日本木造住宅産業協会

(一社)日本木造住宅産業協会(略称/木住協)は、木造軸組工法住宅等の普及と健全な発展に寄与することを目的とした法人です。

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くつろぎをうながす色 アメニティ&カラープランナー 葛西 紀巳子

ヨガをする前後での絵の違い「ストレスを感じているときと、リラックスしたときとでは、イメージされる色は違うのだろうか?」そんなことを考えたことはありませんか? たとえば、ヨガ。ヨガや瞑想、呼吸法などをすると、誰もが口々に「あ~リラックスした」「気持ちいい」などと言います。そのような状態のとき人々は、いったいどんな色を思い浮かべているのでしょう。 そんな疑問を抱き、以前、くつろぎの色についての調査をしたことがあります。

調査はまず、ヨガスクールの生徒を対象に、ヨガをする前後で色を描いてもらったのですが、ヨガを始める前は調子がすぐれず、「凝り」や「痛み」「体の部位が重い」などの症状を訴える人が97%でしたが、ヨガをした後では、そうした症状を訴える人はなくなり、逆に「楽になった」「気持ちよい」という状態が93%になりました。つまり、ほとんどの人が「リラックスした」というのです。 と同時に、描かれた絵にも大きな変化があらわれました。ヨガをする前は、はっきりとした赤や青、もしくは暗い茶色や紺、黒などが描かれていたのに、ヨガをした後では、明るいパステルピンクやパステルイエロー、パステルブルーなどになったのです。黒で描いた人はおらず、全体的に淡い穏やかな色調に変わっていったのです。

また、ヨガをする前は寒色系が多かったのに対して、ヨガをした後は、暖色系がほとんどとなりました。そして面白いことに、ヨガをする前は、人や鳥などの具象画を描いて、調子の悪い箇所を説明した絵が多く描かれていたのに、ヨガをした後ではそうした絵ではなく、抽象的なもの。それは色が徐々に変化するグラデーションを描いたものが、約90%になりました。類似色やグラデーション配色は、色みや明暗の状態が徐々に変化するので、リズム感があって馴染みやすく、安心感があります。ですから、穏やかで落ち着いた印象になるのです。こうした絵をほとんどの人が描き出していたのです。

また、色の調査だったにも関わらず、形にも共通の変化が見られました。つまり、ヨガの前では、四角や三角形などの角張った形やギザギザとしたモチーフが描かれていたのに、ヨガの後では、円や曲線になったのです。このようなことから、人々がくつろいだときにあらわれる色の傾向は、明るく澄んだ色調、そして暖色系。形は円や曲線になることがわかりました。

イラスト:くつろぎをうながす色これは、あくまでもヨガを通しての結果です。けれどこれを、日常生活においても活用することができると思います。たとえば、病院。これまで病院の壁は白が一般的でしたが、近頃は改修工事も進んで、病院内部はピンクやグリーンといった色が多く使われるようになりました。白は清潔感があると同時に、緊張感を生み出す色でもあるからです。同様に、住宅においてもリラックスを求める部屋、たとえば、リビングや寝室、浴室なども、真っ白ではなく、ベージュやクリームイエローなどの明るい色や暖色系を取り入れると、穏やかなくつろぎ空間を作り出すことができるでしょう。テーブルや椅子などの形は、曲線のあるもの、角に丸みのあるもののほうが、心理的にもやさしい印象になります。

現在、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震における仮設住宅が、急ピッチで建設されているところですが、たとえ、応急措置としての住宅であっても、ある一定期間を過ごす住まいであるならば、こうした色の配慮も必要です。特に、ここに住まう方々は、心身ともに過剰なストレスを負っている人ばかりです。緊張感を生み出す真っ白な空間ではなく、暖色系の明るい色を取り入れるようにしたいものです。

※協会機関誌「木芽」2011年春号(Vol.139)より転載

葛西紀巳子

アメニティ&カラープランナー 葛西紀巳子(かさいきみこ)

(有)色彩環境計画室 代表。東京生まれ。「快適な環境づくり」を心理的、生理的側面から色彩計画し、設計を行っている。
東京家政大学非常勤講師。著書『くらしの色彩物語〜住・環境・色彩アメニティ〜』(フロムライフ)など多数。
‘06年11月には「色彩環境へのまなざし」(密書房)を発刊。

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