日本木造住宅産業協会

(一社)日本木造住宅産業協会(略称/木住協)は、木造軸組工法住宅等の普及と健全な発展に寄与することを目的とした法人です。

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頑張る会員企業訪問記

日本の気候風土には木造住宅

日本には四季があります。また高温多湿です。そんな日本の気候風土に一番合うのは木造軸組工法住宅。
素材である「木」の特性から、調湿性や吸音性に優れ、地球環境や人の健康にもやさしいのが最大の特徴です。
そこで、木住協の機関誌「木芽」に掲載している頑張る会員企業訪問記を紹介します。

ゼロ・エネルギー住宅の普及に邁進 (株)千田工務店(岩手県北上市)

千田忍社長電力不足を背景として、省エネや太陽光発電に代表される再生可能エネルギーの活用が急がれている。今回の「頑張る会員企業訪問記」は、平成15年からいち早く一戸建て住宅に太陽光発電システムを全棟標準仕様で搭載している株式会社千田工務店(本社=岩手県北上市、1種B正会員)を訪れた。これまでに太陽光発電システムを搭載した300棟近い一戸建て住宅を建設し、国内トップクラスの搭載率を誇っている。搭載したOB客を対象にして、毎年1回、どのくらいの省エネを達成できたのかを競う「省エネ大賞コンテスト」も主催し、環境に優しい住宅建設を展開している。このような取り組みによって、「太陽光発電なら千田さん」という言葉が県内はすっかり定着している。太陽光発電の地域密着リーディングカンパニーとして、被災地岩手でゼロ・エネルギー住宅の普及に全力を注いでおり、木住協が自慢できる会員企業の1社である。

千田工務店(資本金1,000万円、千田忍社長)は、現会長の千田孝道氏(64歳)が「家は小さく、しっかり、暖かく」を家づくりの信条にして昭和55年に創立した。孝道会長は本田技研工業を経て、大手プレハブ住宅メーカーの地元協業会社に営業マンとして入社し、住宅業界に転身した。7年間にわたって営業の最前線で活躍した後に独立して千田工務店を創立した。孝道会長は何故、「家は小さく」と考えたのだろうか。孝道会長が執筆した信条と同じ書名に、次のように書かれている。参考になるので抜粋してみた。

「『家は小さく』なんて唱える住宅会社は、まずないでしょう。だけど考えてみてください。家は小さいほうが暖房効率もアップして光熱費もスリム化できるし、家族みんなの距離が近くて、仲睦まじく暮らせる。家族の絆も深まる感じがします。(中略)だだっ広い家よりも、幸福という価値は高いような気さえします」残る信条の「しっかり」は耐震・耐久性などを重要視した家づくり、「暖かく」は寒冷地での家の在り方を追求するという企業姿勢を示したものといえる。社名に「工務店」と付けたことについても、孝道会長は「地域に愛され、分かりやすく簡単で、身近に感じていただける名前。『工務店』という響きには、そんな魅力があると思ったのです」と記述している。長々と引用したのは、この短い文章の中に千田工務店の家づくりに対する想い、考えが凝縮されていると思ったからだ。千田忍氏(34歳)が昨年9月に二代目社長に就任しても、この基本は何ら変わっていない。

9年前から全棟を太陽光発電に切り替え

大きな吹き抜けで明るい室内役員を含めても12人という少人数の千田工務店だが、住宅事業の取り組みは同業他社を寄せ付けないものを持っている。何といっても最大の特徴は太陽光発電システムを標準仕様としたことだ。千田社長は「太陽光搭載住宅を初めて建設したのは平成15年のこと。会長が太陽光発電という無尽蔵のクリーンエネルギーの虜になり、『こんなすばらしいものを一過性で終わらせてはいけない』と考え、太陽光発電搭載住宅だけを売ろうと決心しました。標準仕様としたのは全国で当社が初めてでしょう」と語る。営業エリアは、釜石市など東日本大震災で大きな被害を受けた太平洋沿岸部を含めた岩手県全域。創立以来の引き渡し棟数は約800棟で、このうち直近の9年間で270棟の太陽光発電搭載住宅を引き渡しした。太陽光発電を「要らない」というお客様に対して、千田社長は「建築を断ったこともあります」と語る。こうした太陽光にかける一途ともいえる企業姿勢が、同社を搭載率の高さで国内トップクラスの地位に導いているのだろう。

