日本木造住宅産業協会

(一社)日本木造住宅産業協会(略称/木住協)は、木造軸組工法住宅等の普及と健全な発展に寄与することを目的とした法人です。

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第四回 洞爺湖サミットの「ゼロエミッションハウス」(積水ハウス)

環境対策を施さない住宅建設は、今やユーザーから受け入れられない時代を迎えた。茨城県古河市で、地球環境対応型の近未来型住宅「ゼロエミッションハウス」が公開されている。昨年7月に開催された北海道洞爺湖サミットに出展された「ゼロエミッションハウス」を、経済産業省資源エネルギー庁などの指導に基づいて建設に協力した積水ハウス株式会社(本社=大阪市北区、阿部俊則社長、1種A正会員)が、自社の関東工場内に移築し、一般公開しているものである。ここでは、さまざまな省エネルギー技術、創エネルギー技術、環境技術を組み合わせることで、快適な生活を実現しながらCO2削減量が排出量を上回る理想的な「CO2オフの暮らし」が体感できる。今回の「家づくりの新潮流」は、そんな「ゼロエミッションハウス」の最新技術を取材した。

ゼロエミッションハウスの全景

現在の技術と設備機器でCO2削減

省エネ、創エネと環境技術を駆使

石田 建一:温暖化防止研究所長

石田建一・積水ハウス(株)温暖化防止研究所長(51歳)は、「一般に市販され、あるいは開発中の部資材や設備機器を活用することで、こんな生活ができますよということを示したのが、このゼロエミッションハウスです。『快適な生活を送りながら、我慢することなくCO2排出量を削減しましょう』ということを、このモデルでは訴えています」と語る。「ゼロエミッションハウス」では、未来型の商品にありがちな奇をてらった特殊な住宅モデルではなく、実用化を前提とした住宅モデル=普通の家であることを強調している。

工場の一角に展示されている「ゼロエミッションハウス」は、積水ハウスが「普通」に販売している構造躯体を採用。独自の地震動エネルギー吸収システム「シーカス」が組み込まれ、ハイブリッド光触媒塗装「タフクリアーE」を外壁に使用するなど、ゼロエミッションの前提として長期の使用に耐えられる構造躯体になっている。軽量鉄骨造による平屋建てで、延べ床面積は約197㎥。「和」を基調とした仕上げが特徴だ。南北に抜けられ自然の風が通る「通り土間」を設け、向かって左側に和室を、右側には居間と厨房、書斎、浴室・洗面所、寝室などを配置している。石田所長が「省エネ技術と創エネ技術、環境技術を組み合わせて実現しました」と語るように、室内外にはさまざまな環境対策が盛り込まれている。

14.5kWの太陽光発電システム採用

特徴的なのは、「創エネ技術」として屋根南面に搭載した太陽光発電システム。集光パネルに瓦型の屋根一体タイプを採用し、外観デザインを損なわないようにした。発電能力は、14.5kWという大容量を誇る。家庭からのCO2排出量より、太陽光発電によるCO2削減量が上回るシステムである。基本的には、この太陽光発電システムから生み出された電力を家庭内のあらゆるエネルギーに活用する。このほか、家庭用燃料電池システムや小型風力発電機、発電窓ガラスなども創エネ技術として採用されている。「省エネ技術」の活用では、構造を高断熱・高気密仕様として熱のロスを防ぎ、機械制御の熱交換方式の24時間計画換気を導入している。この計画換気は、外気をサイクロンユニットで清浄し、室温に近づけて取り入れるロスの少ない熱交換方式の換気システムだ。花粉の室内への侵入を大幅に低減することもできるという。また、従来の硬質ウレタンボードの約半分という厚さながら、同等の断熱性能を持つハイブリッド断熱ボードも採用している。

通り土間には間伐材を活用したベンチなどが設置されている北面屋根にはコケを植え温度上昇を抑制

北面の屋根にはスナゴケを植え、夏季の屋根と室内の温度上昇を抑制するとともに、CO2を固定化している。石田所長によると、「スナゴケは乾燥に強く、手入れもほとんど不要です」といい、夏のヒートアイランド現象の予防に大きな効果を発揮するという。開口部には高断熱仕様の真空ガラスとLow-Eガラスを組み込んだハイブリッド複層真空断熱ガラスを採用している。断熱材に匹敵する性能を持ち、北側にも明るい大開口設計を可能とした。居間の照明には、蛍光灯よりも発光効率が高く、水銀などの有害物質を含まない有機EL照明を採用している。

