淡路大震災だった。当時、震源地周辺には73棟の3階建てKES構法の住宅が建設されていたが、類焼によって1棟だけが焼失したものの、残りのいずれもが無傷で残り、高い耐震性を裏付けた。

安達広幸・取締役KES事業部サブディレクター(42歳)は、「類焼した1棟も燃え尽きるまで6時間もかかり、その間に家財道具を運び出したり使用していた建材などを取り外すことができ、施主から喜ばれました。図面類も保存してあり、半年後に取り外した建材を使って同じ住宅を建て替えることになりました」と胸を張っている。震災を契機に住宅は価格よりも性能が重視されるようになったが、住宅着工は復興需要を除き大幅に減少する時代を迎える。しかし、高い耐震性が裏付けられたことによって、KES構法は飛躍的に拡大する。ここでシェルターが注目したのが24時間営業に変わりつつあった外食産業の店舗建設だった。

「当時の外食産業の店舗は大部分が鉄骨造でした。しかし、鉄骨造では光熱費がかかり、施工期間も長くオーナーから何とかしたいという要望が寄せられていました」と安達取締役サブディレクター。試算したところ、鉄骨造にくらべKES構法は冷暖房コストが従来の半分で済み、基礎打ちが終了すれば1週間でオープンにこぎつけられる。建築費用も半額で済み、償却期間が短く税制面でも有利とあって、KES構法を採用した外食店舗が爆発的に増え、これまでに全国で500棟以上を供給している。

環境対策や短工期など多いメリット

安達 取締役サブディレクター庁舎建築を契機に公共建物へ

シェルターは再度の転機を迎える。平成9年にアルカディアソフトパークに竣工した本社社屋に、一人の紳士が尋ねてきた。聞くと岩手県浄法寺町の町長(当時)という。「庁舎が建築されて約40年経過し、老朽化が激しく地震が起こったら危ない。地元の木材を使って何とか新しい庁舎を建築したい」という話だった。本社社屋の建築費を聞いた町長は「えっ、そんな建築費でできるのか」と驚いたという。町長は木造で庁舎を新築するため、議員たちを連れて再三にわたって本社を訪れた。しかし、「木は火に弱い」という誤った認識から、県の条例によって庁舎などの建築はRC造と決められていた。町長や町の根気強い折衝によって、県も条例改正に踏み切り、平成13年8月に町民ホールを備えた3階建て延べ床面積2318㎡の庁舎が竣工する。60分準耐火建築で、地産地消という考えから、構造材には町有林の唐松を集成材にして活用され、施工も地元の職人たちが携わった。

浄法寺町の庁舎建設を機に、KES構法による公共建築物への市場が拓けた。この前後、シェルターは木骨3次元ラーメン構法として「KES ONE構法」を開発する。200mm角以上の柱に140×340mmの梁をオリジナルコネクターで組み合わせたものだ。自由度が一層と高まり、狭小間口での車庫付き住宅や公共施設などの大規模建築物まで対応できるようになった。その後に建築された公共建築物は埼玉県宮代町の庁舎、東京都奥多摩町福祉センター、岩手県石巻市北上総合支所、東通村東通小学校、東京・台東区の上野の森美術館などを始めとして、庁舎に限らずJRの駅舎や地域交流センター、保育園、病院の付属託児所、美術館、特別養護老人ホームなどにおよんでいる。

昭和63年から開始したKESフランチャイズ展開もあって、平成16年には累計のKESシステム住宅が1万棟を達成する。創業から30年間、KESシステムによる第1号住宅が竣工してからでは17年間という短期間での達成である。この間に通産省(現・経済産業省)から東北通商産業局長賞を、第23回発明大賞では田邊発明功労賞、国土庁(現・国土交通省)からは地域活性化貢献企業賞を受賞するなど、卓越した技術が認められている。この技術力を支えているのが、設計・技術社員の有資格率の高さだ。同社では1級建築士12人のほかに2級建築士18人を擁し、構造設計1級建築士の資格も2人が保有している。技術部門の社員の7割以上が建築士の資格を保有しており、営業部門でも1級建築士の資格を持つ社員もいる。大手住宅メーカーと比べ資格保有率は非常に高く、大型木造建築の専門家集団として核を形成している。