千田社長は、入社前に地元の電気工事店で太陽光発電システムの販売と施工の両方を担当していた。その経験を千田工務店で活かし、「40坪の住宅で光熱費をゼロにするには4キロワットの能力が必要で、当社では4キロワットを標準にしています。5.5キロワット以上なら確実に余剰電力を売電できます」と語る。お客様宅に設置した太陽光発電システムによる累計発電量は、今年5月に1,051キロワットとなり、メガソーラーを達成したという。千田工務店では被災地での構造見学会と、内陸部で月1回、土・日の2日間開催するお施主様宅完成見学会を主な商談の場にしているが、「千田工務店だからできる光熱費ゼロの暮らし」というキャッチフレーズを前面に押し出している。加えて太陽光発電の優位性を早くからアピールしていたことから、「『太陽光発電のことなら千田に聞きに行こう』と、興味を持っている人たちがアポなしで当社を訪れてきます。見学会などへの来場者も、太陽光発電に興味のあるお客様ばかりです」と千田社長は嬉しい悲鳴を上げる。太陽光発電による余剰電力の固定買い取り制度のスタートも拍車を掛け、自治体の設置費用の補助制度も充実され、同社にとっては大きな追い風にもなっている。

省エネコンテストも自社で主催

今年の省エネ大賞コンテストには約300人が参加した太陽光発電への取り組みで特記すべきは、OB客を対象にした「省エネ大賞コンテスト」を同社が主催して行っていること。懇親会を兼ねて毎年1月末に北上市内のホテルで開催され、今年で第7回を迎えた。回を重ねるたびに参加者が増え、今年は約50組、300人近いOB客が参加したという。コンテストではお客様同士の日頃の省エネへの取り組みを称えあい、新築と既築に分かれて省エネ効果の優れたOB客を表彰する仕組みとなっている。千田社長は「お客様の省エネに取り組む姿勢には感心させられます。お客様の満足度向上に大いに貢献しています」と満足気味だ。

表彰を受けたOB客からは、「家庭のエコ意識が高まりました」「アパート生活の頃と比べて、光熱費がぐんと抑えられています。太陽光の発電容量を大きくして大正解でした」「ソーラーのある暮らしになってから、天気予報が気になっています」といった喜びの声が聞かれている。同社では紹介受注が約7割と高いのが自慢だが、コンテストのようにお客様を巻き込んだイベントの開催が、紹介受注を高める大きな要因になっている。さらに、「次回からは千田工務店のOB施主だけでなく、一般公募も開始して太陽光発電の普及と地域活性化に大きく貢献していきたいですね」と語ってくれた。

長期優良住宅はわれわれの「大きな武器」

大容量の太陽光パネルを搭載した施工例もう一つ、千田工務店が大きな柱として力を入れているのが、長期優良住宅である。制度が発足した初年度の2009年度に、千田工務店では19棟の長期優良住宅を建設した。この戸数は岩手県では大手住宅メーカー各社の建設戸数を大きく上回って、最多の戸数となった。今回の東日本大震災を契機に、お客様は住宅の耐震性に敏感になっている。千田工務店では、劣化対策等級3、省エネ対策等級4、維持管理対策等級3と各等級とも最高等級を設定。千田社長は「長期優良住宅を取り入れたことによって、耐震性に対して安心していただいています。冬には本社のある北上市周辺では50センチも雪が積もり、山間部になると2メートルを超す積雪量になります。毎年1月から3月までは寒さと凍結で施工ができないというハンディも背負った土地柄ですが、このように雪が多く寒い地域だからこそ、われわれにとって長期優良住宅は大きな「武器」になっています」と強調する。続けて「当社では次世代省エネ基準の採用が当たり前になっています。長期優良住宅は建設した住宅の70%強を占めるまでに増加しており、長期優良住宅が『国のお墨付き住宅』ということもあって、これまで以上に品質が良く、耐久性や耐震性などの高い住宅の供給を展開していきます」とキッパリと語る。

長期優良住宅とすることによって請負価格が割高になり、それを避けるために今でも採用を躊躇する同業他社がみられる中で、千田工務店は引き渡し後のお客様の生活を考え、長期にわたって安心感を享受できる長期優良住宅を供給の柱にするという。どこまでいってもお客様のことを考え続ける千田工務店ならではの考えといえるだろう。今年5月から、千田工務店では「SOLA賢-smart-」を発売した。太陽光発電システムと長期優良住宅をベースにしたゼロ・エネルギーが可能な住宅で、創エネでは5.5キロワットの発電能力を持つ太陽光発電システムを搭載。エコキュートやエコ照明、HEMSも導入したほか、ヒートポンプエアコンや蓄熱式暖房機、換気システムなども取り入れ、エネルギーの「つくる」「ためる」「まもる」「みえる」を実現している。千田社長は「ゼロ・エネルギー住宅を先陣切って岩手で実現したいという想いから取り組みました。この『SOLA賢-smart-』で、地元岩手を元気にする会社にしていきたいですね」と力説している。

お客様を巻き込み各種イベントも

千田工務店はきめの細かい展開も続けている。その一例が「我が家のトラブルバスターズ養成キャンプ」の開催だ。今年から開催した「お手入れ教室」的な存在で、これもOB客向けに開催している。2ヵ月に1回のペースで開催され、全3回のセミナーを受講すると、より効果的な住まいの手入れ法が学べるというもの。千田社長は「自分の家は自分たちの手で維持管理するのは当たり前ですよね。住育とでもいって良いのかも知りません」と語っている。4月に行われた第2回のセミナーは、「環境に優しく、身近なものでお手入れ」、6月の第3回では「いつもぴかぴからくらくお掃除」と「仕組みが分かれば納得、配管回りのお手入れ」をテーマに開催された。千田工務店の工事を担当し、同社の家を知り尽くしている水道工事店や清掃企業などの担当者が講師となり、普段気になっていた小さな疑問や手入れについての悩みを解消する質問コーナーも設けられている。