キッチンには燃焼ガスを発生しないIHクッキングヒーターと、IH用空気清浄システムを組み合わせたレンジフードのないスタイルキッチンを取り入れた。洗面所には外部の自然光を室内照明として利用する「光ダストシステム」を導入し、日中の照明用電力を削減して省エネに貢献している。寝室の内壁には結露や梅雨時の湿気を抑え、有害物質や臭いも吸着する調湿建材も使用した。こうした家庭内のエネルギー使用量が一目で分かり、コントロールができ省エネ促進に役立つ「家庭用HEMS」も設置されている。このほかエネルギー消費を低減できるスチームオーブンレンジやオゾン技術利用洗濯乾燥機、省エネ節水トイレ、サイクロン掃除機、次世代省エネ液晶テレビなど、盛りだくさんの機器が装備されている。

削減量は3010kg-CO2を誇る

北面屋根に施されたスナゴケ建設時の排出量もゼロに

石田所長は「一般的な木造住宅のCO2排出量は年間5667kg-CO2にも達します。このゼロエミッションハウスと同じ建物を建築した場合、当社の試算によると、ゼロエミッションハウスでは冷暖房と給湯、照明・家電の3分野でさまざまな省エネ対策を進めた結果、3010kg-CO2ものCO2排出量を削減することができました。一般的な木造住宅の半分以上も削減できる訳ですが、残りの2657kg-CO2については、太陽光発電システムなどの自然エネルギーを活用した創エネ技術によって、オフセットすることが可能となっています」と語っている。

解体までを30年とすると、生活時に排出するCO2だけでなく、住宅建築時や解体時のCO2排出量もゼロとすることができる、と強調している。通り土間の下には4トンの雨水を蓄えることのできるタンクが設置され、夏季の散水などに利用する。このほか、「省資源技術」では、通り土間の一角に間伐材や廃棄木材を活用したシューズケースやベンチが置かれている。キッチンなどの床には、成長が早く環境に影響を与えることの少ない竹を圧着集成した床材を使用している。和室の土間床には再生ガラス建材「リボーンガラス」が敷かれていた。この「再生ガラス」は、原料の95%を廃ガラスで賄えるという高効率の素材で、内外装を問わない建材として積水ハウスが開発したものだ。

洗面所には天井からの自然光が入る「光ダストシステム」を採用採用新技術や機器は合計40件にも

これだけではない。外構の擁壁に使用されたセメントは、都市塵の焼却残さをセメント1トンに対して500キログラム以上を混ぜてつくられたエコセメント。これまではゴミとして埋め立て処理されていたものを資源として有効活用している。食器も美濃焼の製陶技術をベースに、壊れた食器を陶器に戻してつくったエコ食器である。手触り感も何ら違和感がない。屋外には家庭から出る生ゴミを堆肥にする木製の「コンポスト」が設置されている。生ゴミを捨ててしまうのではなく、「コンポスト」に入れるだけで堆肥となり、家庭菜園で利用することにより一石二鳥のリサイクル意識を高めることができるという。

建物の北側には、積水ハウスが提唱している「5本の樹」計画に基づいて、地域の気候風土に適した約100本の在来樹種を植栽した築山を配置し、鳥や蝶を呼び寄せるなどして生態系の再生を図っている。「今まで見られなかった鳥が飛来していることが確認できました」と石田所長は語っている。この「ゼロエミッションハウス」に採用された新技術や省エネ機器などは、合計40件(商品)にも達する。そのいずれもが現存、あるいは開発中で近い将来に実用化が見込める省エネ・創エネ技術を結集したものである。

隣接の資源循環センターと連動

徹底した廃棄物の再資源化

積水ハウスでは、平成11年に「人・街・地球」の調和を目指して環境憲章と環境基本方針を制定し「環境未来計画」を発表した。平成17年6月には快適な暮らしを実現しながら居住時に排出されたCO2を削減する「アクションプラン20」を策定し、取り組みを開始している。平成18年に温暖化防止研究所を設置し、昨年4月には省エネ技術によりCO2排出量を低減して、残りのCO2削減分については、太陽光発電システムと家庭用燃料電池の発電による削減効果によって、差し引きがほぼゼロになる「CO2オフ住宅」の販売を開始している。我が国で最も多くの住宅を供給するトップランナー企業として、環境への積極的な取り組みが評価され、昨年6月には環境省から「エコ・ファースト企業」に、住宅メーカーとして初めて認定されている。

