日本木造住宅産業協会

(一社)日本木造住宅産業協会(略称/木住協)は、木造軸組工法住宅等の普及と健全な発展に寄与することを目的とした法人です。

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住まいの情報

第一回 「越谷ゆいまーる」(中央住宅)

ビオトープのあるコモン住宅供給に新しい潮流が芽生え始めている。居住者の立場にたった住まいが、木住協の会員によって全国各地に登場している。独自の工夫を凝らした健康配慮住宅や環境共生住宅、主張を持った街づくり、斬新で先進的なシステムを盛り込んだ新商品などである。こうした次代を見据えた住宅開発と街づくりに焦点をあて、これからの住宅供給の方向性を探った。第1回は(株)中央住宅(ポラスグループ、本社=埼玉県越谷市、資本金4億円、大久保浩成社長、1種A正会員)が建設した「越谷ゆいまーる」にスポットをあてた。居住者同士のコミュニティーを熟成するコモンスペースを設け、豊富な植栽や灯りによって住環境・景観の充実を図るなど、随所に新しい提案が盛り込まれていた。

ゆいまーる図「越谷ゆいまーる」は埼玉県の東部、東武伊勢崎線のせんげん台駅から約1.8キロの越谷市西大袋土地区画整理地に建設された。開発面積は約1576㎥、総戸数8棟の比較的小規模な分譲住宅である。現地は越谷市北部における地域拠点として、環境と景観に配慮した整備が進められている地区。一昨年12月、地域の街なみ形成を誘導することを目的に、越谷市が住宅開発提案競技を開催し、名乗りを上げた5社の中から中央住宅の提案が最優秀案として選ばれた。

「ゆいまーる」とは沖縄の方言で、意味は「仲間」や「支え合う」ということ。家族や近隣との絆のほかに、自然との関わり、人を取りまく様々な『縁』を紡ぐという意味合いを込め、団地名に採用した。戸建分譲事業部用地開発課の古畑隆明主任(34歳)は、「居住者一人ひとりの出会いを大切に、互いに助け合って地域コミュニケーションが広がっていくことを願って名付けた」と命名の由来を説明する。「越谷ゆいまーる」の大きな特徴は、敷地中央にコミュニティー熟成の”場”となるコモンスペースを設けたことである。街の安全や住環境・景観を重視した、様々な提案も盛り込んだ。

コモンは敷地の一部供出で オープン外構で開放感出す

外周道路に施したグリーンベルト「越谷ゆいまーる」のコモンスペースは、開発面積の22%に相当する352㎥という広さだ。戸建分譲事業部営業企画設計課の本堂洋一係長(41歳)は、「本来なら9棟を建てられる敷地だが、8棟に減らし、コモンスペースを広くした」とコミュニティー重視を強調している。現地を訪れると、その言葉通りにコモンスペースを囲むようにオープン外構の8棟が交互に配置され、ゆったりとした広さを実感することができる。広いコモンスペースを確保できたのには「秘策」がある。

実は「越谷ゆいまーる」のコモンスペースは、8棟それぞれの専有敷地の一部である。区画割りの際に、各住戸から敷地の一部を供出してコモンスペースとした。専有敷地の一部でありながら、互いに助け合うという「ゆいまーる」の考え方から、供出敷地を居住者が利用しあう共用のコミュニティー・スペースとしたのである。各住戸によって供出敷地は異なり、敷地面積の15%から25%(面積換算で16.62㎥から81.04㎥)にもなる。登記上は各住戸の敷地の一部になるため、地面に鉄鋲がさりげなく目印として打たれ、各住戸の供出区域が分かるようになっている。

コモンスペースを設置したことにより、住環境は格段に向上した。個々の住宅建設では不可能だった広いスペースが確保できたほか、隣棟間隔を十分に取った配置とオープン外構により、街に開放感をもたらしている。これまでの分譲住宅では住宅同士が接して圧迫感があったが、ゆったりと視野が広がる効果を与えている。街全体の日当たりも良く、風が通り抜ける道も確保できるなど、自然の恩恵を住民全員が享受できる。

