日本木造住宅産業協会

(一社)日本木造住宅産業協会(略称/木住協)は、木造軸組工法住宅等の普及と健全な発展に寄与することを目的とした法人です。

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「絆 …自然と人が分かちあっていた古へ」 書家 宇佐美 志都

わらじ年末の清水寺の『今年の漢字』では、きっと『絆』が、力強く揮毫されるのではないか。
そう思うほど、三月十一日を機に、この漢字は、私たちの目や耳にと、連日、触れることとなった。

元来、日本人は、心の奥底でいつも思っていることを、
口にわざわざ出して相手に伝えることを美徳としていない。
そんなこと、云わなくても分かる、だとか、阿吽(あうん)の呼吸
だとかいう、日本独特の文化。それ自体は、美しく、私も愛する日本の呼吸。

しかし、「もの」としては見えない(見えづらい)「絆」というものを、今日一番信じ、
頼りにしながら、日一日を重ねている。
しかし一方で、目に見えないものへの戸惑いに、心がさらされているのも事実。
放射線量や、またいつ忍び寄ってくるやもしれない地震や津波。
今、まさに、目に見えないものに脅え、目にみえないものを信じる時代となったのだ。
だからこそ、「絆」という漢字の成り立ちに、今こそ学ぶことは大きい。

まずは、偏と旁(つくり)に分けてみる。「絆」という漢字は、「糸」と「半」から成る。
「絆」をはじめ、「縁」・「結」など、係わりを意味する漢字には、「糸」がつくものが多い。

そして、「絆」の旁(つくり)部分「半」を、二つに分けて考える。
「半」は、「牛」の漢字の上に、「八」を加えたもの。八は、等分に分かつ意味から左右対称の
字形となっている。つまり、牛の肉を等分に分けたものが、「半」という漢字の成り立ち。

自然と人がもっと密接に生きていた時代、森羅万象の姿は人々の身に毎日辛辣に迫るものだった。
人々は、いつも自然に宿る神々達に、祈りを捧げていた。「雨よ降れ、風よ止まれよ・・」と。
そこで自然に対し、祈りと共に捧げられたのが、牛の肉であった。
その肉を、半分はお供えし、半分は自分たちで食す。「半」という意味には、自然と人が分かち合っていた
姿が象形化されている。つまり、「絆」は、分けられた肉を、再び、「糸」で繋いだ状態。
つまり、自然と人が分かち合いながらも、繋がっている姿を表わしている。

現在、この「絆」という漢字を、「人と人」との係わり合いのみで日々使っている。が、本来、分かち合い、
係わりあうのは、「森羅万象と人」であることを、文字文化の立場から、あえて、現代への警鐘としてお伝えしたい。
合掌

※協会機関誌「木芽」2011年秋号(Vol.141)より転載

宇佐美 志都

宇佐美 志都(しづ) 書家・文字文化随筆家

認定NPO法人文字文化研究所認定講師を、文化勲章受章漢字学者の故・白川静氏より拝命。
書家としての活動及び、文字の成り立ち・日本の慣習についての執筆・講演を各地で行っている。
NHKにて、「国語の時間ですよ。宇佐美志都の今月のひと筆」等の番組も担当してきた。

宇佐美 志都ホームページはこちら

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