公開された「ゼロエミッションハウス」は、「CO2オフ住宅」をさらに一歩進めて地球温暖化防止の先端技術を集結したもの。モデルの随所に取り入れられた技術や設備機器によって、建設から生活時、解体までの長いライフサイクルにおけるCO2排出量を、太陽光などの自然エネルギー発電によるCO2削減量で相殺するという仕組みである。積水ハウスでは、建築現場などから排出される建築廃棄物をゼロにするという取り組みも積極化し、この分野では同業他社の一歩先を行っている。目標を「単純焼却ゼロ、埋め立て処分ゼロ」と定め、自社の管理下で建築廃棄物の再資源化を進め、資源のリデュース、リユース、リサイクルに取り組んでいる。この一環として同社では平成14年にいち早く全国の生産工場におけるゼロエミッションを達成した。これに続き、平成17年には新築施工現場のゼロエミッションを、翌18年にアフターメンテナンスのゼロエミッション、平成19年にはリフォーム施工現場のゼロエミッションを達成するなど、先んじた建築廃棄物対策には定評がある。

資源循環センターでの分別作業「ゼロエミッションセンター」は、積水ハウスのゼロエミッションへの考え方や取り組みを紹介する「ウェルカムホーム」と「ゼロエミッションハウス」「資源循環センター」の3施設で構成されている。このうち「資源循環センター」はこのような新築施工現場やリフォーム現場などから排出される建築廃棄物を有効活用する中核基地である。「ゼロエミッションハウス」と連動して、住宅のライフサイクルを通じたゼロエミッションの実現を図っている。

同社の新築施工現場では建築に伴って排出される廃棄物を27種類(リフォーム現場では22種類)に分別する。その上で廃棄物処理法における環境省の広域認定を利用して、定期的に「資源循環センター」に回収する。回収した廃棄物は同センターでさらに最大80品目に再分別され、素材別に自社でリサイクルするほか、リサイクル業者への委託による再資源化を行い、マテリアルリサイクルやサーマルリサイクルによって再利用されている。発泡スチロールなどは溶かされて自社工場内で生産される瓦桟の原料や梱包材などに生まれ変わる。このような廃棄物対策の取り組みによって、平成12年当時、廃棄物処理におけるCO2排出量は年間約1万6700トンにもなっていたが、5年後の平成17年には約9400トンに、平成19年には約7700トンに削減している。7年間で約54%を削減したことになり、この削減量は約64万8000本の杉の木が1年間に吸収するCO2量に相当するという。

3ヵ月で8000人もの来場者

小型風力発電機「ゼロエミッションハウス」が関東工場内に移築され、一般公開を開始したのは昨年11月末。オープン後の3ヵ月間で8000人を上回る来場者があったという。1日あたり90人近い見学者が訪れた計算になる。石田所長は、「住宅供給企業として住宅から発生するCO2を削減することは、限りある資源を循環させて有効利用するのと同様に重要なこと。すべての住宅で導入できる普及技術と先端技術を組み合わせることで、住宅会社として日本の家庭からのCO2排出量を効果的に削減していきたいと考えています。今は環境に配慮しCO2を削減する住宅の普及時期といえるでしょう。今後も一層の技術開発を進め、環境を考えた住宅を数多く供給し、サスティナブル社会の構築に寄与していきたいと思っています」と、「ゼロエミッションハウス」の考え方を取り入れた住宅供給を通じて、社会貢献を果たしたいと語っている。

肝心な点は、今、導入できる技術を使って建物と設備機器の省エネ性を高め、自然エネルギーを活用した創エネによって、CO2排出量をオフにすることが可能であることを証明したということである。一定水準以上の技術力を保有する住宅会社なら、容易に実現することができる住宅でもある。今後、建設される一戸建て住宅の多くに「ゼロエミッションハウス」の技術が取り入れられれば、居住分野からのCO2排出量は大幅に減少できることが期待できる。その意味で一見の価値があるモデルといえる。価格面の問題をクリアし、1戸でも多くの「ゼロエミッションハウス」が供給されることによって、意外と早い時期に住宅分野の環境対策が施される道筋が整ったといえそうでもある。

※協会機関誌「木芽」2009年春号(Vol.131)より転載

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