コモンを配しコミュニティー熟成

手押しポンプのあるビオトープ玄関をコモン側に向け 北側面の単調さを解消

「越谷ゆいまーる」では、コモンに向かって住宅の”顔”である玄関を配置している。隣家や近隣同士の気配を感じ、住民の触れ合いを熟成するためである。不審者の侵入や火災といった万が一の場合にも、住民同士の目が配れるという、ヒューマン・セキュリティが働く仕掛け作りを行った。玄関をコモン側に配置することは、隣棟間隔を十分に取ったことも加わってデメリットも生じる。住宅の北側や妻側が単調となり、住環境にマッチしなくなるというデメリットである。

このデメリットを解消するために、「北側などに窓や開口を増やし、スリットを入れて単調さを解消した。屋根も片流れにして表情を持たせた」(本堂係長)という工夫をしている。安全性も確保した。「越谷ゆいまーる」には、南北と西側の3ヵ所にゲートが設けられており、居住者は各ゲートを通って自宅に出入りできる。コモン内は歩車共存のボンエルフ道路。車は西側のメインゲートから入り、玄関脇のカー・スペースに駐車するが、敷地内の凹凸のある石張りブロック舗装によって、自然とスピードを落とさざるを得なくなる。コモンスペース内での事故を未然に防ぐ仕組みである。

豊富な植栽で住環境アップ

散水用に装備したウイスキー樽50%を超す外構の緑化 シンボルツリーを植栽

特色ある植栽計画も導入した。外周道路に面している各住戸の敷地は1メートル以上セットバックして中低木や下草を植え、生け垣などを混在させて連続するグリーンベルトを作った。各住戸の玄関脇には、ゲート・ツリーとして大袋地区のシンボルである梅を植えている。コモンスペースの中央、コモン広場には街のシンボル・ツリーとして越谷市の木でもある高さ10メートルの欅(けやき)を植え、その下にビオトープを配置した。街角広場と呼んでいる南ゲートにも4.5メートルの欅、メインゲートとコモン広場が交わるスペースには2本の百日紅(さるすべり)を植え、街のシンボルとした。

常緑樹や落葉樹、様々な草花を植えることで、四季の移ろいを感じられる街となる。欅などは葉が生い茂り、夏場の暑い日差しを和らげる。冬になると落葉して、小枝から温かい日差しが射し込む。ビオトープの水は雨水を循環させて利用する。傍らには昔懐かしい手押しポンプが置かれている。ゲートから入り込んだ風がビオトープによって冷やされ、街全体に行き渡る。自然の摂理を活用した住環境づくりである。コモン広場やビオトープから、家族や子供連れの楽しそうな会話が聞こえてきそうだ。こうした外構部の緑化率は実に50.5%~81.2%にもなる。古畑主任は「通常の分譲地の4倍近くもの植栽を施した。花や香りが楽しめるだけでなく、実のなる季節には収穫の喜びも楽しめる」と胸を張っている。

一戸単位では実現できない豊富な植栽によって、街全体を屋敷林で取り囲んだような景観を醸し出している。「街の景観には特に気を配った」と本堂係長は語る。電柱類は景観を阻害するだけでなく、歩行の邪魔になる。このため電柱をセットバックした外周部に建て、街の中から電柱をなくした。電柱には擬木柱を採用して、植裁した樹木との違和感をなくしている。南ゲートの街角広場は、近隣住民を含めた語らいの場や休息スペースとした。共用のゲストパーキングのほか、宅配便や幼稚園の送迎バスの一時駐車スペースとして活用することも提案している。全戸には200リットルの雨水が貯められるウイスキー樽が標準装備されている。ガーデニングや庭の散水などに活用する。

安全・景観を重視して街なみ提案

南ゲートの街角広場灯りの並木道を創出 環境評価も高い等級

景観への「こだわり」はまだある。「越谷ゆいまーる」では街の中の随所に街路灯を設置して、灯りによって夜間の街なみも美しくしている。コモン広場にはシンボルツリーを下から照らし出すグランドライトを設置した。メインゲートの道の両脇と街角広場には、タイマーによって自動点灯する8個の街路灯を、各住戸にも3個の街路灯と1個の門灯を取り付けた。合計すると41個もの灯りが「越谷ゆいまーる」を照らし出す。