参加費を有料にしているのが特徴。無料にすると真剣さがなくなったり、途中で受講をしなくなってしまうことがあるため、500円の受講料を徴収している。「最初は参加者が集まるのかが心配でしたが、いざ蓋を開けてみると10組もの参加者がおり、安心しました。普段の手入れや維持管理をしっかり行っていただくことで、お客様と長くお付き合いして行きたいと思っています」と千田社長は語っている。

木住協の情報量の多さに安心感

木住協に入会して良かったことを千田社長に聞いてみた。「情報が豊富で遠隔地で住宅事業を展開しているわれわれにとって、たいへん貴重な存在です。開催されている各種のセミナーにも社員を派遣しており、企業のレベルアップと社員のスキルアップに欠かすことができません。入会して安心して事業が続けられます」という回答が返ってきた。実は一関市出身の千田社長は、中学時代に陸上部に籍を置き、県内屈指の長距離界の名門である一関学院に入学。全国高校駅伝に出場するなど、高校時代からマラソンで頭角を表した。流通経済大学に進み、マラソンの走力を買われて地元建設会社の駅伝部にスカウトされたという経歴を持っている。

その後、千田社長は市内の電気工事店に就職。まだ太陽光発電が贅沢品といわれ、北国の岩手では珍しかった頃だった。「当時、太陽光発電システムを大々的に販売していたのは、私がいた電気工事店と千田工務店ぐらいでした」と千田社長。そんな中で「ご縁があって当社に入社しました」と千田社長。平成19年3月のことだった。その年の9月に太陽光発電システム設計課長に就任、取締役営業部長、常務、専務を経て、昨年9月に第一走者の孝道会長から襷を引き継いだ。制服の上着はいつも作業着を着用、「トイレ掃除は社長の仕事です。北国岩手でゼロ・エネルギー住宅を普及させるのが、現在の私の目標です」と語る千田社長に、太陽光発電搭載住宅に賭ける東北男子の大きな意欲を感じた。

※協会機関誌「木芽」2012年夏号(Vol.144)より転載

当社のピカ1社員

向学心を忘れず工事監理に専念 工務部 栃沢 順幸さん

工務部 栃沢 順幸さん工事現場の監理を託されている工務部の栃沢順幸さん(24歳)は、今年3月に中途入社したばかり。それまでツーバイフォー工法の貸家専門企業に勤務していたが、「短大時代の勉強が生かし切れませんでした。どうしても木造軸組構法の基本である注文住宅を極めたかった」という想いから、思い切って転職に踏み切った経歴を持つ。毎朝、北上市から30キロ以上離れ、出身地でもある紫波町から40分をかけて車で出勤する。8時から事務所の清掃作業と朝礼で1日が始まり、打ち合わせを終えてから現場管理に出かける。「入社してまだ日が浅いため、現場を数多く見ることで勉強を重ね、当社のシステムを1日も早く熟知するように努力しています」と栃沢さん。ハンドルを握って2時間半以上もかけ、東日本大震災で被害を受けた宮古市の現場まで行くこともある。午前中に平均して2件の現場を回り、午後からは土日のお客様との打ち合わせのため、準備作業に時間を費やすことにしている。

いつも心がけていることは、「お客様と初対面の時から将来にわたって良いお付き合いが続くようにすること」とキッパリ。そのために「普段から勉強は欠かせません」と語る。「木造軸組工法は奥が深く、私にとってまだまだ学ぶことが多いですね」とうなずく。以前の会社で二級建築士の資格を取得したが、帰宅後には「一級建築士の勉強を深夜まで続けています」と、ここでも栃沢さんから「勉強」というキーワードが出た。どこまで行っても向学心を持ち続けている好青年だ。夢は「現場の要に成長すること」という。プライベートでは「自分で設計し、現場管理を行った自宅を建てること」と語る。さらに「ロック系の音楽が好きですから、防音設備が整った木造住宅ですかね」と栃沢さんから笑顔が見えた。

会社概要

設立

昭和55年8月1日

代表取締役

千田 忍

本社

〒024-0012 岩手県北上市常盤台4-10-78

電話

0197-65-2562

ファックス

0197-65-2556

資本金

1,000万円

従業員

12人

ホームページ

沿革

昭和55年

現会長の千田孝道氏が北上市内鬼柳町で千田工務店を創立

昭和63年

法人改組

平成7年

新社屋が完成し、現在地で業務開始

平成15年

初の太陽光発電搭載住宅を引き渡し

平成23年

太陽光発電搭載住宅が200棟を突破
千田忍氏が代表取締役社長に就任

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