また、平成11年には、東北の学生を対象とした東北学生設計競技を主催し、次代を担う若い力を育成している。4年後、この設計競技の対象を全国の学生に拡大するとともに、名称を「シェルター学生設計競技」に改称し、今年で11回目を数える。建築業界を志す学生たちにとって、自らの創造力を磨き、習得した設計技法を発表する絶好の機会となり、学生たちの登竜門になっている。今では応募対象者を海外まで広げ、充実した設計競技にすることを計画している。

木の質感が分かる浄法寺総合支所の町民ホール木の持つ特徴で明るい将来

安達取締役サブディレクターは、「当社では設計事務所などを対象に、『木造大規模建築物の可能性』をテーマとしたセミナーや構造見学会を全国で開催していますが、驚きました」と語る。何故、驚いたかのだろうか。同社では今年5月から7月まで、全国12都市でセミナーを開催した。講師を務めた安達取締役サブディレクターは「設計事務所などのプロでさえ、木造軸組工法で耐火造の建物を建築できることを熟知している人は各会場とも3、4%程度しかいません。木住協が大臣認定を取得して耐火構造がOKになったのですが、使い方が分からず、木住協の会員しか利用できないものと思っています」と語る。木造軸組の耐火構造に道を拓いたことになる大臣認定の取得だが、まだまだPRが不足していることを物語っている。

返す言葉で安達取締役サブディレクターは、「現状では木造軸組工法による耐火構造の認知度は低いものの、その未来は非常に明るいものがあります」と断定する。「明るさ」の第1が事業領域の拡大ということ。従来まで住宅供給一本槍だった工務店などにとって、商業建築や老人施設、保育園、4階以上の建築物などを手掛けるチャンスが増えた。住宅着工の減少が予測される中で、これまで対象となっていなかった耐火造を手掛けられるようになったことは、事業の領域を格段に広げられることつながる。「外食産業で当社が実証したように、建築物にかけるコスト低減を願うオーナーにとって木造軸組工法による耐火構造は願ってもないこと」と安達取締役サブディレクターは指摘する。さらに「工期が短いという優位性もあります」と続ける。シェルターが設計・監理に携わり、木住協の会員が岡山県に施工した特別養護老人ホーム「ワインの里」では、30日間という短工期だった。RCや鉄骨造では真似できない短工期である。しかも、木造軸組工法は軽量で、基礎自体も軽量で済み地盤補強の必要がない。基礎工事以降の職種や人工を減らせるなど、施工上のメリットも多い。

木という素材も「明るさ」の一つである。「木はCO2を呼吸しながら成長する再生可能な資源です。RCや鉄骨造が素材の製造・運搬時に大量のCO2を排出するのに対し、木造は自然環境と人に優しい」と語る。医療施設や保育園などでは、木の持つ心身の快適さや温かさが差別化の大きな要因の一つになる、と断言する。加えて耐火建築に使用される材積は一般の木造住宅よりも多く、木造軸組工法の普及によってより多くのCO2の固定化につながることが期待されている。

接合金物で強度と自由度を高めたKES構法培った技術の還元も検討

シェルターは、木住協の会員が施工する耐火構造の設計や施工監理をサポートする形で、木造軸組工法の耐火構造の普及に尽力している。各地で開催するセミナーでは、木住協の耐火構造の技術的特徴や仕組み、利用方法などを解説しているという。木住協の木造1時間耐火建築物の利用状況では、今年10月20日時点で大臣認定書(写し)の累計発行件数が150件となり、建築確認済報告件数も120件、徐々にだが全国各地で木造軸組工法による耐火建築が姿を現している。安達取締役サブディレクターは「少子高齢化に伴って、耐火建築による高齢者用施設や医療施設、保育所といった需要は、今後確実に増えます。木の優れた特性を訴えれば、市場規模は相当なものになるはずです」と予測している。

木住協ではこれまで会員企業に限っていた認定書の発行要件から会員要件を外し、条件付きながら非会員にも1回限りで使用できるよう運用法を改め、門戸を開放した。木住協が取得した認定内容では、内壁などを石膏ボードで被覆する必要があり、視覚的に木の良さを表現することに多少の困難性を伴う。この点に関して安達取締役サブディレクターは、「これまでシェルターが培ってきた木造耐火建築の技術を、木住協と会員にオープンにすることも必要と思っています。そういう形で還元することによって、着実に市場の拡大を図っていきたいと考えています」と語っている。平成18年10月の大臣認定取得から丸3年。黎明期を経て、木造耐火建築が本格普及に向けて飛躍する時期が近いことは確かなようである。

※協会機関誌「木芽」2009年秋号(Vol.133)より転載

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