夜間にメインゲート側から眺めると、街路灯と門灯の灯りが連続し、美しい「灯りの並木道」となっている。灯りを点灯して明るくすることによって、夜間の安全性と防犯性が高まり、安心して暮らせる街となる。門灯は表札やインターホン、郵便受けの機能を持たせた一体型の機能門柱を採用し、統一した美しさも演出した。「越谷ゆいまーる」では、建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)に基づき、環境性能の自己評価を実施している。自己評価としたのは、建物竣工時期(07年11月)が建築環境・省エネルギー機構の認定制度がスタートする前であったためだ。評価システムでは住宅に求められる快適性や品質。環境負荷の低減について、合計54の採点項目が設定され、評価結果は5段階で格付けされる。同機構のこの評価基準に基づいて評価した結果、環境効率は8棟のうち2棟が最高等級のSランク、残りの6棟も最高等級に次ぐAランクとなった。

灯りの並木道となる夜の風景管理もバックアップ 独自の営業手法採用

引き渡し後の管理にも細かな対策を講じる。専有敷地の一部を供出したコモンスペースやセットバックした外周部の緑地帯、住環境の維持など、他の分譲住宅とは異なる点が多いことからである。計画では居住者で管理組合を組織し、シンボルツリーや緑地帯のほかに、コモンに隣接し住戸の宅地内に植栽した樹木も「コモンを形成する重要な要素」という解釈から管理組合で管理する。中央住宅では、自主管理に欠かせぬ知識や技術が習得でき、良好なコミュニティーを熟成するために、サポート・プログラムを作成した。夏祭りや餅つき大会などのイベントの開催を含めて、2年間にわたって住民の管理を側面からバックアップする計画だ。

また、コモンスペースの共有・共用方法や権利関係、自主管理、特徴のある開発コンセプトなどから、営業面でも通常の分譲住宅とは違った手法を採用した。昨年12月と4月に「オープンカレッジ」を開催、引き渡し後のコミュニティーが円滑になるよう、住環境を維持する仕組みや緑豊かな住まい方などについて、各回とも週1回ずつ4回に分けて実施した。このオープンカレッジを通して購入者を募る。街のコンセプトを理解してもらい、購入を働き掛けるというスタンスだ。自分たちの街という認識を高め、同じ価値観でコミュニティーを熟成する必要があるためで、街を熟知した専従の営業マンを配置している。販売期間も通常の分譲住宅より時間を多く掛ける考えだ。

本堂係長は「100棟現場の仕事をしたのと同様の苦労をした」と語る。古畑主任も「街をつくっただけでなく、引き渡し後の管理まで携わり、コミュニティーが熟成した付加価値の高い街としたい」と将来に目を向ける。ビオトープには既に鳥や蝶が集まりだした。コモンスペースで住民たちが一緒になり、餅つきや花見に興じる光景が目に浮かんでくる。住宅が集まって家なみになり、家なみが集まり街なみに発展する。「ゆいまーる」の縁をつなぎ、年月を経るごとに成熟した街になる。中央住宅が開発した「越谷ゆいまーる」は、購入者のコミュニケーションと住環境を考えた街づくりとして注目されることは間違いなく、一見の価値がある住宅開発といえるだろう。

越谷ゆいまーるの概要

所在地

埼玉県越谷市都市計画事業西大袋土地区画整理事業 33街区11画地ほか

交 通

東武伊勢崎線大袋駅から徒歩24分

土地面積

156.57~227.73㎥

建物面積

108.05~119.23㎥

間取り

3LDK+納戸+外部物入れ~4LDK+2ウォークインクロゼット+外部物入れ

総戸数

8戸

販売価格

3,960万円~4,390万円

道 路

6.0m、10.5m

用途地域

第一種中高層住居専用地域

地 目

宅地

建ぺい率

60%

容積率

150%

構 造

木造2階建て(木造軸組工法)

施 工

ポラテック(株)

※協会機関誌「木芽」2008年春号(Vol.127)より転載

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